そして共に行った者
翌朝、利実は大広間に顔を出した。
まるで何事も無かったかのような上機嫌で、オレ達と朝食を食べた。
その様子にいささか不安を感じる。
しかし帰り際に言い合いを始めるのはダメだ。
とにかく、旅行が終わればいいんだ。
それまで何があっても、動揺してはいけない。
したらオレ達の負けなんだ。
午前中の自由観光は、近場の観光名所を巡った。
みんな楽しそうにしていた。
…少なくとも表面上は。
昼食を現地のレストランで食べた後、いよいよバスに乗る。
そこまでは特に何事も無かった。
利実も大人しく、楽しそうだった。
席順は最初の通り、男達は2人ずつになり、女性4人組は後部座席に座った。
…さすがに利実の告白の件を聞いて、彼女達も思うところがあったんだろう。
席順を最初の時に戻して欲しいと言われた。
また戻ったことに、利実は特に何も言わなかった。
やがてドライブインで休憩となる。
この前のことがあるので、今度は全員で一緒にいることとなった。
どことなく、空気が澱んできているのを感じる。
利実の笑顔も、強張ってきた。
アレは疲れからじゃない。
焦りからだ。
もう旅行は終わってしまう。
なのに変えることがどうしてもできない、焦り。
ここで騒ぎ出すのは意味がない。
余計にグループのメンバーに不興を買うだけだ。
恐らく、ここは大人しくやり過ごすだろう。
いつもの毎日に戻り、ほとぼりが冷めた頃を見計らって、またグループに入ろうなんて考えが、手に取るように分かる。
オレ達はあんまりにも利実を甘やかし過ぎた。
時には両親のように、時には兄や姉のように。
親友のように、親戚のように接してきた。
だがそれで利実をダメにしてしまった。
オレへの報われぬ思いがあるだろうが、何よりこの感情の名前を、オレは知っていた。
依存、だ。
利実も分かっていながら、どうしようも無かった。
オレ達に依存することを、止められなかった。
だからここで切り離すことをしなければ、その依存性は強い独占力に変わり、暴走してしまう。
これ以上、何かや誰かを傷付ける前に、切り離さなくてはならないのだ。
例えどんなに強い痛みを感じても…。
「和城、僕たちトイレ行って来るね」
「あっああ」
「先にバスに戻っててもいいから」
「分かった」




