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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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ヒノvsリア ―monocolor +blood



私とリアはルティアス城の中庭にいた。洞窟から垂れる青白い水晶の光と城の窓から漏れる暖かなオレンジの光が混じって大狼との激戦の時より明るくなっている。直径50mは決闘をするにはちょうどいい広さだろう。


「因みにリアの装備はどんな感じなの?」


「大体はヒノと同じですがこっちはAGIとSTMの補正重視でスキルのクールタイム減少とかが付いてますね。あとHPなんかもちゃんと補正してますよ、ヒノと違って。」


「まぁ私の場合は自分でHP減らすまでがデフォだし勝手に回復されるのはちょっと…。」


「何せVIT最低値ですもんね。ふふ。普通スキルを取るとステータスに補正が掛かるのにVITとAGIに一個も補正がかかってないのは流石に笑います。それも意図的にしてないのが何とも。あはは。」


「それは良いの。私は無傷の完全勝利か一発喰らって即死かっていう戦闘スタイル気に入ってるから。相手の攻撃にスリルを感じられる所が好き。あと移動速度は私の場合AGIじゃなくてINTが関係してくるから。」


私の移動は主に血による自己【運搬】だ。血の速度はINTに依存、力強さはSTRに依存している。血の上で動くとなればAGIも関わってくるのだが、INT上げた方が【暴食】やリアの魔石に《封入》された付与魔法の威力なんかも上がって二重でお得だ。なのでINTの方を重視している。


「それにしてもクールタイムか。私のスキルにクールタイム必要なものがないから概念すら忘れてた。ていうよりこれ以上考えること増やすと私の頭がパンクする。」


「ヒノは十分人外な戦い方してると思いますよ。この世界では魔法は住民の方が上手いという認識なんですよね。プレイヤーは現実で魔法を使えないのでいきなりうまく扱える人は少ないらしいです。操作系スキルも同じです。ヒノは初めから【血流操作】使いこなしていたので驚きました。」


「人外て…。私ホムンクルスだから当たり前でしょう。」


「そういう意味じゃないです~。」


「それはいいけどなんで敬語に戻ってるの?」


「忘れたの!?ヒノが他の人には敬語にしろって言ったからじゃない!」


おおっと。そいうやそんなこと言ってたよ。普通に冗談だったんだが…。怒られそうだし言わんとこ。


「エルフィが飼いならされてる…。」


一緒に中庭に出てきたソフィアが変なこと言っている。無視だ無視。


「よし!ただ戦っても面白くないから、負けた方は勝った方の言う事何でも一つ聞くってことにしよう!」


「うぇっ!?……何でもって、どこまで?」


「リア、そこ具体的にしようとするの怖いよ…。何でもは何でも。そうね、一日着せ替え人形でもいいよ。リア、服作る時超テンション上がってたし。」


「(どうしようどうしよう。何を要求すれば…確かに一日ヒノのファッションショーとかいいね。そうなったら性能無視で外見特化の服作りまくれるし。ヒノが恥ずかしがりそうな服だっていくらでも着せられる。いやヒノはそういうことで恥ずかしがらないか?ならむしろ辱めてみたい。あの端末スクショもできるから撮り放題で記録にも残る。でもでもリアル方面のお願いの方がいい気もする。この前言ってた桜見も一緒にやりたい。ただメールだけはちょっと味気ないかな。そうだ!リアルでヒノに着せ替えしてもらって写真送ってもらうってのは?で着る服は私がお店で決めると。おー私天才?いや待て待て。それ位なら普段着姿を送ってもらえば済む話かも。年中旅行するヒノの事だ、色んな国の服たくさん買ってるに違いない。だからやっぱり…ぶつぶつ)」


あーこれはリアを本気にさせたな。というかもう勝った気でいるし。フフ舐められたものだ。これはいい。私は負けるのが嫌いという訳じゃないけど、勝つのは大好きなんだ。それも実力あって余裕で勝つ気満々の奴を負かしてやるのが特に。だから…。


「「この勝負絶対に勝つ!!」」


「二人共さっきまでの和気あいあいな雰囲気はどこに行ったんですか!急に殺気立ちすぎです!」


「おっと、ソフィアさん待たせた。勝負は決闘だけどどちらかが一撃入れたら終了ということで。判定はソフィアさんに一存。リアもこれでいい?」


「はい!」


私はメニューから決闘申請を指で弾くようにリアに飛ばす。いちいち名前が分からなくても今の私のように決闘を申請できるのが便利だ。冒険者ギルドでランク上げした時のことを思い出す。こうやってポイポイ申請できたおかげで回転率が上がったのは言うまでもない。


リアから申請の許諾が返ってきた。私の視界に「30」のカウントが表示される。白軍服姿のリアは左腰にある刀『桜切』に手を掛ける。

今の私達は20m以上離れている。決闘はスタートするまで互いに20m以内には近づけない。要するにカウントがゼロになった瞬間に攻撃をぶつけることはできない仕様だ。それが可能だと魔法職が絶対に勝てないし。近接同士も純粋な勝負になり難いからだろう。だってそれならカウントがゼロになる前に攻撃して相手がノックバックしてる間に追撃するとかできそうだし。何のためのカウントダウンだよそれ。ん?待てよ…。似たようなことなら今の私にもできないか?やってみる価値はあるか。


