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「まっ、利実ちゃんもきっぱり失恋できたことだし、これでいろいろ吹っ切れてくれると良いんだけど…」
「時間はかかるだろうな。それでもオレ達はほっとくしかないんだよ」
「…そうだね」
何やら考え込んでいる孝一を見て、オレは首を傾げる。
「何そんなに考えているんだ? まさか利実のこと、好きだったのか?」
オレの言葉を聞いて、孝一は物凄く呆れた顔をした。
「…僕、彼女が和城のことを好きだって気付いたの、早かったって言っただろう? そんなコに、恋愛感情なんて抱かないって」
コイツは大人しそうな顔をして、結構言うな…。
「僕が考えていたのは、彼女の気持ちが冷めるまで、暴走しないかってこと。ただでさえあんなに暴走しやすいコなのに、これからはどうなるんだろうって」
「それでもその矛先はオレに向けられるだろうよ。アイツもそれで納得したんだし」
「それが一番問題なんじゃないか! 彼女、悪い人達との付き合いがあるみたいだし…」
「はっ! 売られたケンカは買うまでよ」
「和城ぉ…」
「んな情けない顔すんなよ」
オレは木から背を浮かせ、孝一の所へ歩き寄った。
「何となるって。気にすんな」
「気にするよ! …いざとなったら、警察でも何でも頼りなよ?」
「わーってるって。それよりそろそろ夕飯の時間だろう? 旅館に戻ろうぜ」
「…うん」
沈んだ孝一の手を引っ張り、オレ達は旅館に戻った。
夕飯は旅館の大広間で食べることになっていた。
が、予想通りと言うか、利実は不参加だった。
それどころか自腹で別室を取ったのだと、女性3人が怒りながら言っていた。
しかし怒りながらも、どこか安堵している。
昼間あんなことがあって、一緒に居辛かったんだろうな。
静かながらも、どこか柔らかな空気が流れたまま、夕飯は終了。
その後、オレは仲間達を呼びかけ、男性部屋に集まった。
そしてさっき利実とした会話を伝えた。
仲間達は終始険しい表情をしていたものの、それでも一安心したようだった。
しかし利実の怒りの矛先が、オレ1人に向けられたことについては、さすがに心配していた。
けれどオレの腕っ節は知っているし、身内には警察関係者もいると言って聞かせると、渋々ながらも納得したようだった。
…孝一1人除いては。
視線が痛い。ザクザク刺さっているよ。




