世界変成《cRUCIBLE_Program》
『【The Gluttony Managarmr】を撃破しました』
『種族レベルが上がりました』
『スキルスロットが一つ空きました』
『称号《七大罪:暴食》を獲得しました』
『スキル【暴食】がスキル候補に追加されました』
『アイテム[銀朱狼眼]を手に入れました』
『特定アイテムの獲得による種族クエストが進行しました』
降り続けていたポリゴンが消えるとヒノの視界の隅でそんなログが流れた。
何か色々あるけど肝心のナショナルクエストはまだ続いてるなぁ。
「ナショナルクエストクリアおめでとうございます。ミヒノ様、マリア様。」
声のする方を見ると緑色の髪を腰まで伸ばした美女が立っていた。たれ目でどこかおっとりした感じがする。ただ和風なものではあるが体に張り付いた緑の刺繍の白いドレスには見覚えがあった。
「もしかしなくても女神様?」
「ええ、そうよ。ワタクシはアイテムの管理者ローザスフィア。ローザって呼んでね。」
「流石最高難易度のクエスト。女神様直々のご登場とは」
「そうね。でも私は代理らしいのよねぇ。」
そう言うとマリアの方へ目線を向ける。
「ああ、まぁバレてるか。」
「フフ。ワタクシは何も知らないわ。ただ始まりの国での様子とここでの戦闘を見ていただけ。アイテムの管理者であるワタクシに知らないスキルはあっても知らないアクセサリーは存在しないの。でもワタクシはそれを知らない。」
そう言って自分の首元を指す。なるほどね。確かあの首輪はプレイヤーの機能補完ができて運営が作ったものだともリアが言ってたな。運営用アイテムの存在を知らないのか。もしかしたら他の女神様は運営との繋がりが薄いのかもしれない。
「ごめんなさい。ローザ様。さっそく私が管理者を抜けた穴埋めをしてもらっているようで。」
「それは構わないわ。今のスキルの管理者はリーアマティナのままになってるし。実際その仕事を請け負ってるのは〈 c 〉だから。」
へー空席じゃなくてリーアマティナのままになってるのか。新しい女神様とか生まれないのかな…まあいいか、それより。
「〈 c 〉?」
「この世界の管理者ですね。」
「そう。今回は直接会わないといけないからワタクシにお鉢が回っただけ。そんなことは稀のはずだから気にしなくていい。ということでお待ちかねの報酬よ。」
そういうとローザ様は指を一回鳴らした。
するとヒノの視界いっぱい真っ赤な炎が渦巻く。
『《ナショナルクエスト【始まりの国】:始まりの国は誰のもの》が完全達成されました』
とAR表示された。引き続き目の前に文字が浮かび上がる。
『称号《覇者:始まりの国》を獲得しました』
『ユニークスキル【】を獲得しました』
『アイテム[金の鍵:始まりの国 BF]を手に入れました』
『プレイヤーホーム[ルティアス城]を手に入れました』
「…」
色々突っ込みたいんですが…
「取り敢えずユニークスキルの説明ね。まぁマリア様の方が詳しいんだけど…」
そういってリアの方を向く。何だか説明をリアにさせたそうだ。というか自分で説明するのが面倒くさそう。私が胡散臭げな目をローザに向けると微笑まれた。
「えーっと。では私からしますね。ユニークスキルとは文字通りこの世界に二つとないスキルの事です。今まで高位NPCか敵Mobしか持っていなかったんですけど…」
「ああ。この後全プレイヤーに告知されるけど、種族レベルが100を超えた人は神殿に行くと手に入るわ。自分の持つスキルを二つ選択するとその二つが消える代わりに|世界に唯一自分だけのスキル《ユニークスキル》が得られる。」
「私は今回の報酬にあるのね…」
そう言いながらヒノは自分のステータスを見る。先ほどの経験値で種族レベルが32まで上がっていた。スキル欄には空欄が一つあった。種族レベルが30を超えたからスキルスロットが空いた。そしてセットスキル欄の上にユニークスキル【】とある。なるほどスキルとは別に貰えるのか。
さてどうしよう。ユニークスキルはすぐに決める必要はない。二つのスキルを組み合わせるらしいが、何せ空欄が一つある。何にするかはちゃんと考えるべきだ。リアも詳しいって話だし後で聞いて見ようか。
そこで次の質問に移ろうとするが…ふとその空欄を見つめる。
あーどうしよ。変な事思いついちゃった。
こういうの閃いちゃうと即やりたくなっちゃう性分なんだよなぁ。
迷うだけ時間の無駄!そい!
