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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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九ヵ国首脳会談2 SIDE 王国代表プレイヤー




入ってきたのは二人のプレイヤーだった。扉の奥には普通に外の廊下が見える。俺達のような転移ではなくただ単に歩いてきた感じだ。それはこの場所は架空の場所ではなくCNOに存在する場所の一つだと示していた。ここはどこなのかという疑問はさておき今は二人に目を向ける。

一人は真っ黒なローブを頭から被って全身を隠していた。フードの奥は影で顔が見えず性別すら判別できない。もう一人は先ほどの声主だ。背が低く声もどこか不安定に聞こえた。まるで自分の声に慣れていないかのようだ。恰好はこちらも真っ黒なローブなのだが……腰や足、手なんかに沢山のベルトを巻き付けているので丈の短いワンピースともドレスともいえるような見た目になっている。腕を覆う手袋や長いニーソも同じく黒。コツコツと足音を鳴らすハイヒールすら黒で統一されている。喪服もかくやと言うほどの黒ずくめ。だからこそ彼女の白い髪が際立っていた。流れるロングヘアは雪のような透明度を持って歩くたびに波立たせる。そしてもう一つ目を引くのは彼女のしている目隠しだ。黒地に銀の刺繍が入った布が両目を覆っている。にもかかわらず迷いなく歩く姿はまるで目が見えてるかのようだ。


「ようこそいらっしゃいました。わたくしは皆さまを歓迎いたします。」


彼女の挨拶に返す声はなかった。モノクロな彼女は人として見るには作り物が過ぎた。まるで神に作らせたマネキンを思わせる容姿と捉えどころのない丁寧な話し方に会場にいる全員が一瞬で引き込まれていた。それが分かってるのか口元をわずかにほころばせながら話を続ける。


「さて会場の準備をいたしましょう。」


言いながら手を合わせパンっと柏手かしわでを打った。その瞬間会場の壁沿いにたくさんのAR表示が現れる。


『おお!!』

『おおおおお!』

『キタ―――!!』

『キタ――!!』

『おお!?コメうつるじゃん!!』

『キタ――!』

『スゲ――!!』

『キタ―――!!!』


突如浮かび上がった文字は大小さまざまでその全てが時計回りに流れていく。


「これは会場外の異世界人いえ…異界者(プレイヤー)の言葉です。外の皆様も種族レベルによって文字の大きさが変わるのでご了承ください。」


自分の席まで歩きながら説明する黒少女とその後に続く黒ローブ。その間にもコメントの数は増えていく。


『あの子がNQクリア者だろ。何者なんだろ?』

『NQの内容教えてくれないのかな?』

『動画上げてないんでしょ。教えてくれるかどうか…』

『でも普通情報は共有するもんじゃない?』

『だよね!みんな知りたいんだし早く教えて~』

『ナショナルクエストの情報は伝える義務があるだろ!他の国のクエストクリアの助けになるかもだし!』

『なんだその義務ww』


流れるコメントは黒少女に関わるものが大半だ。無理もない。謎が多すぎる二人のプレイヤーだ。気にならない方が嘘になる。ケヤキもここに来るまでに色んな人から始まりの国のNQの情報を聞き出せとせっつかれた。コメントも情報開示は当然という意見が多い。ケヤキはその大半がNQ情報獲得のための方便であり、便乗してそれがCNO全体の総意にしようとする動きであるのを知っていた。ケヤキ自身も理屈はおかしいが情報開示はしょうがないと考えていた。ただ自分からNQの事を聞く気などないが。そうしてるうちに二人が自分の席まで辿り着き、黒ローブだけが背の高い椅子に座った。


「それでは只今より第一回九ヵ国首脳会談通称ノネットサミットの開催を宣言いたします。わたくしは始まりの国の代表兼アイテムの管理者代理兼ノネットサミットの司会進行を務めてさせていただくソテイラと言います。こちらはわたくしの仲間のエル。先に外部からの質問にお返しておくとわたくしたちは確かに始まりの国を救いました。ただその詳細に関しては会談後半に触れさせていただきますので少々お待ちください。」


