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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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ナショナルクエスト




始まりの国はメインストリートが北南と東西に十字に通っているが、教会の位置は南端に位置している。

教会はそれこそ周りの建物より大きいのだが、色合いもあって周囲に埋没していた。

ただそんな中でも協会がある場所が遠目にも分かったのは教会の前にすごい数のプレイヤーがいたからだ。


「確か死に戻りは教会の前だっけ。人が多いわけだ。」


「そうですね。私が一度来た時もこんな感じでした。それでも教会中は空いていますよ。」


二人で話しながら、教会の開けたホールに入る。


「ホントだ。内部は逆に人がそこまで多くないね。」


生き返るのはあくまで教会の前だから教会に用事がある人は少ないのだろうか?それでもプレイヤーの姿がちらほら見える。そのほとんどは白を基調とした服を着たシスターと何か話しているようだ。


そこでこちらをじっと見ていた一人のシスターに気付く。そこにはどこか暖かみのある表情をしていた。これはリアを見ている?


私もそちらに視線を向けていると向こうから声を掛けられた。


「こんにちは。2日ぶりですね。マリアさん。」


「ああ、ソフィアさん。こんにちは。」


一度来た時に話したのかな?背はリアと同じ位ですらっとした体形。20歳前後だろうか?顔はすごい整っており、白い修道服が似合っている。髪が染めた金色ではなく外国人の持つプラチナブロンドのせいもあるかもしれない。大人っぽい美人さんだがリアに向ける笑顔が向日葵のようで少し幼く見えた。


「はじめまして。冒険者のミヒノです。」


「はい、はじめまして。始まりの国で修道女をさせてもらっているソフィアと申します。本日はどういったご用向きで?」


「少しこの世界の神様について話を聞きたいんです。」


「私が話せることまでであればお話しします。残念ながら少ないですが。」


「お願いします。」


「まず国ごとに教会の奉っている神様は異なります。この国は冒険者であればご存知のリーアマティナ様です。今はこの国で生まれる異世界人(プレイヤー)の手引きをしておられますね。」


ソフィアから向けられた言葉に思わず苦笑いしてしまう。私がリアを連れだしたからもうお役目果たしてませんね。何かこの国の教会と真っ向から敵対してるなあ、私。


「他の神様について聞いてもいいですか?どこの国がどこを奉ってるか。」


そう聞くと、ソフィアさんは少し困った顔をして答える。


「すみません答えられません。教会のものは自分の神様はおろか、他の教会の神様が何をつかさどってるかも話せません。」


「それはリーアマティナ様がスキルをつかさどってるみたいに神様ごとに違うものをつかさどってるんですか?」


「…何で、リーアマティナ様の柱を知ってるんですか」


「柱?スキルの事?」


私の疑問に答えたのは困惑顔のソフィアではなく今までずっと黙っていたリアだった。


「ヒノ。管理者は7柱いてそれぞれスキル、ステータス、ゴールド、レベル、フィールド、アイテム、クエストをつかさどってます。

スキルはリーアマティナ、ステータスは■■■■■■■、ゴールドは■■■■■■■、レベルは■■■■■■■、フィールドは■■■■■■■、アイテムは■■■■■■■、クエストは■■■■■■■ですね。」


リアの言葉が、女神の名の部分だけノイズが走ったように全く聞き取れなかった。


「ミヒノさんは聞き取れていないようですね。管理者本人から名と管理する柱を聞かないと知ることができないんです。知らない人にはその名を出されても何を言ってるかわからない。」


確認のためにリアを見ると、首をかしげてる。リアは知らなかったのか?というか当事者が知らないってどうなの?

神様の名前が聞こえないのもVRハードのアーバティオンによる思考ジャミングの一種かな?

そんな考えが浮かんでいる間にもソフィアが話を進める。


「で、なぜマリアさんは管理者の名前を全部知ってるのかしら。あなた何者?」


リアがちらりとこちらを見る。


「リアのことより、いいんですか?ここで他の女神様の話は駄目だったはずでは?」


ソフィアが一度恨みがましい視線をこちらによこしてから周囲に目線をめぐらす。


「ここではゆっくり話せませんね。こちらへどうぞ。」


ソフィアはそのまま教会の奥に進んでいく。

リアの方を向こうとすると、目の前に真っ赤に燃えるエフェクトが現れた。驚く間もなく派手なエフェクトが消えるとともにデカデカとARが表示される。



『《ナショナルクエスト【始まりの国】:始まりの国は誰のもの》が発現しました。現時刻をもって参加者マリア、ミヒノはクエストを実行します』





ソフィアに連れてこられて個室に入る。部屋は質素な作りでポツンとソファーが2つ机を挟んでいた。


「どうぞ。おかけください。」


ソフィアとは逆のソファーに腰を落とす。


「ここでなら話しても大丈夫です。それで説明してもらえるんですか?」


「えっとなにが大丈夫なんですか?さっき神様の事は話せないと言われたばかりなんですが。」


「教会の教えは正確には女神を知らぬものにその知を与えるな、というものです。簡単に言えば神様の知識をむやみやたらに広げるな、ということ。つまり知ってる者しかいなければ話しても大丈夫という意味です。」


