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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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悪竜の卵




金の鍵でホームまで戻ってきた。相変わらず青白い水晶で洞窟ごと照らされたルティアス城は幻想的な雰囲気を醸し出す。ここ中庭からの景色も大狼戦じゃゆっくり見られなかったが周りを7つの塔で囲まれるのは大迫力だ。この場所の動画だけでも再生数稼げるんじゃ?見てる側からじゃどこか分からんだろうし、ましてや始まりの国に地下があるとは思ってもみないだろう。再生数が上がればお金がたくさん入ってきて次の夏休みたくさん海外に行ける!


「ヒノが物欲にまみれた顔してますね。」


「ギクッ…って顔はそこから見えないでしょうがトンガリ帽子かぶってるんだから!」


「いやヒノが物思いにふけるなんて大抵物欲に駆られたときですからカマかけて見ました。」


「カマかけたって……最近リアから王女時代の片鱗が見え始めてるんだけど。」


「長いこと女神でいましたからね。自分の素の時なんて忘れてました。でも王女してた時も仮面かぶってましたよ私。」


「へぇ。まぁもう縛るものなんてないんだからやりたいようにやればいいんじゃん。」


「ヒノみたいにはまだ難しいです。一か月はこっちで暮らしてるのにまだ慣れませんから。何をすればいいか時々分からなくなります。」


「だから「すればいい」ってのが既におかしい。したい事しなさい。…って私が言っといてすぐになんだけど…。」


「何です?」


「いやリアはいつまで私に敬語使うのかなあと思って。」


「えーっと。私生まれてから敬語でしかしゃべったことがないので無理です。」


「まさかの即答!えー私は敬語苦手なんだよね。話し方なんて慣れだよ慣れ。」


「んーヒノがいうなら頑張ってみます。」


目を閉じて気合を入れるリア。そこまで大変な事かね。私は人間関係を大切にしないがパーソナルエリアは結構狭い。親しくもない人とでも平気でスキンシップできる。海外行けばそれが普通だしね。リアとも距離感を近く接してきたがリアから距離を縮めてくることはほとんどない。というかない。リアが私にワガママ言ったのはメールで私の写真送れってやつくらいね。あれも私から提案したのでカウントしたくない。少しは待つつもりだったが二週間いやリアからすれば一カ月…リアから私への歩み寄りがない。大体ちっとも敬語治さないと思ったら話したことないときたか。うちの学校のお嬢様達でもそんなこと言わない。でも私の同級生や後輩は基本的に敬語で話しているからこの一年で敬語に慣れ過ぎた。だからリアが敬語で話してるのにあまり違和感がなかった。でもここはCNOであってお嬢様学校じゃない。出来ればリアには敬語はやめて欲しいね。という訳で頑張れリア。


無言のリアが意を決して話し始めた。


「ヒノはたまにイミフな無茶振りしてきてマジウケるー。」


「……。」


「いきなりダンマリしてどうしたっスか?ポンポンペインペインってヤツ?」


「…………。」


笑っちゃだめだ。笑ったらリアが拗ねて敬語脱却が遠のく。だから腹に力入れろ日御碕灯!自然に、そう自然に「良かった」その一言を言えばいいんだ。簡単なミッションでしょう?ポーカーフェイスが得意な私なら造作もないはずだ。さあやれ!


「……ヨ、よかった…アルヨ…。」


「…なぜ中国風。」


「……ソ、そんなことない…アルヨ。」


「あるのかないのか。あと顔が大爆笑に片足突っ込んでます。」


「プッあはははははははははははははは!!!」


「な!?」


「リアにとっての遠慮ない会話ってどんなだよ。ははははっ。父親が考えた女子高生のセリフみたいだったわ。あはははは。」


「もう!!だって現実調べた時今の女子高生はこういう口調だって書いてありました!」


「いや別に女子高生っぽく話せなんて言ってないでしょ。ふふふ。前から思ってたけどリアの現実情報少しおかしいとこあるから。」


「そ、そんな!?間違った知識が混じってたなんて。ショックです。」


混じってるとかじゃなく。偏ってるっていうか使い方を間違ってるんだよなあ。


「普通でいいから。丁寧語やめればいいだけでしょ。」


「はぁ。では……これでどう?ヒノ。」


そう言って顔を赤面させるリア。うわ!何だこの可愛い生き物は!可愛いが服着て歩いてるみたいだ。落ち着かないのか自分の服を強めに握りしめてる。だめ!こんなの世に放ったら一瞬で食い物にされちゃう。独占しなきゃ…じゃなかった守らなきゃ。


「よし!私だけタメ口ね!他は敬語のままで!」


「え?ええ。私もヒノとは違った意味で人を寄せ付けないからヒノの言う通りになりそう。」


「そ?私いない時リアがどうしてるか知らないけど別に他の人と一緒に冒険しても怒らないから。メールで連絡もできるようになったしね。まぁ私はリアと一緒に行動すること前提にログインするけど。」


「私は待ってるから。ヒノは好きな時ログインすればいいわよ。」


張り付けたような笑み。その下に首輪がちらりと目の端に映った。ずるい言い方だ。リアの言葉は私が言わせたようなもの。私が現実にいる間すらリアは私に縛られてる。リアが自分から行動しないのは半分は私のせいだ。口じゃあ自由にしていいなんて言ってるけど今一番の重しが私であることは間違いない。


