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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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聖女見習い




ボロボロに焼かれた二対の羽でワーちゃんは私たちを運ぶ。傷がよほどひどいのか羽ばたきなしで空を滑空していた。高度は10m程で速度も出てない。


「あと少しでセーフティエリアだから頑張れワーちゃん。」


「流石にギルディナスもここまでくれば大丈夫でしょう。」


「リアは懲りずにフラグを踏むねえ。もう意地すら感じるよ。」


「いやそんなつもりないですから!…ん?誰か近づいてきます。」


リアは両手の腕輪にハマった魔石の一つ【魔力探知】で気配を感じ取ったようだ。ちなみに私は拳銃の弾丸体験ツアー時に手に持った魔石を失くしている。


「あはははははははは!!!」


甲高い女声と共にいきなり何かが真下から突っ込んできた。


「ワーちゃん!」


目で追えるギリギリの速度で迫り、ワーちゃんの顔をすれ違いざまにカチ上げた。幸いワーちゃんのHPはそこまで減ってない。だがそれまで受けたダメージが響いたのだろう。衝撃で私とリアを手放してしまう。

私は自分とリアの足元に【硬化】した血を広げそこに着地した。

上を見るとソフィアと似た白いシスター服を着た薄紫色の長い髪の女の子がいた。手に持つ獲物は自分の身長を超える大太刀。ただ私の目を一番引くのは頭に生えたケモ耳とふさふさの尻尾だ。カーソルがないのでNPCだ。

中学生ほどの獣人は何もない空中を足場に四つん這いの姿勢になり。再びワーちゃんに襲い掛かる。


「これは大物!ふふふふ…あはははははは!!」


速度の出せないワーちゃんの周りを踊るようにして斬撃を繰り出す。剣速はリアが上だがAGI自体は向こうが上だ。ワーちゃんのHPの減り方を見るに相当レベルが高い。


「ちょちょ。何者!?敵!?」


「ヒノ。あの子ワイバーンを敵と間違えてるだけなんじゃ?」


それなら都合がいい。もうワーちゃんの維持コストを払ってないからもうじき消えちゃう。そうお別れの時間なのだ。ワーちゃん、君がいなかったらリアは【帰還】を使わざる得なかったでしょう。そしたら私は死んで手に入れた鉱石をロストしていたかもしれない。【帰還】を使ったり死んだりすると最後に入ったセーフティエリアから死ぬまでに手に入れたアイテムをロストしてしまう。そうならずに済んだのもワーちゃんのおかげです。本当にありが「あっ消えた。ワーちゃん南無~」


「ヒノがドライだ。ほら急にいなくなったからあの子慌ててますよ。」


「あーそれは不味いね。お~い!私たちは始まりの国所属のCランク冒険者。異世界人のミヒノとマリアだ。そっちは?」


私の声で大太刀を背中に収めるとこちらに近づいてくる。


「私はハルム聖王国聖女見習い。……って聖女見習いは言っちゃだめだった。」


そう言って血だまりでひざまずいた。尻尾はさっきまでピンと立ってたのに今じゃへなへなだ。口が軽いなぁ。私の挨拶に合わせようとしたんだろうが口滑らすの早すぎ。これじゃあここに来た目的とかも簡単に割るぞ。これは彼女に隠し事を頼む側の方が問題ある気がする。


「ああー聞かなかったことにするから名前ぐらい教えて?」


「あ、はい。妖狐人のエレーナ・フェレール…住民です。あのワイバーンは?それになんで連れ去られてたの?」


ああ両手に捕まれてたから無理やり運ばれてるように見えたか。これは勘違いさせたままの方がいいか。


「ワイバーンはエレーナさんが倒したんだよね?そう見えたんだけど。」


「え?いやいきなり消えたんだよ。というか向こうから攻撃してこなかったしなんか変な個体だった。」


「あのワイバーンは私たちにも攻撃してこなかった。私たちをどこかに連れて行きたいみたいだったから無抵抗になってただけよ。そしたらいきなりあなたが攻撃してきて。」


「え!?あれは自分の意志だったの?ごめんなさい私助けた方がいいと思って…」


「ワイバーンを攻撃した件はもういいわ。それより嬉々としてワイバーンを襲ってたわよね?」


「…………そんなことない。」


「戦い…楽しんでたわよね?」


「楽しんでない。」


「笑ってたわよ?」


「笑ってなぁい!」


そう言って私の口を塞ごうと飛びかかってきた。力が強くて抵抗できない。


「ふががが」


「こ、こらー何やってるんですか!」


「ムムム。」


頬膨らませながら私の口を両手で押さえるエレーナ。動物みたいに本能で手が出たってか?それなら…


「ムム…ふ、ふにゃぁ~~。」


私はエレーナの顎下をなでる。するとさっきまでむすっとした顔が蕩けたように崩れた。狐の中でもフェネックぐらい大きい耳や尻尾の毛が逆立つ。

犬も猫も耳の先や尻尾は触るのを嫌がるからな。撫でるなら耳元か首下、鼻筋がいい。狐は知らないが犬や猫とそんなに変わらないだろう。という訳でブリーダー仕込みの私のテクニックに墜ちろ!狐っ子!