ソテイラ…救世主ねぇ。その恰好からはかけ離れてるな。邪神教徒の黒幕の方がよほど似合う。にしても俺も聞いたことのない名前だ。偽名にしても彼女のようなトッププレイヤーに心当たりがない。始まりの国ならもしかして本当に初心者なのかも…そもそもNQはこの二人でクリアしたのか?まだ仲間がいる方が自然じゃないか?もうひとつ気になるのは彼女がNQの情報をしゃべるつもりなことだ。今しゃべるならどうして掲示板に書いたり動画をあげたりしなかったのだろう?今そのせいで少なからずヘイトを買っているというのに。


ケヤキが様々な疑問にさいなまれてるとNPCの一人が声を上げた。


「ちょっと待ちやがれ!ここはルティアス城の中だろう?俺は一度来たから分かる。あの城は消滅したはずだ。どうして存在している?」


ルティアス城?聞いたことないな。他のプレイヤーもそんな表情だ。だがルティアス城の名前が出た瞬間NPC全員の顔色が変わった。


「この場所は女神様がお選び頂いた会場です。わたくしが答える案件ではありませんね。」


「何か知ってるという反応だな。まあいい。だがこっちには答えてもらうぞ。エルフィ・ルティアス。あの女はどうなった。」


「……それこそあなたには関係ありません。知りたいなら女神様に直接聞いてくださいませ。」


片方は目隠ししているのに両者の視線で火花が散ったのが分かった。ひりついた空気が流れる。


「……………クソ。」


これ以上問い詰めても無駄と思ったのか住民側がその暴言でもって話を終わらせた。代わりに口を開いたのは隣にいるプレイヤーだった。


「おいおい。異界者(プレイヤー)を除け者にするなよ。そのルティアス城ってのは何なんだ?NQクリア様よ。」


『そうだそうだ。知ってる情報全部吐け!』

『ルティアス…俺も聞いたことないな』

『黒い子は何で知ってるんだ?』

『NQ関係か?』


コメントからも急に始まった知らない話に戸惑いと共に説明を求めるものが多く流れた。それらが見えているのかは分からないが少し呆れ気味に黒の救世少女は答える。


「誰もかれもわたくしに聞きたがりますね。知ってるのはわたくしだけじゃないでしょう?この件に関して知らないのは異界者の怠慢です。」


「……は?」


「住民なら誰もが知ってる常識なんですよ。なのでわたくしからわざわざ話すことはありません。」


そういって彼女は話を一蹴する。さっきまで責めていたプレイヤーも口を閉じてしまった。彼女の言う事が本当でもルティアスとやらを今まで住民が話したことはなかったはずだ。ならNQクリアと同時に話せるようになったと考えていい。これはお知らせにあったNPCの思考制限とやらに関わってきそうだ。これは帰ってから聞けばいい案件か…。


「さて会談に関係ない話はここまでです。とりあえず皆様がここに集められた理由を先にご説明させてもらいます。この度女神様方は皆さまの国が自立することをお求めになりました。今まで女神様方がかけていた絶対の結界は無くなり、代わりに各自不完全な結界を任せます。また住民の皆さんを縛っていた女神の指示もなくなりました。その禁則事項の一つにあった他国への干渉が無くなり、友好的にも敵対的にも関係を結ぶことができるようになります。そこで一度全ての国を介して話し合いの場を設けるという配慮を女神様はして下さいました。それが本日の目的となります。各国が自国の意思表示をして好きに同盟を組み宣戦布告してください。」


