トッシュ、被災地へ走る①
「トッシュ!起きて!
起きてってば!
んもう!起きろ〜〜〜っっっ!!」
あたしの手荒いボディプレス、フェイスロックの連打を
モロ喰らった凪俊明は、激痛に悶絶、
呻きながらようやく起き上がった。
やっとこさ枕元のメガネをかけ、
あたしが睨みながら差し出すスマホで
気象速報を見る。
「台風5号、九州最接近で避難指示発令。
北部豪雨の爪痕残る被災地に不安広がる」
「た、大変だ…
タダでさえ、こないだのダメージから
立ち直ってねーのに」
眠気、吹っ飛んだっしょ?
避難指示まで出てるのは沖縄・鹿児島あたりだけど、
北上予想出てるから、北部九州来るのは
時間の問題よね?
「ナミ?対策は?」
「打てる限りは。
勧告時点から声かけてんのに、
ナギりん起きないから勝手にね〜」
「別にボクの許可は要らんやろ?」
先月やっとお役御免になったばかりのトッシュは、
しばらくその事は考えたくもないみたいだ。
「気分よ、気分。
元総理さま」
「はいはい。
総統閣下」
たった2年足らずとはいえ、
いちおう総理経験者で無事勤め上げたんだから立派なモンなんよ?
あ、ナミはもちろんトッシュが嫌がる顔見たくて言ってる。
「それよりどうすんの?
駆けつけんの?また」
「一市民がウロウロしたって邪魔よな?
でも…居ても立ってもおれん」
「そう言うと思って、比較的危険度の低い
鳥栖あたりに宿取った」
ナミはなんでもお見通しだ。
「九州交通のハブだから、
初動対応が済んで安全宣言出たらスグ届く。
杞憂で済めば帰ればいい」
「高機動軽装甲車も整えてありますよ、閣下」
頼まれもしないのに今も身辺警護してる元SP、
名護南海果がドア横で言う。
「閣下はヤメて?
もうタダの一般人なんで」
「では、俊さま。
私達もお供しますから」
「好きにしなよ」
断っても、どうせ有無を言わさずついてくるもんね。
それにしてもなによ!俊さまって!
まぁ彼女、こんな緊急時にはスッゴく頼れる。
自衛隊にいた昔、
若くしてレンジャー部隊の教官を務めてたとか何とか。
いくら全国で警察が合理化されたって、
彼女ほどの人材放っとかれるはずない。
トッシュなんかには勿体無さ過ぎる!
「あたしも行くよっ!」
あたしも慌てて名乗り上げた。
完全忘れられてたもん。
「未成年連れてけるかっ!
危険だってあんだぞ!」
「高校生サポーターだなんだで、
ウチの親も慣れてるって!
電話したら好きにしろってさ」
「見放されてんじゃね?ソレ」
ゲシっ!
「グーで殴んなよ!
あ痛!」
ご希望にあわせ、2発目はハイキック喰らわした。
ただの近所の知り合いだったあたしは、
「サポーター第一号〜♪」とか言って、
同時選挙立候補から今まで
何かにつけて関わってきた。
ドサクサに紛れてやっとこ確保したトッシュの隣の席、
ゼッタイ手放さないんだからっ!
「わたしが大丈夫って、親御さんに請け合った」
「ナミ〜」
恨みがましくナミに抗議するトッシュにゃ悪いけど、
あたしはナミに感謝!
いつもありがとね、ナミ!
「指一本触れさせませんって?」
「隊長〜?
暴行されてんのはコッチだっての!」
「もう隊長じゃありませんよ。
南海果と呼んで?俊さま」
「ハイ、ごめんなさいよっ!」
隊長を押しのけ、ひと睨みしてから
トッシュの目の前に仁王立ちしたあたし、
由里遊梨子は勝ち誇ったように宣言する。
「のけ者になんかさせないんだからねっ!」




