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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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上手なスキルの悪用法2




スキルの確認としてはあれもできるかやっておきたい。まぁホムンクルスになった途端にできなくなるとは思えないが。私はもう一度メニューを開き装備欄を操作する。シュンという音と共に私の外見が変わった。


「な、ななな。」


私の姿を見てリアは顔を真っ赤にした。


「どうしたの?ラグ?これだから無線は…」


「なんで全部脱いでいるんですか!」


リアは私の冗談にも反応せずに私の体を指さす。


「いや実験には必要だから。それに全裸じゃないしワンピースだし。」


プレイヤーが全装備解除すると今の私のように肩がむき出しで丈の短い薄手の白いワンピース姿になる。確かに現実じゃ外で歩ける恰好ではない。


「フィールドで全解除なんて頭おかしいですよ。ちゃんと服着てください。」


「無理。できるだけ装備重量減らしたいの。」


目的のために必要なら脇目も振らない。この時の私はスキルを試すことにしか頭になかった。


「ならこれ着てください。」


慌てたままリアがトレードを飛ばしてくる。

それを装備すると、私は端部が透けてる深紅のネグリジェ姿になった。


「これ着替えた意味ある?布面積あまり変わってない上に透けちゃってるけど。」


「き、気分の問題です。一番重量値低いのがそれですので。」


動揺している。これはリアの趣味の可能性が微レ存。まあいいか。


「改めて行くよ。」


私は待機させてあった血を薄く広げて円盤にしてから地面スレスレに動かし…

上に乗った。


「おっ。大丈夫そう。」


そのままゆっくり浮き上がっていく。


飛んでる!飛んでるよ私!スカイダイビングやパラセーリングと違って宙に立つ感覚は新鮮だ。風を思いっきり感じられるのもいいけど空中を意のままに動くというのも悪くない。


「いいね!いいね!白い空間じゃ浮いてる感じしなかったんだよね。こうやって見える風景が上がっていくとちゃんと飛んでいるって思えて楽しい。それになんかチュートリアルより飛びやすい?」


「それも種族の関係ですね。ドワーフよりホムンクルスのが軽いですから。」


それは思わぬ誤算だ。ホムンクルス有能すぎない?それはそれとして、これが【硬化】と【運搬】と【血流操作】スキルの合わせ技だ。


【硬化】:STMを消費し自分の体の一部を硬質化する。対応する部位のDEF値と耐久値を上げる。


【運搬】:インベントリの容量と装備重量上限値を上げる。身につけたもののファンブル率を下げる。


【硬化】は戦闘スタイルが格闘系の人が取るスキルだろう。だが私にとって重要なのは硬質化の方なのだ。

体の一部として血が判定されるなら、血を固めることが可能と思った。

【硬質化】や【結晶化】というMPを消費して物体を固めるスキルもあったが【硬化】の方が自分の体の一部という制限がある分消費も少ないらしい。それに私の戦闘スタイル的にスタミナ消費の方がいい。


私が飛ぶには土台の血を固体にしなければならない。そのための【硬化】だ。あと飛ぶのは別にして、血を水魔法みたいな使い方と、固めて土魔法みたいな使い方の両方用意しておきたかったっていうのもある。



そして【運搬】。これは私にとって今後最強のスキルになり得る。装備重量上限値も重要だが…身につけたものを落としにくくする、これがすごくいい。

何せ血に触れたものを落とさないという事だ。つまり私の血が私の体を運ぶ際に、体を落とさない。それはスキルレベルが上がればより小さい血で、よりアクロバットに飛行できるようになる事を意味する。


まあ、こんなの序の口だ。これはまだまだ(あく)(までも正規利)用できる。


気分よくスキルのことを話してると、リアが自分の目を覆っていることに気が付いた。


「どしたの?」


「すごいんですが、その…スカートが。」


私は今リアの上空2メートルぐらい上で立っている。それでもリアの言う懸念がない事はリア自身が言っていたはずなのだが…


「いや、スカートの中は見えなくなる効果が働くってリアが言ったのに。実際見えてないんでしょ?」


確かプレイヤーの思考をブロックしているらしい。VRハードであるアーバティオンが特定の思考をジャミングしてプレイヤーに見ているという認識をさせないとか。情報系も面白そうだなぁ。いつか勉強して原理を理解してみたい。


「こ、これも気分の問題なんです。少しは気にしてください。はしたないですよ。」


「私の貧相な体に興味ある男なんていないよ。」


「…女はいるみたいな言い方ですね。」


「ハハハ。私には女心というものが分からない。」


まことに不本意ながら私は結構後輩に知られている。それはこの一年いろんな部活動を巡ってきたためだが…その中でも特に私を慕う後輩お嬢様が一人おり、彼女曰く『愛は見つけるものではなく作るものです。私は先輩の見た目が好きなわけでなく、見た目を好きになったのです。』らしい。

後輩よ、日本語で話してくれ。


「私もその後輩さんの言ってることは分かりかねますが、アバター作る前のヒノはふつうに美人だと思いましたよ。」


「リアはわかってないね。美人の種類は一つだけでも、可愛いの種類はたくさんあるんだよ。

つまり美しさを突き抜けたリアはともかく、美人系は他と比べられやすい。

だからこそ、ナンバーワンではなくオンリーワンな可愛い系の女の子の方がもてるのだ。」


まぁ可愛い方がとっつきやすいってのが一番の理由な気もするが…


「ヒノは体形がちっちゃ可愛いですよ、それにヒノの問題は内面な気がします。(多分その後輩も内面が気に入ったって言いたかっただけな気がしてきました。)」


「…ふーん。私の性格と身長に難ありとは…リアも言うようになったね。」


そう言いながら私は血の板から飛び降りリアの後ろに着地した。そのまま細い腰に自分の腕を回す。リアの動きを止めてから血の制御を手放した。


その瞬間、リアに血の雨(物理)が降った。私ごと。


「なんでツッコミが自爆なんですか…」


「だって捕まえないと避けるでしょ。避けられるツッコミ程むなしいものはない。だからこそツッコミは必中必殺でなければならないのだ。」


「フフッ。ボケ担当のヒノがツッコミを語ってます。」


「誰がボケ担当やねん!」



ずぶ濡れになった私たちはその後デバフが解けるまで今後の予定を話し合った。なお傍からは血まみれで笑い合う頭のおかしい二人に見えたはずだが、誰にも見られなかったのは救いだった。



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