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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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World Cube Garden




私は今仮想世界にいる。しかしミヒノとしてではなく日御碕灯としてだ。昨日死の山脈付近のセーフティエリアから[金の鍵:始まりの国 BF]でホームであるルティアス城まで飛んだ。それから取ってきた鉱石全部リュースさんに預けてからログアウトした。

その夜。葵からチャットでメタバースで出会えないか聞かれたからWCGにログインした。アーバティオンが一年足らずでPCと同じくらいに普及し、WCG通称ガーデンはインターネットになり替わりつつある。うちはハッキリ言って必要なかったため買わなかった。私は現実世界を優先し、父は仕事で家を空けることが多いから。まあ父も仕事で使うためアカウントは持っているらしい。という訳でWCG初心者な私に葵からレクチャーしてもらう予定なのだ。


今立っているここはWCGの私のホームエリア。いつもはここからCNOを選んでゲームをするのだが今日は葵との待ち合わせ場所に向かう。えーっと確かCNO公式エリアで動画なんかもVRで見られるとか。結構楽しみだ。検索エンジンから目的のエリアを選び扉を呼び出す。その扉をくぐると目の前には大きなビルがそびえ立っていた。AR表示でCNOと出ておりここが目的地であるのが分かる。待ち合わせ場所のビルの前は広場になっており人であふれていた。結構遅い時間なのだがCNOはそれほどに流行っているということか。葵の姿を探そうとするが周りの皆が様々な服装で着飾っているので見つけられる気がしない。ちなみに私の服は初期のもので無地の白いTシャツに紺の短パン姿だ。こういうのもコーディネートできるらしい。服にお金を使うのは構わないが現実でも旅行先の特色ある服とかばかり買っている。こっちでも仮想世界の特色があるものがいいなぁなどと考えていると一人の少女が私に近づいてきた。


「灯~お待たせ!」


「葵か?なんか服が派手で一瞬誰か分からなかった。」


彼女の格好はどこぞのアイドルかとも思える程フリフリの付いたワンピースだった。黒と青のドレスにも見えるそれは現実の彼女じゃ絶対に着る類のものではない。


「いやーこれWCG(ガーデン)で行われたイベントの報酬でね。結構なレアものなの。こっちにいる人みんな派手な服着てるしいいかなぁと流されて着てる。でも灯の服はないわ。周り見ればわかると思うけど初期服は逆に目立つよ?」


確かに初期服着ている人はいるにはいるのだが私のように悪目立ちしている。こう真夏の海にスーツで来たような場違い感がある。


「まぁそこら辺も含めて色々教えて?」


それにしてもここが仮想世界なのが不思議だ。現実の彼女がアバターとしてここにいる。目の彼女は恰好はともかく他は葵本人と全く相違なかった。流石第二の現実と呼ばれるだけはある。一年前、世の中が騒ぎ立てた理由は分かった。でも今の時代は人と人との距離が技術の進歩で近くなり過ぎだ。私がWCGを避けていたのもそういう面もある。まぁ一番はインターネットの方が手軽に使えたからだが。


