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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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九ヵ国首脳会談7 SIDE ミヒノ



「それは今にわかるよ。」


首だけ振ってミスティカの質問を返すミヒノ。


はてさて、ここまでいい感じで来たぞ。九割方アドリブで突っ走ってきたにもかかわらずだ。恐れおののけ、当初の計画だと「女神の結界の隠された仕様を言う」ぐらいしか達成されてない。ちゃんと私の思い描いた終幕に向かっているのが我ながら不思議でならない。


それにしても私に王国の情報があってよかった。別に調べた訳ではない。私がCNOを始めたのはつい最近だがこの一年間CNOの話を色々と聞いてきた。そう、葵だ。オーレリア王国とは知らぬまま葵のホームがある場所として国内の様子とかよく話題にあがった。いやー幼馴染様様だよ。おかげでミスティカとの密談でも役に立った。



リア:もうヒノは何がしたいの!


おっともう何通にもなるリアさんのお怒りチャットが来た。ずっと無視していたけどいい加減まずいな。


リア:会談始まる前に色々指示を受けたけど、私たちが攻撃される前提のものがある時点でおかしいと思ったわ。喧嘩売る気満々だって。


まぁそこは気にするよね。私たちに直接攻撃してくる連中がいたら私の合図でこの会談から追い出すようにリアにはあらかじめ言っておいた。これじゃあ私が攻撃されるようなことをすると言ってるも同然だ。結果として犠牲者が一人出てしまってるしリアはまだそれが続くと疑ってるわけだ。そしてそれは的を射ている。ぶっちゃけまだ私が攻撃されると予想した所まできてないのだ。誠に遺憾ながらプレイヤー一人を退場させたのは予定外である。流石に魔王の方はまだいなくなられると困るから合図を出さなかった。



リア:大体女神の結界なんて嘘まで吐いて


ヒノ:いやいや嘘吐いてないから!ちゃんと私たちが殺せば女神がその結界の担い手になって耐久値のない結界が手に入るんだもの。何も違わないでしょう?


リア:その担い手って私の事でしょうが!何より私が死んだら殺した人の所属国に結界の権限が移るっていう重要なことも隠してるし!


リアは死なないから絶対の結界で違いないのに…。まぁ確かにリアが今も女神と言えるかは微妙だ。スキルの管理者としての権限はもうなに一つ残ってない。でも精神が女神様だから、リアは。むしろマジ天使?うん、何も間違ってない。


ヒノ:嘘は言ってない。ただ話してないだけ


リア:騙してる時点で有罪なの!


フフ。バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。この件を知ってるのは私たちと女神だけ。そしてリアが関わってるから他の女神にも口出しできない。イコール!このルールが住民側に漏れることは絶対にない!


ヒノ:ちょっと落ち着きなよ。これもリアのためなんだから


リア:何が?


ヒノ:リアを担い手にしてしまえばその国はリアに従 リアを守らざるをえないでしょ。そしたらリアが死ぬリスクを減らせる


何せこれからはこの世界を巡ることになるんだ。それを考えれば国のバックアップがあって損はない。


ヒノ:できれば半数は確保したかったんだけど。流石に女神の結界だけで殺されてくれるほど甘くないよねぇ


リア:何で半数?


ヒノ:いや〈 c 〉ってのが言ってたじゃん。グランドフィナーレには全ての国の繁栄か消滅が条件って。でも実際グランドフィナーレに報酬があるとしてだ、貰えるのは多分貢献度の一番高い人でしょ?なら過半数の国を私が消滅すればその時点で報酬を確保できる


ヒノ:もう私が動かなくてもいずれリアが手に入る状況に持ってけるならそれでもよかった。でもここで私たちの正体がバレたらNQも戦争も介入できなくなる可能性が出てくる。だから過半数が私の許容範囲ってこと


まぁ過半数なんて最初から期待してないし私の計画には入ってない。むしろオーレリア王国が提案に乗ってきたことが想定外だ。ミスティカ殿下いいわ~。考え方が私に似てる。考えることは決してやめないけど簡単に自分の直感に身を投げられる。

他の人達なんていきなり現れた不確定要素なる私の存在で身動きができていなかった。頭の回る人間ほど一番最初に考えるのは保身と様子見だ。なまじ考えれば正解を得られるために時間をかけてしまう。自分の直感を一度否定し吟味する癖がついている。

そんな中、あの王女はためらいなく私を信用した。自分を殺そうとする人間をだ。死なせるにはもったいない。


それでも私には優先順位というものがある。ミスティカの命とリアの解放。両取りを目指してはいても片方を切り捨てることに私は容赦しない。


リア:ヒノは私のこと考え過ぎでは?


