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「昔ほど乗り物酔いも酷くないしね。帰りは眠ることにするよ」
「そうだな。大分疲れたし…ふわぁ」
言っている最中に大欠伸が出た。
「旅行中は緊張してばっかだったからね。…また終わる時も一波乱あるかもしれないから、今のうちに休みなよ」
「…だな。お前も眠れるなら寝とけ。具合が悪くなったら、すぐに言えよ?」
「分かってるって。じゃあ、お休み」
「ああ…」
オレは座席に深く腰をかけた。
周りにいる他の乗客達も、眠りに入っている。
後ろからは何の話し声も聞こえないので、きっとみんな疲れているんだろうな。
そんなことを考えていると、右手にぬくもりを感じた。
「ん…?」
「やっぱり少し怖いから、手を握っててもいい?」
「ああ。好きにしろ」
「うん。…ありがとう」
孝一の笑顔と声が優しかった。
それは眠りに誘うには効果があった。
オレは孝一の笑みを見続け、手にぬくもりを感じながら眠りについた。
「…しろ、和城。起きて」
「んっん~?」
孝一の声だ。
そして体を揺す振られている。
オレは渋々眼を開けた。
「あっ、もしかして着いちまったか?」
「ううん、まだ…。とりあえず、止まっているって感じかな?」
止まっている?
ああ、信号か?
「なら席変わるか?」
「ううん、大丈夫みたいだからいいよ」
「ならどうした?」
眠っているオレを孝一が起こすなんて、珍しいことだった。
「うん…。みんな眠っているみたいだし、ちょっと話がしたくなったんだ」
周囲を見回すと、確かに誰もが眼を閉じている。
全員寝ちまったのか。
そんで孝一は寂しくなって、オレを起こしたのか。
オレは体の位置を直した。
「おう。んで、何の話をする?」
「長い話はできないんだけどさ。とりあえず、僕は幸せだったんだなぁと思って」
「ん?」
「和城と出会えて、僕は自分の世界が変わった。楽しくなったし、面白くもなった。世界がこんなに明るいものだって知った」
「…何暗いこと言ってんだよ?」
「暗いかな?」
「割とな」
でもそう語る孝一の表情は、今まで見た中で一番楽しそうで嬉しそうだった。