「じゃあ取り敢えず私の服貸してあげるからそれに着替えて。今日の目的はここ。ってことで中に入ってみようか?」


私は送られて着た服を受け取りメニューから装備する。メニュー表示には装備後の私の姿が映し出されたのだが…


「なんでメイド服?」


「あまりもの!あまりもの!」


「まあいいよ。今は葵のおもちゃになってあげる。」


ニシシと笑うテンションの高い葵と一緒にCNO公式仮想エリアという目の前のビルに入った。





「葵は魔法剣士なんだね。」


「そうよ。【嵐魔法:付与】と【刀剣術】がメインね。」


「ふーん。ユニークスキルは?」


「いやーまだ決めかねてるのよ。周りの反応を見てからでも遅くないでしょ?」


「周りで実験してる辺り黒いねー。ユニークも成長するんだし自分に合った二つがいいと思うよ。」


「へぇそうなんだ。ってなんでそんなこと知ってる!」


「親切な人が教えてくれた。フェーズワンから始まってフェーズファイブが最高位らしい。」


「そんな情報メニュー欄にも載ってないし聞いたこともないわ。」


「フェーズを上げるには新しい力を望むこととスキルに認められることが必要らしいよ。」


「待って待って。始めて二週間のニュービーがなんでそんなに詳しいんだ!」


「ふふん。私の情報網を甘く見てるわね!(全部リア頼り)」


「まあいいわ。重要情報をありがとう。それで灯はランダムスキルは何だったの?」


「【血液操作】だった。」


「へぇ聞いたことないスキルね。結構レアなんじゃない?種族は?」


「ホムンクルス。」


「それはれっきとしたレアだ。ってランダム選んだの?勇気あるねぇ。人属選ぶ人多いのに。」


私はリアから貰っただけだけどね。ランダムはスキルだけでいい。


「人属多いのはなんで?獣人やエルフ多いと思うけど。」


「ステータス成長がね。自分の戦闘に結構合わせてくれるんだよ。最初から決めるのもいいけど冒険してるうちに変わってくることなんてザラだから。」


「なるほど。」


「ホムンクルスとはいばらの道を行くね。まだ知らないかと思うけど今ステータス低いのは今後のポテンシャルを含めると妥当なんだよ。部位コンバートできれば幾らでも強くなれるし付与効果付きのレアな部位アイテムさえ手に入ればセットスキルの他にスキルも手に入る可能性もある強力な種族。まぁ一度コンバートしちゃうとその部位は換装不可になるから気を付けてね。いくらステータスが低いからって序盤の弱い奴素材にすると後悔することになるわよ。」


「あ~一度改造しちゃうともうできなくなっちゃうんだ。それは知らなかった。私もう左手をその部位コンバートとやらしちゃってて。もう次の素材も手に入れてるんだよね。」


「待ちなさい。いくらなんでも早すぎる。なんでコンバートできる人に伝手があるの?上位職業だから始まりの国にいるなんてことは……今ならいるかもしれないか…NQのせいで。」


「NQ…あーナショナルクエストの事ね。」


「そう。それより大丈夫なの?始まりの国周辺で手に入る部位アイテムなんて高が知れてるわ。ランクが低いから付与効果はおろかステータスなんかもほとんど上がらないって聞いてるけど。最悪キャラが詰むわよ。」


「あーそれは大丈夫。ちゃんと付与効果ついてるから。(三つ)」


「え!?付与効果ついてるってマジで!何倒したらそんなの手に入るの?始まりの国の南にある海でも潜った?レベル100オーバーじゃないとドロップしないはず。始まりの国周辺じゃあそんなの海にしかいないはずだけど。」


「クエスト報酬だよ。それにレベル43の私じゃあレベル三桁はまだ倒せないから。」


「43か。結構早いがまだ常識の範囲内だな。それにしてもいいクエスト見つけたようね。これなら私の所属するオーレリア王国まで半年くらいかな。」


「そんなにかかるのか。葵はクラン入ってるんでしょ?どんな感じ?」


「私は結構緩いわよ。誰かがレイドボス見つけたら一緒になって倒したりクエスト見つけたらいるメンバー募ってクリアしたり基本自由だね。ちなみにレベル50以上でホーム持ってればクランはできるよ。」


「んー別に作ってもなあ。」


「クランの利点ってイベントのチームとして目立つとかクラン名覚えてもらえれば国から目を置いてもらえるとかだからね。うちは翡翠の波紋ってクランだけど結構有名よ。高レベルのプレイヤーも多いし灯なら私の友達ってことでは入れるけどどうする?」