リアが何やら恥ずかしいことを言ってきた所で私は机の中央に帰還した。参加者全員が私に注目しているのが分かる。あれだけ引っ掻き回したんだ。これくらい目立ってもらわなくては困る。


「いやー待たせてごめんね。オーレリア王国には確認することがあったんだよ。でも貴方達には関係ないよね。私に殺されてはくれないんだもの。」


私はあえて挑発するように言った。皆の顔に私を警戒する色が見え自然と口が曲がってしまう。


自分でも今のテンションはどうかと思う。最初は演技だった。人を動かすのだ。尊大な態度で臨まないと相手にもしてくれない。そうやって順調に周りから無視できない存在になっていったはずだった。おかしくなったのは途中から。こういうのを「形から入る」というのかもしれない。私の頭で想像し、私の体で演技しているソテイラという人間が日御碕 灯と重なっていく。彼女が私の気分まで高ぶらせる。ククク。あー楽しい。これから起こることはもっともっと彼女わたしを楽しませるだろう。


「ちゃんと理解してると思うけど一応確認のために言っておこうか。私に殺されて得られる女神の結界は始まりの国のものと同じ。始まりの国の住民は無所属と言ったでしょう?私に殺された国の住民の扱いも同じよ。それは私に殺された国は二度と他国へ戦争を仕掛けられなくなるということ。」


ゲームに整合性を求めるなら当然のことだ。一方的攻勢なんてそんなのはもう戦争と言えない。


「はっきり言って私の提案における国側のデメリットって貴方達の命と戦争への参加権消失しかないの。そして魔王国はともかく他の国全員が一度に死ぬのなら国のメンツとやらも保たれるでしょう?少なくともそこを突かれて国が傾くことはない。この状況でオーレリア王国以外の国はそれを承知して私の提案を蹴った。それは見方を変えれば他国を占領できる機会を永遠に失うのが嫌だったと言ってるようなものだわ。」


「それは無理があるだろう!」

「お話になりませんね。おかしな理屈です。」


私の話に口を挟むように声を被せたプレイヤーが二人いた。私は間髪入れることなく指を鳴らす。音と共に会場の空席が二つ増え、三つになった。私は何事もなかったかのように話を続ける。


「貴方達の言い分はこうだったわね。自分がいないと国が成り立たない。絶対の結界は要らない。戦争には勝てるから自分が死ぬ必要はない。自分の命が大事。」


その言葉を使った住人に向かって順に顔を合わせる。


「ハァ……。その上で他国を奪う可能性を失う方法は取りたくないというのはどうかと。どれも自国の事ばかりで世界の事なんて何も考えてない。これじゃあ魔王ネルキアとやってることが何も変わらないじゃない。」


所詮自分の国と命を優先しているだけ。魔王ネルキアはここを肯定できる男なのが好印象だ。一方で他の国は自分を善人ぶっている辺りが面倒臭い。彼らだって戦争に勝てるなら…他国を侵略できるなら…自国に利が得られるなら……他はどうだっていいと思っているのに。これを悪と呼ばずして何というのか。


「貴方達が死ねば「戦争」なんて言葉すらこの世界から消える。本来叶うはずのない世界平和がいま目の前にぶら下がってるの。貴方達は自分の国の住人である前にこの世界の住人だ。なのにその機会を自分たちの都合で不意にするなんて世界の敵といっても過言ではない。」


私は声を低く言い捨てる。反論する者は全て悪と断じる様に。


私はここまで会場にいる人間にどれだけ悪印象を与えられるかだけを考えてきた。私の行いの正当性なんてどうでもいい。国の悪評を稼ぐことが今後大事になってくる。そろそろ大詰めだ。


「私考えたの。真に平和を考えるオーレリア王国第一王女殿下が死んで世界を裏切る七人の魔王を生かすのは果たして私が求めていたものなのか…。確かに私のしたかったことは正義の味方や救世主になること。でもそれは結果であって目的じゃない。私は楽しめれば何でもいいの。例えばそうね…。」


偶然黒い手袋をはめた左手が目に入った。そのまま思い付きを口に出す。


「別に今日悪竜ディアスロフィアが復活して大陸全てが更地になっても私は構わないわ。史上最強が放つブレスなんて絶対カッコいいに決まってる。フフフ。その光景が一目見られるのならたとえこの世界が滅んでもそれだけの価値はあると思わない?」


私の薄ら笑いだけが聞こえた。私の声に応える者はいない。ていに言って皆絶句していた。プレイヤーは悪竜を知らないのか困惑顔だが住民の方は顔を真っ青にし魔王でさえ驚きを隠せないでいる。プレイヤーが騒がないのは先ほど口答えしたヤツを問答無用で退場させたからだろう。


それよりこれじゃあ私より悪竜の方が怯えられてるじゃん。悪竜の名前出しただけなのにこれって。今この場で悪竜の卵出してやろうか? ……。それも結構楽しそうだな。いかんいかん。身バレは禁止!身バレは禁止!


