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VRMMO内最高位NPCは血を流さない  作者: 東ノ瀬 秋
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それは長い長いチュートリアル1




私、日御碕(ひのみさき)(あかり)がこのゲームを最初に知ったのは一年前友人二人の話からだ。




「灯はまだMMORPG、手を出したことないよね?一緒にやらない?」


彼女の言うゲームは世間で騒がせたものだったが、当時の私の目に映ることはなかった。


「残念ながら、今のわたくしはお嬢様修行中ですわ」


「…また変なものにハマってるし」


彼女の呆れ顔なんていつもの事だから気にしない。


「ククッ、灯が、あの内面男子の灯が『わたくし』に『ですわ』なんて使ってやがる。ハハハッ。こいつは傑作だ」


男の笑い声が癇に障る。確かに今の私はロールプレイというやつをやっており笑われる理由は分かっている。だが私という人間は無料で配られているポケットティッシュ(喧嘩)は必ず受け取るのだ。


「ふふ、それ以上言うと地獄へごきげんようさせますわ」


「こわ!」


「いや意味不明だから…まあいいや、私たち最近買ったVRMMOやってるんだけど、そのお嬢様ごっこ終わったらやらない?」


「お嬢様ごっこじゃない!ものほんのお嬢様!」


何てこと言い出すんだ!これは否定しなければならない!じゃないと折角この二人と違う高校に入学した意味がない。


「いや、お嬢様はお嬢様学校に入ったらなれるものじゃないだろ。つまり今の灯はお嬢様見習いであって、まだごっこ遊びの範疇を抜けていないということだ」


うーん…なんか理屈っぽく反撃してきたな。


「…なんか納得がいかないけど、ゲームの件はやりたい事候補に入れとく。じゃなくて、よろしくってよ。また今度お遊びあそばせ」


「…灯…とりあえず『あそばせ』付けとけばいいと思ってるでしょ」


「ハハハッ、遊びまくってるな。」


私の言動を気にすることなく、またいつものかとぞんざいに扱う二人。

まあゲームに誘うのは私だけが違う学校に入ったためにこれから会うことが少なくなるのを考えての事だろう。自分で言うのもなんだが勝手に別の高校に入った友達甲斐のない私にこの二人の幼馴染は良く付き合ってくれる。


私の方はそんな心配全くしてない。家も近いし通学路も被ってるから今日のように一緒に学校に登校して帰りに会うこともあるだろう。色々問題ある私と三年一緒にいたのだ。二人とは疎遠になる気がしなかった。





「はあ…面倒くさい」


「どした灯。ため息なんて珍しい。それにお嬢様言葉はどこ行ったんだ?」


「本場の圧に負けて普通に戻したらしいよ。まあそっちの方が受けが良かったらしいけど」


「ん?どういうことだ?」


「外部の人が珍しくて同級生にモテるんだと。で例にもよって色々やらかして助けた女の子にその場で告られたって。この子本性隠して格好ばかり付けるから皆騙されてるのよ」


「騙してない!」


怒ったはいいが性格の方は自覚してるから強く言い返せない。カッコいい主人公になれるチャンスが目の前にあったらその役をまっとうするのが当然だ。正義感なんて欠片もない。ただ私の物語が面白くなる道を進んでいるだけ。


「そういや、(あおい)はゲームで告られてたな」


「その話はやめてよ」


お?これはめったにない真面目系な彼女をいじるチャンス?


「ゲームって前誘ってきたやつ?物凄い完成度とか言ってた…」


「そそ。やってると分かるけど、完成度が高すぎて現実にいるのと変わらないからな。痛みがないのが違和感に感じるほどだし」


「そうね。魔法を使えるのもなんか実感わかない時ある。あれ何で手から炎なんて出せるの?って感じで」


「現実とごっちゃになるほどなのか…で葵は告白どうしたの?真っ先に年収聞いた?」


「よし灯は後でシメるから。断るに決まってるでしょ。なによ敵を蹂躙する姿に惚れましたって。もっと他に言い方あるでしょ」


疲れたような彼女とは裏腹に私はいい(わるい)顔をして言う。


「まあ、葵はかっこいいというより巨乳でエロいから。なあ(かず)


「だよなあ。やっぱりEカップは伊達じゃ……謀ったな灯いい」


「どうせシメられるなら仲間増やさないと」


一人分の説教も二人で分ければ短くなるってものさ。ヤダ私天才すぎ!


「…ふふっ、とりあえず二人は正座ね」


「いや、ここ外「…正座」」


「「はい」」



こうしてゲーム内の冒険譚?を休日に聞くこと早1年、高校2年生になった私の目の前には件のゲームがあった。一年に及ぶ勧誘にとうとう私も陥落した。




Crucible(クルーシブル) Nations(ネーション) Online(オンライン)通称CNO。

VRMMORPG史上最大かつ最高傑作となったゲームの名前である。




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