私は両手に比較的ATK値の高い曲刀を一つずつ持つ。決闘前に血を取り出せないのが辛いなあ。血の操作も一応アクティブ操作なので決闘前には発動しない。なので私は開始した瞬間が一番無防備なのだ。それをリアも狙って来るはず。


カウントが3になった。私は両手を振りかぶる。


……2…逸らした重心を前に戻すようにして両手の曲刀に力を伝えながら振り下ろしていく。


……1…前に倒れるほどの勢いで両手を離し二本の剣を投げ飛ばした。


……0…――ガガンッ!パッシブで【投擲】の効果が乗った二本の剣が回転しながら凄い速さでリアに激突した。


私は攻撃の結果を見届けることなく手元から大量の血を取り出した。その半分を数多くのホース状にしてリアのいた場所に向かって伸ばしていく。もう半分は上空に輪を描くように配置する。最後に私本体を血に乗せて上空へ逃がす。


剣が床に転がる音が届いた。まぁあんな攻撃じゃあダメージすら無理だよねぇ。でも攻撃自体は本当にできちゃった。私自身が20mに入らなかったら攻撃できるかもなんて適当なものだったのに。


それはもういいや。さてと…。私は【自傷】を発動する。これは【(The_All)(_to_Bro)(od,_fro)(m_Brood)】の能力の一つ。自分のHPを一定値に固定することで自分の血を回収し続ける。私の体から赤いオーラが漏れ、HPが見る見るうちに一割になった。それによって今度は【逆境】が自動発動。私のSTRとINTの基準値が倍増する。発動条件はHPが一割以下になる事。このコンボが私にVITもHPも必要ない理由だ。


さらに【自傷】と同時進行で私は右腕の腕輪に嵌った魔石の内二つに魔力を通す。すると見る見るうちにリアに向かった血に土砂が纏わりつき白い靄が漂い始める。

そこでリアの姿を再び視界に入れた。驚いたことに最初の位置から一歩も動いていなかった。あれ当てが外れた?てっきり距離を詰めてくると思ったのに。

そんなことを考えてる間に【土魔法:付与】と【氷魔法:付与】の掛かったたくさんの血の腕がリアを襲う。できるだけ周囲全方向から逃げ場を作らないような軌道だ。それを見てリアは一歩後ろに下がった。私はそれに追随するように血と土と氷の濁流をズラす。そのズレが狙われた。そう思った時には半回転して背後を一線、回転そのままに左右が合流した前方の奔流にもう一線が引かれた。変化が起きたのは引かれた線上の血…だけではない。付与魔法が消え攻撃に回したほとんどの血がその制御を唐突奪われたかのように落下、地面を赤く染めた。


「本当に魔法が斬れるんだね【細太刀】。しかも思ったよりずっと消滅範囲が広い。リアが理論上最強とか言うはずだよ。」


【細剣】と【刀】のスキルレベルを50まで上げた後に二つを消費上位更新することで手に入るスキルが【細太刀】。リアが武器スキル最強と言わしめるその能力は魔力を消すパッシブスキルだ。実際は剣に魔力を纏わせると他の魔力を対消滅させる振動を生むらしい。他の武器でも魔法は斬れる。でも魔法を消せるのは【細太刀】のみ。

この差がはっきり表れるのは対全体魔法だという。例えば大きな炎。普通の剣で凪げば剣の軌道上の炎は風圧でさけるが二つに分かれるだけだ。対して【細太刀】の刀は炎を成す魔力の本流を斬れれば一瞬にして炎の全てが消える。

これは魔法で炎を飛ばす際の仕組みを考えればわかりやすい。火魔法は実際の所ただの魔力塊を飛ばしているに過ぎない。飛ばした魔力の表面が常に炎へ変換し続けることで炎の塊に見えているだけ。そして【細太刀】によって中心の魔力を少しでも対消滅させれてしまうとそこから揺らぎが生じる。乱れた魔力塊はもう炎に変換しなくなり結果炎の魔法が消滅する。


これは何も攻撃魔法にだけが対象ではない。私の血の操作だってそうだ。私は血に魔力を行き渡らせることで操っている。その本流を斬られれば全体の操作までが狂わされる。今のも付与魔法と血が二度斬られただけで全滅。えげつない。


言うなれば【細太刀】は対魔力最強なのだ。武器というのはどれも一長一短。そこで槍が一番だとか斧が一番だとかは論じるだけ無意味。でも魔力が絡んだとき必ず頭一つ抜きん出るのは【細太刀】。だからこそ戦闘という全てに対応すること前提の話では最強と言える。以上リアさんによるスキル解説参照。やっぱりリアにはスキル辞典みたいなの作って欲しい。


さて、これくらいで諦める私じゃない。私はすでに上空で準備していた円形の血から様々な武器を投擲した。途切れることのない投擲の雨にリアはその場で迎撃する。速過ぎて見えないリアの刃は向かってくる武器をことごとく薙ぎ払っていく。武器の嵐と合わせてその様子はまるで台風だ。中央の目でリアが大暴れしている。金属が乱打する轟音がどこか小刻み良く洞窟に響く。