『なるほどなるほど』

『マジかあああ』

『え?戦争始まんの?』

『住民巻き込むの嫌なんだけど。。。』

『いやなら亡命でもさせるか戦争に勝てばいいんだよ』

『住民が死ぬとこ見るのが嫌なんだよ!』


「一つ申し上げておきますと戦勝国に所属する異界者には女神様からの報酬もあるそうです。ただし敗戦国のNQは消滅して二度とクリアはできなくなりますが。」


『ええええ!!』

『報酬なんてあるのか…』

『これは戦争に参加するプレイヤー多くなるだろうな』

『NQ無くなっちゃうのか。でもその分は戦勝報酬に回るってことだよな』

『今まで全くクリアできなかったNQより戦争に勝つ方が現実的な気もするな』

『俺は今まで通り無所属貫くかな。それなら気楽に遊べそうだし』

『ん~所属するだけしておけば報酬貰えるのかもだけど・・敵国のプレイヤーに狙われるようになるのはなあ・・』

『どうせ貢献度順で貰えるもの変わってくるだろうし・・俺はパスかな』

『別に傍目からは所属国なんて分かんないんだし良くね?』

『今見えなくても敵対国にはカーソルでバレる仕様なんだよ。ちゃんと要項読め!』


戦争の話に盛り上がる外野。ただ流れるコメントが戦争前提の話なことに気付く人間は少なかった。そしてそれが意味することも…


「とりあえず自己紹介がわたくししか終わっていませんので他の方もお願いしますね。」


黒少女ソテイラは顔を左に向けた。それ受けた相手も話し出す。


「あいわかった。儂は迷宮の国ローゼで議長をやっておるクリフ・エルテリアという。自国の意思だったな。儂は今日平和的な話し合いができればいいと思っておる。特に隣国のセーレ帝国と商業国家シャーレとはな。」


迷宮の国ローゼ。議会制で迷宮から産出される物流の管理を取り仕切ってるという。今しゃべっていたのがその最高役職の議長でドワーフ。国としての一番の特徴は中央に塔の迷宮がそびえ立っていることだ。塔の迷宮は現在最高到達点が50層で迷宮自体は100層あるといわれてる。俺も一度入ったことがあるが頂上に行くのは無理だとあきらめるしかなかった。少なくとも幾らレベルだけ上げても到達できないことだけは分かった。情報やアイテムだけじゃなく技術なんかの準備が相当に必要になってくるだろう。迷宮専門のクランがあるほどだ。今俺達「柱時計」が挑んでも歯が立たないのが目に見えてる位には難易度が高い。


そしてその迷宮の最高到達記録を持つクランが「夜桜」でありそのリーダーが…。


「ブランだ。ローゼ所属クラン「夜桜」の団長。いつもは迷宮探索をしている。」


童顔に高い声。どこか学生っぽい雰囲気の男だ。まぁ顔なんかはいくらでも変えられるので現実でも学生なのかは信用ならないが…。彼についてはあまり知られてない。何せイベントにも参加せずずっと迷宮に潜ってるので名前だけが先行している。迷宮の動画を上げてるらしいのでそれを見ればいいんだが俺はあんまり見ないんだよな動画。その時間が勿体無いっていうかそれより自分でプレイしたいっていうか。

彼の方はそれだけ話して隣に顔を向ける。


「我はハルム聖王国第十三代聖王のグリーフ・テオ・ハルム。我が国は他国に不干渉を望む。以上だ。」


威厳ある口調で話すアラフォーの聖職者然とした男は聖王だったらしい。俺は聖王国に行ったことがないので国の事はよく分からない。いやそれは俺だけじゃないか。聖王国は自国の運営について秘密裏に行われているらしい。だから聖王も顔が知られてなかったはずだ。異界者が手に入れた情報としては聖王国には地下宮殿があり、その最下層に聖女が祭られてるってことぐらい。ちなみにその聖女も会った異界者がおらず具体的に何をやってるか不明である。ただ聖王国の中枢を担っているらしいのでNQに関わってくるのでは?と昔から言われている。残念ながら実際発現させたという話は未だにない。


「じゃあ私の番ね!聖王国所属で歌手活動させてもらってるELSA(エルザ)って言います。よろしくー」


現実の制服を思わせる黒セーラーにぶかぶかの紺パーカーを着た美少女が立ち上がる。気安い内容を会場全体に響く透き通った声音で伝えた。


『エルザ様キタ――!!』

『キタ――!!』

『ELSAカワイイ――!!』

『声がカッコよすぎる!』

『歌姫様ぁ~~!!!』

『先日の新曲最高でした!!』

『キャーー!何か歌って!歌姫様ーーー!!』


「歌姫」今じゃあそう呼ばれている彼女は自分の曲を動画として上げたり聖王国を拠点にして色んな国でツアーしたりとCNOを盛り上げるのに一役買っている。彼女の声はエッジの利いた高音で、清楚系なのに歌うと熱い歌手として人気を博している。CNOをやってなくても曲は聞いたことがある人や彼女の曲を聞くためだけにCNOをプレイしている人も少なくない。ただCNOでは生ライブをするが現実やWCGではしたことがないため素顔が謎の少女としても有名だ。そういう面も彼女の魅力をあげている要因になっている。


