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オレはあえて孝一を見ず、そのまま温泉風呂に入り、寝ることにした。
他の2人も精神的に疲れていたんだろう。
早めの就寝となった。
オレは夢も見ず、ぐっすり眠れた。
とりあえず、肩の荷は下りたのだから…。
そして翌朝。
爽やかな起床。
朝食も大広間だったが、やっぱり利実は来ない。
今日は旅行会社のプラン通りの行動をしなければならない。
女性達に頼んで、連絡を取るように言った。
3人はイヤイヤながらも頷いた。
ケータイ電話で連絡を取ると、どうやら体調が悪いので参加しないと言っているらしい。
ガイドさんにそのことを伝え、オレ達は利実を旅館に残してツアーに参加した。
ここで残れば、また厄介なことになる。
幸いにも仲間達はツアーを楽しんでいた。
途中、土産物屋で利実への土産を買うか女性達が悩んでいたのを、オレは止めるように言った。
僅かな期待も持たせてはいけないと―。
彼女達は少し迷ったが、従ってくれた。
利実をこれ以上、甘やかしてはいけないと分かってくれたんだろう。
夕方、旅館に戻ると、ガイドさんは利実の様子を見に行った。
夕飯を大広間で食べていると、複雑顔のガイドさんが戻って来た。
どうだったか聞くと、暗い声ながらも大丈夫だと言ってきたらしい。
明日は午前中、自由観光をして、バスに乗って帰る。
明日のことについて、どうするか仲間達と話し合った。
さすがにこのまま利実をほっとくわけにはいかなかった。
この旅行の目的は、縁を切る為だ。
最後に楽しい旅行をして、終わらせるというのが条件なんだ。
それを違えた場合、利実からどんな因縁をつけられるか分からない。
とりあえず、孝一が連絡を取った。
すると明日は一緒に行動したいと言ったらしい。
とにかく、明日はできるだけ利実の機嫌を損ねないようにしようと、結論がついた。
その夜、オレは中々寝付けなかった。
明日で本当に終わりにできるのか、珍しく考え込んでしまったからだ。
布団の中に入って1時間後、耐え切れずに寝室を後にした。
茶の間に行き、冷蔵庫からビールを取り出した。
窓際にはイスとテーブルのセットがあったので、障子戸を開け、月見酒をすることにした。
「はあ…」
ビールを一口飲むと、苦味が舌にきた。
ビールは好きな方なんだか、今日はやたらに苦く感じるのは気のせいか?
「和城」
「ん?」
寝室から、孝一が出て来た。
「寝付けないみたいだね」
「あ~、わりぃ。気になったか?」




