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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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種族イベント



私たちの目の前にあったのはボロボロの馬小屋だった。例にもごとくグネグネと小道を曲がること15分。ようやくたどり着いたここはどう見ても隣の家の使われなくなった倉庫であり、間違っても人が住んでいるとは思えなかった。


「り、リアさん。本当にここ?隣じゃなくて本当にこのほったて小屋なの?」


「です。中を入れば理由は分かりますので付いて来てください。」


リアさんの意味深な言葉に続いて背中を追って中に入る。そこには外見に見合わない鉄の扉だけが地面に置いてあり、地下への道を示していた。おーすごい隠れ家っぽい。


今から会いに行く人はハンスという名前で出不精の引きこもりらしい。なんでも研究が大好き過ぎて国の役職についていたが仕事は部下に任せて自分は研究に没頭していたそうだ。リアも数回しか会ったことはないみたいだがそれだけで次会いたくなる性格とは…


「リアは王女であること言わなくていいの?」


「ええ。王女からここを勧められたと言えば何とかなるでしょう。流石にあの人に私の正体が見破られるとは思いませんので。」


「そ。じゃあチャチャッと聞いてきましょうか。」


そう言って鉄の扉を開ける。扉の向こうは階段になっており真っ暗で最奥は見えなかった。すぐにリアが魔石の光魔法で明かりを灯す。二人で顔を見合わせ頷いてから階段を降りた。


地下の扉を開けるとそこはネオンの光で足元を照らすだけの薄暗い空間だった。結構な広さがあるのは分かるが紙やら試験管やらとにかくモノが溢れている。ただ言えるのはコンクリート製の壁という始まりの国の雰囲気にあるまじき近代化の臭いのある部屋だった。


「ん?来客とは珍しいね。僕のラボに何の用かな?」


紙束の向こうから顔を出したのは金髪の美青年だった。リアが言うにはエルフだっけ。エルフは年に見合わない見た目をしているとのこと。実際ハンスさんも100歳超えているだとか。見えねー。それより顔の造形が美しいのは認める。ただ目の下のクマが全てを台無しにしていた。


「はじめまして。私がマリア。こっちがミヒノと言います。実は…」


リアは私たちの事情を話し始めた。あまり興味なさげに聞いていたハンスさんだったが、私がホムンクルスだと言った時に残念エルフの覇気のない目の色が変わった。これはあれだ。リアがスキル、リュースさんが武器について語っている時と同じでそれ以外が目に入らないあの目。捕食者の視線で私を睨んでくるのが何とも居心地悪い。背中のかゆくなる状況でリアが一通り説明し終えた。


「でハンスさんはホムンクルスについて何かご存知でしょうか?」


「…」


リアの質問に黙ったまま背を向いてしまったハンス。二人で顔を見合わせ少し様子をうかがっていると。


「フフ。フフフ。ハハハハっっっ!!きたぞ!来たんだ僕の時代が!!」


来てねえよそんなもん。エルフの高笑いにドン引きしている私たちにかまわずハンスの口は動き続ける。


「ホムンクルス!まさに錬金の秘奥にして深淵!その生物は人によって作られたはずにも関わらずその製法は一切不明!わずかに残された文献には体の一部を取り換える方法しか載っていなかった!だがそれもホムンクルスありきの研究。僕には生涯取り組めない研究だと思っていたが。クククッッ。」


あー完全にヤバい人だ。何がヤバいって、私をモルモット扱いしているところがもうヤバい。


「あのー。結局体の改造は結局できるんです?」


「ん?ああミヒノ君と言ったかね。できる!といいたいが今すぐには無理だな。確かこの辺りにー。」


そう言って机の上に乗った大量の紙の山を崩して何やら探し始めた。しばらくこれでもないあれでもないと部屋を散らかしていたが、ようやくお目当てのものを見つけたようだ。


「あったあった。えーっと。この本によるとホムンクルスの改造に必要な道具として本人の魔力で染めた金属が必要なようだ。そのために自分で採りに行かなければならないと。ふむふむ。その金属からメスやらハサミやら糸なんかも作るのか。む、面倒だな。さっさと体をいじらせてくれんとは。」


この男。自分が何言ってんのか分かってるのか?