私はユニークスキルの選択欄に自分のスキルを二つタップする。
一つは【血流操作】。もう一つは【】。
おおやっぱり空欄も選択できるのか。さてどうなるか。
『ユニークスキル【天血万有】を獲得しました』
おお!なんかかっこいい感じに。天地万有が天血万有ね。地が血になると。英語ルビ的にも地上の全ては血から生まれ血に還るってとこか。詳しくはまた後にしよう。
「ユニークスキルですか。私は【スキルスロット】以外は大体どんなものになるか知ってるので【スキルスロット】と何かにしたいですね。」
「【スキルスロット】はそれ単体でユニークな気が…そういやリアも同じ報酬なの?ユニークスキル貰ってるポイけど。」
「どうでしょう?称号は貰いましたね。」
「ルティアス城は?」
「鍵と一緒に。えっヒノも貰ったんですか?」
その疑問に答えたのはローザ様だった。
「あの城は二人のものよ。だからここに来られる鍵もその報酬のうち。ちなみに報酬に関してはナショナルクエストの方は一緒、暴食の方は少し違うはずね。」
そうなのか。後で確認しよう。
「さてこれだけならワタクシがここに来る必要もない。ナショナルクエスト最大の報酬がまだ残ってるわ。それはその国を担当する女神が一つだけ願いを聞くというものよ!まぁ聞くだけなので叶えるかはワタクシ次第ね。」
そう言ってどこからか取り出した扇で口元を押さえるローザ様。
「さて貴女は何がお望み?」
アイテムの管理者が一つ願いを叶えるか。つまり何でも好きな効果を持ったアイテムがもらえるってこと?それは大盤振る舞いだなぁ~。
でも私には関係ない。私の望みなんてたった一つだ。
「リアだ。私はこの子を貰う。」
「「…」」
見回すと呆気にとられた二人の顔があった。そして片方の顔が真っ赤に染まっていく。
「ヒノはやっぱり私の体が目当てだったんですね。それなら私をお供にする理由も頷けます。」
「それは言う相手間違えてるぞ?ちなみにワタクシはワタクシを甘やかしてくれる人が好みだ。」
「いや。そうじゃなくて。」
「でもヒノがそれでいいなら私は構いま…」
「だから違うって!」
ヒノはリアの声を遮るように叫ぶ。
「リアを構成するコードおよびメモリを全て私が貰う。」
リアは言ってる意味が分かってるのか驚いた顔をする。私はリアをこの世界だけの関係にするつもりはない。そしてリアをただのAIにさせておく気もない。
「ヒノ。それはゲームの中の人ではどうしようもない問題です。それに私は企業の所有物です。それを個人に渡す訳がありません。加えて現実の設備なんかも揃える必要もあります。学生のヒノが用意できる額のものではありません。」
「そこら辺は後で考える。まず本当にリアが手に入るかどうかだ。」
「盛り上がってるとこ悪いけどワタクシには無理ね。詳しくは分からないけどそれは創造主の領分よ。ワタクシの権限を越えてるわ。」
でしょうね。でも。
「ならその創造主とやらに私の望みを叶える方法を聞いてみてくれる?それがローザ様が叶えられる私の望み。それとも女神様なら何か知らない?」
「……〈 c 〉から情報が開示されたわ。」
言葉の割に信じられない物を見たかのような表情をするローザ様。一息置いてからその内容を話し出す。
「『この世界の完結。それが運営を交渉の場に引きずり出す条件。指標は全ての国の繁栄または消滅。』だそうよ。」
「国の繁栄か消滅。多分繁栄はナショナルクエストかな?消滅は…」
「それはこれからのアナウンスで分かるわ。」
そう言うなり開いていた扇を閉じた。乾いた音と共に目の前に文字が浮かび上がる。
《これよりワールドアナウンスを開始いたします》
《ナショナルクエスト【始まりの国】を完全達成された方が現れました》
《現時刻をもってcRUCIBLE_Programを実行します》
《全NPCの思考制限が準解除されました》
《全NPCの行動制限が準解除されました》
《各国の結界の仕様が変更されました》
《プレイヤーに所属国が設定できるようになりました》
《プレイヤーにユニークスキルの情報が開示されます》
ローザ様は私が全てのログを見るのを待っていたかのように言う。
「cRUCIBLE_Program――これからこの世界は本当の異世界になる。」