「案外ッ!ヒノは私にとって一番のッ!天敵じゃないッ!?」


声と共にリアの弾いた直剣が私を狙ったかのように一直線に飛んできた。私は目の前に血を生んで剣をストレージに回収する。


「どうだろ。魔力のともなわない広範囲攻撃はリアに有効ではある。でもこれは天敵というよりちゃんと相手できてるってだけ。他の人だと対等に戦えないからそう見えるんじゃない?」


私の戦い方はオールマイティだから誰相手でも攻略法が見い出せるのが強み、今もその点で対応できている。といっても結構無理してるんだけど…。


血による投擲はそれなりの準備時間がいる。血のレールを配置→剣を取り出す→レール上を滑走→遠心力を利用して投擲。全四工程。私はこのゲームを始めてずっとこれを続けてきた。おかげでコントロールと時間短縮は大分習熟してきた。それでも数秒は掛かってしまう。一度に飛ばす武器の量が多いのだ。これ以上は流石に無理。

だから投げ方を工夫する。今上空の血は四つに分割している。そしてそれぞれが別の役割になるように一つずつズラして動かしている。血のレールを配置している所。剣を取り出している所。剣をレール上で滑走させている所。遠心力を利用して投擲している所。一瞬を切り取った時、四つの場所で全てが別の場面を持つようにする。こうすることで常にどこか一つがリアに向かって投擲している状況を作り出す。ただ言うのは簡単だがやるのは難しい。必要なのは慣れだ。流れ作業としてリズムを作るのがコツ。最近ようやくこの状態で他の事を考える余裕ができた。


投擲武器の半分は初期武器だ。これをATKの低いとあなどると痛い目を見る。何故なら私のようにVITゴミなプレイヤーなら一撃で致命傷だ。リアを一撃で倒すのは無理だが…当たればノックバックが発生する。その隙もまた致命傷になり得る。


毎秒十本近い数を投擲する私にその場で迎撃し続けるリア。細い刀一本でデカいランスなんかも弾き飛ばすのは理不尽に見える。ただそこにも理由がある。


[桜切]

武器種:刀

ATK:168 重量:30 耐久:230

付与効果:【DEX上昇補正】【クリティカル率上昇】

付与特性:【桜ノ切】【装備制限:AGI(80)】


【桜ノ切】

クリティカルを連続で出す度にATKが上昇する。


付与特性【桜ノ切】はなにも攻撃にのみ適用することはない。私の投擲をパリィする度に彼女の持つ刀にまとう桜吹雪のエフェクトが大きくなっていく。今ではリアの手首まで覆う勢いだ。今までこれほど【桜ノ切】の効果が大きくなったところは見たことがない。ATK値は見るも恐ろしいことになっている事だろう。


ふぅ。私は一度冷静に大局を俯瞰する。一見私が一方的に押してるように見えるがこの膠着状態を作ったのリアの方だ。彼女は最初の位置からほとんど動いていない。なるほど、リアの狙いが分かった。私はゆっくりと地面に降り立つ。


「初めから持久戦狙いって。それが一番楽だし確実なのは分かるけど、本気で勝ちに来すぎじゃない?なりふり構わなさ過ぎ。」


「ヒノにはッ!言われたくッ!ないッ!」


うわっと。また武器を弾き返してきた。案外余裕あるのか?動いて躱さない理由だが私の武器を自分の近くに放置したくないっていうのが一つだろう。血を使った至近距離から不意打ちしてくることを警戒している。


でも一番は違う。STM消費を抑えるためだ。剣を振るだけならSTMは使わない。振る際に一歩を踏み出して初めて消費するのだ。つまり移動さえしなければリアのSTMがほとんど減ることはない。

一方私は血の操作でMPを【硬化】でSTMを消費し続けている。その上リアより複雑なことをやってる自覚はあるのでミスが出るのも私が先だろう。っていうかAIのリアにミスとか全く期待できない。このままだと確実に私が先に破綻する。


「かといって攻撃を緩めれば突っ込んでくるのが目に見えてるなぁ。なら…。」


私は周囲にユニークスキルの無限インベントリから新たに複数の血球を。手元には【運搬】で増えたショートカット枠から二本の投槍を取り出す。


「もう一段ギア上げていこうぜ!」


両手の投槍を体を回転させる要領ようりょうでサイドスローした。私の意識は上空に八割、自分の体に一割、残りの一割を血球に向けている。投擲と並行して血球を地を這うようにしてリアの元へ向かわせ、リアの間合いギリギリの位置に漂わせた。そのタイミングで投槍の連撃がリアに届く。事も無げに弾かれたその一瞬で、たった今配置した血からリーチのある長槍とハルバードを取り出した。

『チャージ』

『ハードスマッシュ』

真っ赤な光を宿した二つの武器がリアを前後から襲う。


「そうね。じゃあセカンドステージと行きましょうか…。」


その言葉を合図に…彼女の右足が力強く地面を蹴った。




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