そして私はそれを悪いことだと思ってない。


「……」


「どうかした?」


「いやなんでもない。じゃなくてやっぱりため口いいね。どことなく強気な姫様っぽい。」


「フフなにそれ。まぁヒノが楽しそうで何より。でこれからの予定は?会談までの時間つぶしの一環でヒノの種族クエスト受けてたけど…」


「うん。もう一回死の山脈行きたいかなって。あそこがレベルが一番上がりやすい。会談が終わるまではそこで戦力増強ってことで。リアはそれでいい?リアの負担が大きいけど。」


何せ強行軍だからね。私一人でもいけるけどリアが嫌なら別の方法を考えよう。


「ヒノの行きたいところでいいわ。」


「ありがと。じゃあさっそくと言いたいけどその前に。」


「何?」


「卵ちゃんがどうなったか確かめないと。」


左手の甲を見る。そこには中央に卵の影絵のある魔法陣が描かれている。昨日死の山脈で[飛竜の卵]を三個を見つけユニークスキルで作った分を含めて六個を【契約召喚】の生贄にした。これで召喚に必要な贄が揃い、その時に手の甲の魔術刻印が今の模様に変化した。こうして召喚に必要な準備は全て整えたがまだ召喚自体はしていなかった。


「何が生まれるのかしら。竜の卵か、それとも全く別の魔物の卵か、はたまた卵型の魔物か。」


「マジか!飛竜の卵差し出したんだから悪魔型の飛竜の卵を召喚できると思ってたのに。」


「生贄はただの要素だから。可能性はいくらでもある。」


「そっか。でもどんな子が来ようが私のパートナーだ。ということでお披露目タイムと洒落込もう。《召喚》」


私の左手の甲が光り魔法陣が浮かび上がる。手の上の空間が揺らいだ。そこから黒い蜃気楼が蠢き真っ黒な卵が出てきた。私はそれを両手で抱える。


「お、重い!?」


大きさは[飛竜の卵]の半分もないが重さは同じくらいだ。それに黒い蜃気楼は卵にまとわりついて離れない。物凄い不気味だ。


私はとりあえずメニューを開く。パーティ欄に新たに追加されたものがあったので詳細を表示した。



[悪竜の卵]

人の世を一度壊した邪竜の王――悪竜。焔竜と閃竜と陸竜に討たれたのちに転生した卵。魔界に封印されていたところをミヒノの【契約召喚】に応じる。贄を媒体に物質界へと顕現した。ミヒノの魔力を喰うことで生まれてくる。



やはりこの卵というカテゴリは特殊だ。魔物とアイテムの両方の性質を持っている。パーティに参加してるのにHP表示がない。詳細表示はアイテムのくくりになってるようだ。


「悪竜…ディアスロフィア。」


「ディアスロフィア?」


そういやあのでっかいワイバーンにも名前があったな。普通の魔物と違うのだろうか?


「神話に出てくる竜。大陸の半分を滅ぼし果ての山脈の向こうは未だに人の住める環境にない。」


「ワールド半壊…」


これいちプレイヤーが手にしていい戦力の枠を超えてるんじゃ…テキストフレーバーも完全にラスボスじゃん!最悪私が人類の敵になりかねない!


「ちなみに詳細にある三竜はそれぞれがこの前見た飛竜と同格の強さよ。」


「つまり悪竜はあの飛竜の数倍は強いってことか。ますますラスボス疑惑が深まるな……ん?もしかして飛竜とワイバーンって種族違うの?」


「そうよ。飛竜は七竜王の一柱。レベルだけじゃなく魔物としての格が全く違う。」


「え、待って!ワイバーンの卵と飛竜の卵は違うの?」


「当然ね。鶏とグリフォンぐらい違う。」


マジか。家畜と伝説上の生物程も違うのか…。鷲獅子(グリフォン)なんて書くんだから比べるならせめてわしとかにして欲しかった……。


「さっきの言い方じゃ飛竜は世界に一匹しかいない…ってことは私が生贄にした卵ってワイバーンじゃなくてブレス吐いてきたあの竜ってこと?」


「だからそう言って…って知らずにやってたの!?」


マジか。いやだって青いラインの入った竜も名前にWyvernってあったもん。普通にあの竜はワイバーンの親玉だって思うじゃん。勘違いするって。


コピーしたワイバーンがレベル130だったから卵も育てたら最終的にそれくらい強くなるのかなとか思ってた。でもレベル130と224じゃ違いすぎる。だからこんなトンデモ召喚獣が来ちゃったのか…


「まいいや。私のパートナーは将来レベル200オーバーと同等の竜を三体も相手取る化け物になるのね。」


「うまくすればね。この卵は最終的に悪竜になる可能性があるってだけ。どういう進化をしていくかで全く別の魔物にもなり得る。全部ヒノの育て方次第。」


「確かにそれは楽しそう。」


魔物の成長はサモナーやテイマーの醍醐味なんだろうね。性格すらどんな子になるかも主人次第らしい。ならこの子も良い子に育てれば人類の敵ルートは通らずに済むだろう。悪竜だけど。……。私は現実じゃペット飼えないから楽しみだなあ(現実逃避)。


「それにしてもヒノもよく考えたわね。竜の卵はその性質上親にしか孵せない。なら自分が親になれば問題ない…と。」


「フフン。それだけじゃないんだな~これが。【契約召喚】は魔物を瀕死にしないと取り込めないから大物狙うと時間がどうしても掛かる。その点卵はポテンシャルが計り知れないのに初めから瀕死扱いだから簡単に取り込める。これ強い魔物の卵を贄にするのが最適解だね。」


「また変な考察してる。なんにせよ無事に召喚できてよかった。」


「そうね。じゃ、この卵を孵しながら死の山脈でレベル上げ頑張ろう!」






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