「今はいいや。その内顔出すよ。」


「そういうと思った。私の動画見る?結構再生数あるやつもあるから面白いかもよ。お金も結構入ってきたし灯も動画撮ってみれば?」


「んー公開するか決めかねてるんだよね。公式でも勝手にあげられるっていうけど、どんなのがあげられるの?」


「毎月あげられる声なしのヤツか。MADみたいに編集されてるから結構面白いよ。まぁあれはイベントがほとんど。今月ならGWの武道大会かもね。」


「ふーん。NQは違うんだ?」


「NQねぇ。どっちなんだろ。何せ今までNQはクリアされたことがないから動画化されるかも分からない。ただワンパーティのイベントや戦いは普通ならのせないよ。」


「公式の動画に載ってもお金がもらえるのはいいよね。上手く編集してくれるならその動画は伸びそうだし。」


「ああーあれは動画の盛り上げた人で山分け。貢献度は運営の独断専行で決めるらしいよ。」


「面白いね。にしても勝手にお金が入ってくるのは凄い。私の慢性的金欠がどうにかなるかもしれない。」


「夢があるよね。でも灯は交通費に消えすぎだから。」


「父さんが出してくれるんだよね交通費だけ。父さんとしては家で留守番してるより色んな所に旅行してくれる方が健全でいいらしい。」


「理解ある家族でよかったわね。」


どちらかというと母さんの考え方だったんだよね。父さんは私が母さんと同じ生き方したいことを分かっていている。その上で父さんも母さんに思う所があって私の行動を許可してくれている気がする。その辺は話したことがない。というより話すことを私が拒否している。


「それよりお勧めの動画見せてよ。葵の動画でもいいからさ。」


「じゃあ有名なレイドボス戦と私の公式イベントの様子なんか見てみる?」


「うん面白そう。」



この後二人で巨大ロボットに空飛ぶ乗り物で立ち向かうプレイヤーのレイド戦と無人島に飛ばされてサバイバルする葵と和のまとめ動画みたいなのを見た。巨大ロボの方は攻撃を一つ食らえば乗り物が大破するというスリリングなVRで、立体的な動きをするプレイヤーがかっこよかった。サバイバルの方は皆でツリーハウス作ってて楽しそうだった。ツリーハウスいいなあ。



「今度CNOの国の代表が集められて会談が行われるらしいね。私たちのクランには呼ばれた人いなかったけど知り合いの有名プレイヤーは呼ばれてる。噂じゃ始まりの国のNQクリア者も参加するらしい。」


「今度の日曜日の話ね。まあ結界の仕様が変わったから当然でしょうね。NPCもこれまでは戦争という選択肢が与えられてなかったし自国の指針を公表する場なんでしょうね。」


「宣戦布告とかはないと思うけど注目だよね。支配者のNPC同士がどんなやり取りするのか興味ある。」


「ふふ。葵はミハーだなあ。確かに宣戦布告はないだろうけど…戦争は起こるかもね。」


「え?何で?」


「それは…ひみつ。会談までのお楽しみ。」


「えーそこで引っ張るのは腑に落ちないよ。ってだからなんで古参の私が灯から物教わってるのよ!せっかく灯に色々教えるっていうマウントが取れると思ってたのに!」


「下剋上早かったなぁ。」


「灯がCNOで何してるのか滅茶苦茶気になるんですが…」


「人の縁がよかったんだよ。私の情報はほぼ人伝ひとづてだから。」


「えーさっきからそれ言ってるけど信じられないなあ。灯、本当に人付き合いなんてできるの?」


「馬鹿にしてぇ。そんなのできるにきま……」


そういやプレイヤーのフレンドが未だに0人だな。思い返せばプレイヤーと話したことも…ない?ただ決闘で殺しまくっただけ。あれ私プレイヤーとほとんど関わってないんじゃ…

いや私のプレイスタイルはもうこの際どうでもいいや。なるようになれだ。


「灯の心配がどんどん大きくなっていくんだけど。何かあれば言うのよ。私が助けてあげるから。」


「はいはい。頼りにしてますよ。」


「軽いなぁ。」


苦笑する葵はやっぱり現実そのままだった。





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