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2

…確かに考一はちょっと引っ込み思案だった。


いっつもいろいろ考え過ぎて、身動きが取れなくなってしまう。


そういう時はムリにでも笑わせて、スッキリさせてやる。


そうすれば、明るく笑ってくれるから…。


でも今は微笑む程度。


かなり利実のことで参っているな。


確かに利実のことは考一がキッカケとなったが、こうなってしまったのはコイツだけのせいじゃない。


「…まっ、利実には悪いが、何を言われても聞くなよ? 特にお前は頼られたら弱いタイプだから心配だ」


「大丈夫、さすがに僕も頭に来ているから。でもゴメン。引導渡す役、本当は僕がやるべきだったのに」


利実に電話をかける役目は、最初は孝一が名乗り出た。


しかし孝一は優し過ぎる為に、仲間から却下されてしまった。


そして口が悪く、一度決めたら決して譲らない頑固者に、矛先が向いたのだ。


「別にいいさ。オレみたいなタイプに言われたら、さすがの利実も黙るからな。だから何か言われたら、オレに言えよ?」


「はいはい、頼りにしているよ。和城」


孝一が浮かべた微笑は、安堵の表情だった。


だからオレもほっとした。


孝一は確かに強くはないが、人を安心させる雰囲気を持っている。


癒やし系って言うのかな?


オレには持っていない力だ。


だからこそ、オレは孝一と一緒にいる。


オレが暴走しても、孝一が止めてくれるから。


強く言うんじゃくて、ゆっくりとオレの目を見ながら説得してくれる。


するとだんだん落ち着いてくるのだ。


「孝一ってさ」


「うん、なに?」


「オレの清涼剤だな」


「はっ? 何それ?」


「熱くなったオレを、冷やしてくれる存在」


目を丸くした孝一に向かって、オレは真面目に答えた。


「へぇ。何だか喜んで良いのかどうか、分からない答えだけど…」


「喜べよ。そんなヤツ、お前しかいないんだからさ」


オレは笑って再び孝一の頭を撫でる。


「そっそう?」


頭を撫でられることに戸惑いながらも、孝一も笑った。


こうやって2人だけで穏やかな時を過ごすのも、随分久し振りな気がする。


ここんとこ、落ち着かなかったしな。


バスはやがて、ドライブインに入った。


ここでは1時間の休憩となる。


「はあ。目的地まで、あと2時間はバスの中か…」


目的地は利実の希望に合わせた。


せめてそこまではワガママを聞いてやろうと、仲間で決めたからだ。


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