「それは有益な情報をありがとう。体の改造は別の人に頼むとするとするよ。それじゃあまた。」


「待ってくれ!ここまで来て僕に手術を頼まないのか!?」


「別にあなたである必要はないですし、あなたの職業も分かっているので別の人見つけるのにそれほど苦労しないかと?わざわざ危険人物に頼むのは…ねぇ。」


「ぐぬぬ。」


「本当はこの目を私に移植して欲しかったんですがねえ…ちら。」


私はストレージから暴食のマーナガルムからドロップした目を取り出してみる。


「(ガタッッ)ファッ!!」


「でも自分の体の事だからやっぱり信用って大事だと思うんですよねぇ。実験とか言って失敗されても困るし。(スッ)(手のアイテムを収納する音)」


「す、すまんかった。お詫びと言ってはなんだが対価は要らん。ちゃんと体の改造にだけ手を貸すし体を調べさせてくれとも言わない。だからどうか手術だけは僕にやらせてくれ!頼む!」


目の前で土下座する美形エルフ。一応体をいじる発言がマズかったことは自覚してるんだな。んー本当は他に当てなんてないからハンスさんに頼むしかないんだよね。危ない人なのは確かだが、釘も刺したし大丈夫だろう。


了承する旨を伝えて道具のレシピ本を貸してもらう。お祭り騒ぎのエルフが「こうしてはおれん準備だ準備」とやたら張り切っているが気にするのはやめた。

さて金属はリュースさんに頼んでみるか。道具作りは勿論、リュースさんならどこに金属があるかも知ってそうだし。


「じゃあ諸々揃えたらまた来ます。お邪魔しました。」


「おう。別にそんなに急がんでも…実はさっきから君の左手が気になっていてね。もうちょっと話していかないか?」


「長居無用なんで、さよなら。」


私たちは逃げるようにしてハンスさん宅を出て行った。





オンボロ小屋からそのままリュースさんの武器屋まで来た。来店はこれで三度目だが道を覚えられる気がしない。普通道というのは大体自分がどのあたりにいるかを把握しながら進むものだ。最初に目的地の方角はこっちだとかそろそろ道なり半ばで進行方向も変わっていないだとかあの店の裏が目的地だとか。それだけで初めて来る場所も大体道に迷うことはない。でもそれがいま通じない。私は世界中に足を運んでいるので地理も空間把握も得意だが、武器屋の場所は私の感覚だと大通りに戻ってきている。おかしい。リアに言っても自分もそうだったと微笑まれた。なんか悔しいので答えを聞くのはやめた。


「…いらっしゃい。」


相変わらずの無愛想中年ドワーフにホッとする。さっきのエルフにはエルフというイメージを破壊されたからね。リュースさんは最高にドワーフしてていい。


「こんにちは。さっそくで悪いんですがこの金属どこで採掘できるか知りませんか?」


私は二言目には要件を話し出す。さっきの本の鉱石のページをリュースさんの前で開いた。


「…マナテイク鉱石。魔力の枯渇した場所にしか存在せず一度吸った魔力は鉱石となじんで別の物質へと変化する。そして二度と魔力を吸収することはない。」


「なるほどねーそれ採ってくるんでこっちの道具作ってもらえませんか?」


「…わしは武器以外あんまし作りたくないんだが。腕輪の次は医療器具か…」


「ごめんて。次はちゃんと武器のための鉱物なりなんなり持ってくるからさ。お願いこの通り。」


「この子のために必要なんです私からもお願いします。」


「…ひめ、マリア様に頼まれたら仕方ない。マナテイク鉱石が採れるのは死の山脈がここから一番近い。ただここからでも相当距離があるし道中はずっと森だ。高レベルモンスターもはびこってる。やっとのことで死の山脈にたどり着いても山頂には『死』の由縁たらしめるワイバーンがたくさん巣作ってる。そんな辺鄙な場所だが二人だけで大丈夫か?」


具体的には途中にログアウトできる場所もあるらしいがこの広大なマップで偶然そこに行きつくのは難しいらしい。これは他の国への行き方を調べていた時に分かったんだが、需要ある道はちゃんとルートが確立していて途中に村もあるのだとか。そして今回みたいに獣道を進むと一応休める場所もあるが圧倒的に見つけにくくなるとのこと。救いなのは私たちには[金の鍵:始まりの国 BF]がある事だろう。ナショナルクエストの報酬の一つ。これはソフィアから預かっていた鍵の上位互換に当たるものでログアウトできる場所からならホームであるルティアス城に帰れる。つまり死の山脈まで行ければ帰りは少し楽できるはずだ。


「ちなみにそのワイバーンとやらは何レベルぐらいなの?」


「…どんなに弱くてもLv100は超える。群れは作らんが数匹単位で襲ってくることはあるから見つかったらまず逃げられんだろうな。倒すなんてもってのほか。二人の攻撃じゃワイバーンの鱗を全く通さないからな。」


「回避一択か…まー何とかなるでしょ。という訳でツルハシもらえます?」


「…ここは武器屋だ。黒の嬢ちゃんはここを便利屋となにか勘違いしてないか?」


「リュースさんお願い。」


私は必殺スキル王女様おねだりを発動させリュースさんから全ての約束を取り付けた。チョロい。





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