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「本当にこれで最後だからって、2人っきりで話がしたいって言われたんだ」
「そしてのこのこ着いて来たら、いきなり色仕掛けをさせられたと…」
「うっ…!」
「利実は本当に悪巧みに長けているんだな」
呆れた方が良いのか、感心した方が良いのか、真面目に悩んでしまう。
「そして男がオレの他にも3人もいたのに、お前を選ぶところも小賢しいというか…」
「ゴメン、反省してる。でも例え色仕掛けをされたって、言うことなんて聞く気はなかったよ?」
「分かってるって。それにしてもなぁ…」
更に続けようと思った言葉だが、ケータイが鳴ったので中断した。
かけてきたのは仲間の1人だった。
ガイドさんがバスに戻って来て、そろそろ出発だと言っているらしい。
すぐに戻ると言って、電話を切った。
「もうみんなバスに戻って来てるって。利実も戻っただろうし、オレ達も行こうぜ」
「うっうん…」
それでも気落ちしている孝一。
まさかこんな手に出られるなんて、思わなかったんだろう。
ショックが大きいみたいだ。
オレは手を伸ばし、自分より幾分か低い孝一の頭を撫でた。
「わわっ!」
「いい加減、落ち込むのはやめろ。そんな顔でバスに戻ってみろ。仲間達が騒ぎ出すぞ?」
利実が孝一を連れて行ったことは、仲間全員が知っている。
そこで利実が不機嫌に戻り、孝一が落ち込んだ様子で戻れば、トラぶったことが一目瞭然だ。
「ごっゴメン」
「お前のせいじゃねーって。それより笑えって」
オレは孝一の頬をぐいぐい引っ張った。
「うへっ!」
「お前の笑顔が、一番癒やしの力を発揮するんだ。だから笑えって」
「うっうん」
孝一は弱々しくも、笑みを浮かべた。
「うし! んじゃ、行こうぜ」
オレは孝一の手を掴み、走り出した。
「…変わんないね、和城」
「ん?」
「こうやって僕の手を引っ張ってくれるところ」
「嫌なら言えよ。すぐにでも放してやるから」
「ははっ。…もうしばらくは、このままで良いよ」
「…ああ」
駆け戻ったオレ達を、利実を除いた仲間達が不安そうに出迎えてくれた。
苦笑をして見せ、席に座る。
けれど窓際に座ってしまい、慌てた。
「あっ、お前窓際に座ってたよな? 変わる」
「いいよ。もうバス動き出したし、帰りぐらいは何とかなるから」
孝一は乗り物酔いをする体質だった。
だからいつも前の席の窓際に座らせていた。
この席順になったのも、孝一の乗り物酔いを防ぐ為だった。