目はうつろに頬は上気している。汗をかいた額にすみれ色の髪が張り付く。口はポカンと開けており粗い息づかいと言葉にならない声を常に発している。私の口に当てていた両腕も今は力が入らないのかだらーんとしいる。それは腕だけでなく体も同じで私に背を預けながら抱かれていても無抵抗だ。彼女の頭はもう何も考えられないだろう。ただ私の指が次に自分のどこを触れるのかだけに集中している。

彼女のシスター服はソフィアと違ってたくさんのスリットが入っており肩や腰など所々肌がむき出しになっている。彼女が見ている前で私は右手を服の隙間に入れ、太ももまで持っていく。そのまま触れるか触れないかのギリギリでスーッと腹、胸、首を通って唇をなぞる。その間彼女は体全体を震わせ涙ぐみながら必死に快楽に耐えていた。脱力した尻尾は触れている時だけ痙攣したように動いている。


「ふふ。私の指先にメロメロね。」


「どうしたらこうなるんですか…」


「ふ、ふがぁ~~~~ううあ~~ん。」


「肌も髪も耳も尻尾も最高の撫で心地ね。もう私なしじゃ生きていけない体にしようかしら。」


「やめなさい。ほら、もう解放してあげて。」


「それはいいけどリアの顔真っ赤だね。」


「誰のせいですか!エレーナさんの格好見たらだれでもそうなります!」


私は改めてエレーナに目を向ける。三角耳の頂点をピンと弾く。狐っ子が体をよじり口から甘い声が漏れた。んー現実の動物なら気持ちよさそうで済んだかもだけど…人型の彼女じゃ完全に事後ですね。


「リアもマッサージしてあげようか?」


「何でその流れで私に振るんですか!」


「いやリアがうらやましそうに見てたから。」


「見てません!」


あれ何でこんなことしてるんだっけ?まあいいか楽しかったし。


「しょうがない。ほらしかっかりしろ。帰ってこーい。」


「ふがふが……わ、わたしgあ~ここまで取り乱すとwあ~~ミヒノは s u ゴいなぁ~」


「いやエレーナはもともと感情的でしょ。ちょっと意地悪言ったら手が出てたぞ。」


「ううu~」


「さて誤解も解けたしお別れだ。じゃあね私の可愛い狐っ子ちゃん。」


「え?うわああああああああああ」


私は広げていた血を見えていた石碑のある沼に向かって伸ばす。必然的にエレーナの足場が消えた。10m下の枯れた大地に落ちていくのをしり目に二本のレールで滑走し始める。


「ヒノは唐突に興味を失いますね。あと気遣いがない。」


「ペットは短期間で癒されるからいい。やっぱり友人が世話して私は好きな時構うのが現実でも仮想でも最適解ね。すぐに仲良くなれるようペットショップ通い詰めて技を伝授してもらったかいがある。

狐っ子にも楽しませてもらったが残念ながらレベル高いうえに空中戦できる奴に遣う気はない。」


「なんか当然のように話してますが一応言っておくと彼女はペットじゃないです。」


「そんなこと知ってるよ。あれは誰がどう見たって立派な抱き枕でしょ。」


「人!耳と尻尾生えただけのひと!……大丈夫でしょうか。体に力が入ってないようでしたから下で魔物とか襲われたら…」


「……まぁ強いし戦闘狂だから大丈夫でしょ…たぶん。」


「たぶんって。それにしても聖女見習いですか。」


「そんなこと言ってたね。聖王国は聖女が有名なの?」


「聖王国の中心部には地下宮殿という10階層からなる構造物があります。そこは聖王国の女の子は皆聖女見習いとして集められ聖女になる教育がなされるとか。関係者以外の立ち入りを禁止している上、元聖女見習いも中の事を口外してはならないので詳しいことは不明ですね。王女の時に知ってたのはこれくらいです。」


「ふーん。聖女って偉いの?」


「国の中心人物って言ってました。特別なスキルをいくつも持ち未来さえ見通すとか。スキルの管理者となった今ではいくらか候補を知ってます。【未来視】か【予言】、【先読み】、【未来予知】とかかな…聖女見習いも特別な力を持つらしいのであそこは女尊男卑らしいですよ。異世界人も適用かは知りませんが。差別と言えば亜人に関してもそう。入国も制限してるとか…」


「へえーすごいね。そんな国じゃあ色々文句言うプレイヤー出てきそう。」


そういうのは騒ぐのはどこでもいるからな。創作物でさえ言いがかりまがいのクレームが来るらしい。架空なんだから現実にないものとして許容できないものかな。でも仮想世界は不味い気もする。今の時代、仮想は現実の一部って認識が強固だから…


「どうなんでしょうね。ただ気になったのが聖女見習いはそのほとんどの時間を塔の中で過ごすのに何でこんな所にいたのかですね。国からも出られないはずです。それに加えて妖狐人属……」


「なんか事情があるのかもね。」


「いいんですか?」


「聖女見習いなの隠してたから私たちがどうこう詮索するのはまずいでしょ。大体頼まれてもいないのに私が動くことはない。」


「頼まれたら動くんですか?」


「この世界は頼まれたらクエストになって誰からともなく報酬が出るところがいいわよね。私の利が確約されてるもの。だから頼まれたらやる。」


「ヒノがこの世界楽しんでるようで良かったです。じゃあ帰りましょうか。」


私たちはセーフティエリアに降り立った。





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