なぜそう詳しいのかだって?何を隠そう俺は彼女のファンだからな。ライブに行ったことないニワカだが現実で曲を買うくらいには彼女の曲は好きだ。ああサイン欲しいなぁ~。ダメかなぁ~。


《エルザ様私も大好き(#^.^#)私の分のサインも貰ってきて(`・ω・´)<オネガイ!》


ずいぶんタイムリーなおねだりメッセが届いた。アイツ俺の思考読んでないよな…。なんかめっちゃ怖くなったんだけど。そんな訳の分からない恐怖と対峙してる間にエルザは話を続ける。


「戦争とか好きじゃなけど聖王国が巻き込まれるっていうのなら……私の剣が黙ってないわ!」


そう言って腰元から一本のレイピアを引き抜く。魔剣ミューズ。彼女をただの歌手たらしめないのがこの剣だ。空間さえ屈折させる鋭い剣先が周囲を威圧する。彼女は剣の強さでも有名だ。特徴的なのは歌いながら戦いまるで踊っているような戦闘スタイル。高いAGIに任せて縦横無尽に駆け回る姿は見る者すら圧倒する。俺も一回は戦ってみたいものだ。


「剣をしまえ俗物が……むやみに自分の獲物を晒すなんて剣士として二流以下だ。」


口の悪い言い方をするのは先ほど黒の救世少女ソテイラと言い争っていた住民だった。隣の席なのにイラついた態度を隠そうともしない。


「ハハ。剣士最強とうたわれる皇帝様に言われちゃしょうがないね。まぁ私は言う事言ったのでこれでおしまい。ああ新曲出ました。「February」買ってね~」


『エルザ様カッケー』

『新曲買う買う!』

『剣帝と歌姫の掛け合いが見られるとは…もうお開きでいいじゃねww』

『バカヤロwwまだ始まったばかりだww』


怒涛で流れるコメントが収まらない内にお隣さんが腕を組みつつ話し出す。


「はぁ次は俺か。セーレ帝国第七代皇帝エルドラド・ロン・セーレだ。歯向かう者は斬るのみ。ただそれだけだ。」


最後に剣呑とした目をソテイラに向ける皇帝陛下。セーレ帝国。皇帝が代々実力主義を重んじており定期的の行われる武術トーナメントで結果を残せば騎士に取り立ててもらえる。そしてこの皇帝こそ住民最強と言われてる一人。「剣帝」とは彼が剣の腕で彼の右に出る者はいないとして呼ばれている敬称だ。俺も戦ったことがあるがあれはヤバい。俺も歌姫と同じでAGI型のビルドだが剣帝の速さは次元が違うと言わざるを得ない。足の速さがではない、剣の速さが違った。その時は一太刀も合わせることなくバッサリ斬られてしまった。あれは参った。今ならそんな不甲斐ない結果にはならないだろうがまだ勝てる気はしない。それにしてもさっき黒の救世少女にエルフィ・ルティアスって女の事を尋ねていたが…誰なんだろうな。


「えっと。帝国所属クラン「VorteX(ボーテックス)」リーダーのハク。よろしく。」


おどおどして自信なさげに話す男の子。彼もかなり有名だ。今の様子からはうかがい知れないが短剣の二刀流で対人の鬼と言われている。クランもメンバーが全員対人専門でホームに闘技場があるとか。俺も先日帝国であった武道大会で戦って負けた。手数勝負になると刀のこちらは分が悪かった。ハクはそのまま勝ち続け優勝していた。つまり実質俺は準優勝タイだな。うん。


「では儂じゃな。商業国家シャーレで監査長をやっとるベルクルードと言う者じゃ。うちは戦争にはならんと思っとるから安心せい。」


そう言うのは人族のおじいちゃんだ。白髪に髭が達観した印象を与えてくる。それにしても最後のはどういう意味だ?戦争は起きないってことか?