この世界は信仰を広げるのを推奨してないのか?それより…


「ソフィアさんの方は大丈夫ですか。」


暗にあなたも神様の知識はそろっているのかと聞いたのだが。


「大丈夫です。これでも教会内での私の地位は高いんですよ。」


「いや、あなたこそ何者ですか。」


私の問いをソフィアは笑顔で流す。うわー黒いわー。


「私はこの世界に来て間もないです。分からないことも多いですのでそこを考慮してくれると助かります。」


まだソフィアの事が分からないし、リアを私が連れ出したなんて言ったら教会がどう動くかわからないから、ぜひとも隠したいんだけど。


ただナショナルクエスト、これがネックになる。このゲーム始まって以来誰もクリアしたことのないクエスト。できれば私たちがクリアしてみたいがここでクエスト発現条件が厄介になってくる。状況からして恐らく私たちに女神の知識があることがクエスト発現条件だ。であればこれからクエストで女神様の知識が必要になる確率は高い。だがリアは元女神本人。それがバレない様にクエストを進めるためにも情報露出は慎重にならざるをえない。


ということで小出しに情報を出していく。


「リアと私は女神様を探してるんです。私はともかくリアは女神様のことに多少詳しいです。」


「そうですか。女神様の知識が多いという事は、この国の起源についてはご存知ですか?」


リアに目配せしようとしたがリアの視線はまっすぐソフィアに向いたままだった。私は首を振るとソフィアが話を続ける。


「そうですか。この国は西のハルム聖王国、北のセーレ帝国、東の迷宮の国ローゼに囲まれてますが、どこの国ともほとんど関わっていません。

それはこの国が異世界人を排出し続けているから。

三国はここを手に入れ異世界人が自国に来るよう誘導したいが、他国に抑えられ自国に来る異世界人が減ってしまうのを恐れてもいる。

だから三国は始まりの国が他の国に加担しない様に監視し合う関係にあるのです。」


へえ、この世界には国同士の関係なんてあったんだ。もしかしたらプレイヤーの行動で関係が変わったりするのかな?


「なぜこんな話をしたかというと、この国には現在トップがいないからです。」


「は?」


それじゃ、国が回ら…回るのか。


「この国には国王がいるわけでも、議会があるわけでもありません。土地は商業ギルドが管理し、治安は冒険者ギルドが守り、生活は教会が見守っています。それぞれが独自にこの国を回しているのです。」


それで回っているのはすごいなあ。異世界人が始まりの国でしか生まれないのだからここが栄えるのは必然になる。その結果こういう状態になっているのか?


「ただ昔から治める者がいなかった訳ではないんです。その人物は異世界人が始まりの丘から現れる一年前、消えたんです。」


「は?」


いやいや消えたって。


「消えたことになってるんです。ただ異世界人以外なら皆知ってることです。…その人は私の友人でした。」


ソフィアは寂しそうにつぶやく。


「女神様にこの国の起源に関する事を異世界人に伝える事を禁じられているのです。例えば友人の名前は■■■■。聞こえないですよね。こういった具合に異世界人に伝わらないようになっている。それに今こうして話すのも本当はまずいんです。あまり過度に触れ回ると天罰が下るとされていますから。」


「…それでその消えた友人はどこへ?」


「わかりません。女神様は役目を果たすためとだけおっしゃいました。それでお二人にお願いしたいことがあります。私の友人を探してほしいんです。」


「探してほしい?」


「具体的に言えば元気でいることを確認してきて欲しいのです。」


「なぜ私たちなんですか?」


「私たち住人は居場所を知ることを禁止されています。そして居場所を知ってるのは女神様だけです。私はお二人のような女神様に詳しい異世界人が来るのをずっと待っていました。」


そう言いながら、首にかけていた金色の鍵を胸元から取り出す。


「この鍵は友人がいなくなる前に、私が貰ったものです。友人はこれを使えばいつでも会えると言っていました。ですがあれから友人とは音沙汰がありません。私は友人に何かあったのではと考えています。」


鍵を机に置きつつ立ち上がり、ソフィアは頭を下げた。


「お願いします。私の代わりに連絡の取れなくなった友人を探してくれませんか。私にはそれが許されておりませんが、元気でいるかどうか知ることまでは禁止されておりません。私は友人の安否さえわかれば十分なのです。」





私たちは『鍵は何かの役に立つかもしれないので渡しておきます。友人の名前を知るには図書館に行かれるといいですよ』というアドバイスをもらい、教会を出た。


私は無言でそのまま南門を抜ける。この世界に来てすぐに通った始まりの丘の道を登りながら、隣にいるリアに話しかける。


「リア、今このゲームのチュートリアルどうなってるの?」


「ウィンドウAIが対応してます。AR表示で私のような説明なしに淡々と決めていく形ですね。βテストで使われていたシステムです。」


「ふーん。じゃあリアは私がいない時ソフィアとは何話してたの?」


「えーっと。お仕事お疲れ様です、とか最近困ったことはありませんか?とかですね。特別変わったことは聞いてませんよ。」


「そう、なら最後に。」


私は立ち止まり、リアが数歩前で振り返るのを待った。


「お友達のソフィアさんがあなたの心配をなさってましたよ、元王女様。」




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