朝鮮の幻影園 ⑥
その研究室は、佐賀県下の、
とある企業社屋・工場の…地下にある。
あくまで一般企業の社屋・工場として建設されたのだけど、
この地下プラントについては、経営陣にも
新商品研究・開発施設 兼 流通用倉庫としか知らされておらず、
まして、ここで働く社員には存在すら知らされてはいない。
この極秘施設に、
実は最新の「並列衛星設備(NRS)」がある。
高度なハイコンと連動した生産設備を備えた那由多は、
最初から有機的な研究・生産機能を持っていたが、
我が身を国から買い上げて自立してからも、
着々と規模と内容を拡充している。
ここはその、最も進んだ設備のひとつだ。
今、那由多の生産領域は半導体だけでなく、
機械加工や航空宇宙分野、
バイオ、ナノテクノロジーにまで及んでいて、
それを支える試作・開発力は、世界でも有数の水準。
現実と仮想現実を連続的に用いて、
試行錯誤出来る環境に限るなら
世界最高と言っても過言じゃない。
その最先端工場は、思いつきをすぐ形にできる…
SHG関係者の切り札と言ってもいい。
その施設の片隅、小さな一室…
(と言っても二十畳ほどの広さはある部屋)に、
私は彼女たち…
遊梨子と美都を通していた。
私たちは体操服の上から、
各関節毎にピンポン球のような機器をつけていて、
頭には汎用説明器をつけ、手には操作把を握ってた。
美「あ、お兄ちゃんたち来た!」
遊「どこどこ?」
遙「〝北〟の将校さんと一緒みたいね」
私たち「兄恋ロリ慕い隊」は、
お兄さまの行動に追随して、
館内随所にある、給仕ロボットへの
「自動憑依」をくり返していた。
「自動憑依」というのは、
モーションキャプチャでロボットを遠隔操作する、
倍力服の一種で、
各種災害救助や原子炉の廃炉作業など、
人間が直接行うと危険な仕事への応用が期待されている技術だ。
この現状把握はもともと十星園の主業務である、
「北朝鮮周辺のあらゆる状況に対する取材・調査・分析・検証」
に基づいていたのだが、
彼女たちは実にさまざまな事に気がついた。
情報収集の思わぬ捗りように舌を巻いた私に、
驚くに足りないと、ナミは胸を張った。
ナミ「ナギりんの強運は大したものなのよん。
自然に集まった取り巻きがみんな、
信じられないほど有能な女性ばかりなんだから。
普通に内閣を組んでも務まったかもしれないほど。
ま、年齢や経歴に不足があるから無理だけど」
そんな事を考えてる間にも、兄追跡は続く。
遊「貴賓室に上がるんじゃない?」
美「ロボ子ちゃん入ったらおかしいかな?
ハルッチ、なんか手は?」
遥「そうね。
じゃあ料理とかお酒とか運びましょうか?」
遊「一诺は料理自慢らしいから、
食材のがよくない?未調理の」
遥「わかったわ」
私は急ぎキーボードを叩いて、倉庫内の食材状況を把握、
食材やお酒を手配しようとした。
そこで見慣れないものが目に入った。
けっこう大きい。重そう。
遥「あら、この荷物なに?
お兄さまの私物かな」
美「ああ、ウチでたまに転がってるヤツよ、それ。
たぶん使う気だから、運んじゃっていいよ?
…にしても、もう!
お兄ちゃんッたら、マイペース過ぎ!」
給仕ロボを3体も部屋に入れるのは大変かと思ったけど、
大荷物のおかげで怪しまれずに済んだ。
ちょうど渡りに船だったけど、
何なのかな?アレ。