「狸爺が。お前の腹には金でも詰まってるのか?」


皇帝がベルクルードに軽口を言う。皇帝陛下顔が広いな。CNOが稼働する前にもこの世界は存在していたらしいからその時の知り合いなのかも。


「これはエルドラド皇帝陛下、ひさしぶり振りであるな。だがその言い方は心外じゃな。貴方に剣があるように儂は儂のやり方をするだけ。大目に見てくれんかね。」


「はん。まぁ利益になる分には飼ってやる。」


「陛下が賢明でいらして安心したわい。」


国同士の会話は難しすぎる。商業国家シャーレは三大商会と監査会で構成しているらしい。知ってるのはそれだけ。これに関しては完全に俺の専門外だからよく分からん。


「では次に回すとしようかの。ベクルト殿。」


「はい。シャーレ所属の生産クラン「万物商会」会長のベクルトと申します。以後お見知りおきを。国事は基本的に関知しません。ベルクルード殿にお任せいたします。」


監査長に答えたのはこの場に合ってない黒スーツを着た男性プレイヤー。狐目の彼の事も全く知らない。でも万物商会の方はよく聞くな。王国にも支店があるくらいだから当然だが。あそこは本当に何でも揃っててこっちの意向にも沿ってくれるから感謝してる。


「工業国家ブルーム元老院地の家長をやっておりまするファルブル・グランドである。私としては不可侵条約をオーレリア王国と商業国家シャーレと結べれば幸いと考えております。」


ブルームは別称で機械の国と言われているこの世界では少し異色の国だ。彼は「地の家長」みたいだが他に空と海の家があり地を含めて三家で国を回しているらしい。オーレリア王国の隣国なので何度か行ったことがあるが、王国が和の国なのに対して街並みが先進的と対照的で面白かった。


「じゃあ次は僕だね。ブルーム所属のクラン「ギアサイクル」リーダーを務めさせてもらってますメルクと言います。」


そういう彼の格好は少し変わっている。服は着ているのだが見える肌どこも金属の光沢を放ってるのだ。機人族。自分の体を機械で換装する種族だ。素体パーツは簡単に換えられるのでその戦闘スタイルは変幻自在のオールラウンダーとなる。向こうも大型クランなのでイベントで一緒になる事も多く顔の知れた仲だ。


「私はミスティカ・フェア・オーレリア。オーレリア王国第一王女です。私も不可侵が望むところとなります。同盟を作るにしても今すぐには不可能です。この場では互いの不干渉を約束してもらえればと。」


『美人さんだああ!!』

『王女様カッコいい!カワイイ!!』

『住民には炎帝って呼ばれてるけど王女様戦えるのかな?』

『そういや恰好が騎士風ドレスって感じ・・素敵です』


ELSAと並ぶ程のコメントが流れる。今まで王城から出ることのなかった王女様が初めて表舞台に出てきたからこその反応だろう。美人という噂ばかりが先行してたから期待も大きかったがここまでとは…


おおっと感心してる場合じゃない。我らがオーレリア王国の番だ。この国のためにも挨拶くらい頑張りますかね。ミスティカ様から目配せを貰うと俺は話し出す。


「オーレリア王国所属クラン柱時計団長のケヤキだ。王国の代表としてここに呼ばれたからには俺はあの場所を守り抜く覚悟だ。」


宣言にも決意にも聞こえる自己紹介を終える。ふっ…言ってやったぜ。


《よく声震えずに言えたね(∩´∀`)∩<エライ!》


開いたメニューからそんなメッセが見える。アイツ俺を子ども扱いしすぎじゃね?最近男扱いしてないとは思ってたけどこれは酷過ぎる!後で説教だな。


話すことは以上なので隣を向く。そこで見たのは足を組んでいるエルフの美女だった。息をのむ。ミスティカが端麗なら彼女は妖美といったところか。緑のドレスには色とりどりの宝石が散りばめられ、大胆に開いた胸元と太もものスリットから透き通った肌が覗く。何かを誘うような流し目が俺の目と合った。その大人というか妖艶な雰囲気に思わずドキッと胸が鳴る。落ち着け25歳社畜独身彼女募集中。いくら飢えていてもそっちに行っては終わりだ。誰か…誰か俺を止めてくれる人は……