「私はこういう人間なの。今回は偶々救世主なんて面白い役を貰えたからそれを楽しんでるだけ。世界を救うのも楽しいけど滅ぼすのも同じくらい楽しめそうだもの。いつか私にもそんな力が手に入ればいいのに。フフフ。

それはさておき今日の会談は本当に楽しかったわ。皆が私の手のひらを動く中たった一人だけ私の思惑を外れた人がいたからね。」


そう言ってミスティカに顔を向ける。彼女の顔がその髪の色と同じ赤に染まったように見えた。


私の計画に名前を付けるなら「イフィジェニー」がいい。それは国王が国のために娘を犠牲にする悲劇。戦争へ向かう船の順風を願うために女神の怒りを鎮める犠牲になることを許容する娘とそれを望んだ国王の物語。この戯曲は時代の流れと共にで様々な解釈がされてきた。西洋近現代でなら国王の判断は悲劇ながらも肯定されるが現代では父が娘を殺す到底受け入れられない話となる。

私は会談でこの戯曲を再現したかった。自らが国王役、八人の住人が娘役となって。いや正確に言えば八人が娘役として動かないのを筋書きにした。基本的に価値観を現実に合わせているCNOでも「イフィジェニー」は倫理に反していると拒否されるだろう。娘役の八人は犠牲になる事を受け入れない。それは物語の破綻だ。物語において自己犠牲は推奨される善性であり、期待された自己犠牲を拒むのはナンセンスとされる悪性である。私はこうして国の期待を裏切る八人の悪役を作りだそうとした。


でもあの王女は違った。彼女だけは本物の「イフィジェニー」だった。おかげで私の物語も偽物にならなくて済む。


「さて今の私は救世主。だから最善の結果を目指すわ。アハハッ。この場合王女を救って魔王七人を滅ぼすなんて最高ね。」


私はプレイヤーに弾き飛ばされ放置されていた直剣を回収し再び周りに漂わせた。この剣はリュースの特注品で中に私の血をかよわせている。血を【硬化】させれば【運搬】の効果もあって宙を思いのままに動かせる使い勝手のいい武器だ。


私は手前の一本を掴む。


私が用意した計画は純然たる悪に属するものになるだろう。勿論それを実行する私はまごうことなき悪人である。

私は基本的に悪役が嫌いだ。物語に出てくる悪役は決まって頭の方も悪く見ていてイライラさせられる。誰も彼も自分の利益を追って隠匿するだけの陳腐な存在。私に言わせてみればあんなのは三流以下だ。自分に正義を持つのが三流。第三者から善に見える角度があるのが二流。では一流になる条件は何か……。誰の目にも悪に見えないこと?善を覆す強さがあること? 違う。完全な悪とは自分含め関わった人全てを悪におとしいれるものをいうのだ。真なる悪は善たる存在を作らない。

まさに全世界を悪に染めるその所業、とくとご覧いただこう。これが本物の悪役というものだ。


私は見る者全ての注意を引きつける様に手に持った豪奢な直剣を振り落とした。


――ガキンッ。


「私から全プレイヤーに向けてクエストを通達する!

クエスト内容は ――魔王国ネルキア、セーレ帝国、迷宮の国ローゼ、商業国家シャーレ、工業国家ブルーム、ハルム聖王国、亜人国家カリムの七か国、うち一か国の滅亡!

クエスト報酬は ――始まりの国NQの最終ボス戦動画の公開とNQ報酬の詳細情報を掲示板に記載、加えてここルティアス城のPV動画の公開!」


私の宣言に会場に残ったプレイヤーの目が一斉に見開かれた。一瞬の間をおいてコメントが色めきだす。


あーダメだ。楽しすぎて自分を抑え切れない。テンションが上限を突破するのを自覚した。勢いそのままに剣を突き出し、続きを高らかに謳う。


「さあ、異界者諸君!私は誰も知らない物語をつづった一人だ!それは君たちがやってきたどんな冒険より難解であり、迫力と緊張をもって君たちを魅了することを保証する!獲得した報酬は君たちの持つどんなアイテムだって霞むだろう!

その輝かしい一端を見たければ剣を取れ!魔法を唱えろ!立ちはだかるは七人の魔王!遠慮はいらない!平和を捨て、自国の安全を捨て、利己に固執した愚か者共に正義の鉄槌を!」




誤字報告助かります。あと次で会談は終わりです。明日…いや今日中に投稿するのでしばしお待ちを。

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