《呼ばれた気がした(*'ω'*)/隣のエロフさんは何者かね(´-ω-`)<イイフトモモダ》


お前じゃねぇ………いや、そうだお前だ!お前なら今の俺を救ってくれる。やはり持つべきものは頼れる仲間だな。誰だよアイツの事説教するとか言ってた思い上がり野郎は…信じられんな!という訳でさっそく役に立ってもらうぞ。お前のそのペチャパイで俺の頭の中の女の子像を上書きしてくれ!


俺がバカなことしている間にエルフ美女が話し出す。


「ワラワか。亜人国家カリムの三王が一人「エルフ女王」リエルである。ワラワの国が同盟を組むことも宣戦布告もありんせん。………じゃが昔の因縁を忘れておらんことをこの場で言っておこうかの。何が戦争の引き金になるかよく考える事じゃな。」


そう言ってある一点を見る。その先で静かに見返すのは聖王だった。ああ確か聖王国は亜人の入国を制限してたな。女神に他国と干渉するなという命が下ってたのにもかかわらず聖王国は亜人差別を止めなかった。プレイヤーがこの世界に来るまでにはそれ以上のいざこざがあったのだろう。ハルムとカリムの二か国の間には俺達が思っていたより大きな溝があるのかもしれない。


「じゃあ私ね。カリム所属クラン「Animal Forest」リーダーをやってるフウと言います。テイマーとサモナー専門のクランですが興味ある方はぜひうちに~」


そう言うのは小柄な女の子だった。特徴的なのは犬耳犬尻尾が生えていることか。黄色のショートヘアに同色のマントも合わせて可愛らしい印象を与える。風の噂でしか知らないが彼女はテイマーとサモナーの権威だとか。珍しい魔物の捕まえ方から強い進化先まで網羅しているらしい。俺の興味の埒外だから知らんのはしょうがない。それに亜人国家と言えばここから最も遠い国だ。始まりの国の先にある死の山脈を越えた場所。王国が南西の果てならカリムは北西の果てにある。しかもCNOの大陸は凹という字を反時計回りに90度傾けた形だ。まぁ実際には北と南と東の端は「果ての大陸」と言って永遠と何もない上その地に入るだけで持続ダメージが入る…いわば天然の障壁だ。西だけは海に面しており王国からカリムに行くにはグルっとコの字を逆走する必要がある。海を渡るのは現状不可能とだけ言っておこう。つまり道なりで言えば最も遠いといえる国同士ということだ。そんなの接点があるはずない。概要だけ言うなら亜人国家カリムは「獣王」「エルフ女王」「ドワーフ王」の三王がそれぞれの役割を持って国を築いている。そういや副団長が一国家というよりも三国連邦と呼んだ方がしっくりくる国風だといっていたな。一度副団長から全ての国についてのレクチャーを受けといた方がいいかもしれない。


さて自己紹介も次の国が最後だ。ここまでそれなりに平和な話し合いだった。と言っても今日一番の問題国が残っているのだが…。



「魔王様!魔王様ってば!起きてください!魔王様!」


「………ん?どこだここ?」


「ちゃんと起きてください!今はノネットサミットの真っ最中です。ようやく我々の自己紹介まで順番が回ってきたんです!」


「…ああ思い出した。そういやわざわざ女神がここまでよこしたんだったな。ようやくあの忌々しい奴らから解放されるっていうから来てやったが退屈過ぎて寝ちまったようだ。で、適当にしゃべりゃあいいんだよな?シャル。」


「はい。どうぞお好きにお話しくださいませ。」


「そりゃあいい。俺は魔王国で王様やってるネルキアだ。確か俺の国の他には八つも国があるんだったな…。」


ネルキアは一度周りを見渡してから再び口を開けた。



「…………全て滅ぼしてやる。」




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