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国家運営はもうAI丸投げで良んじゃね?  作者: 八和良寿[Yao Yoroz]
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朝鮮の幻影園 ④




ナミ「〝敵情視察〟だなんて、

 聞き捨てなりませんねッ!」



しまった。


背中に冷や汗が流れる。


敵が耳そばだててもおかしくない場所で、

(すべ)らせ過ぎでしょ、(パク)さん!



しかし、ナミ(チャーリー)は「冗談よ」と言いたげに

悪戯(いたずら)っぽく舌を出して、

ニッコリ笑って言った。



ナミ「五穀豊穣を願う秋祭りが下地(ベース)なんですから、

 〝人の不幸を喜ぶ要素〟は必要ないんです。


 もとより〝祭り〟にそんな発想はほとんどありません。

 たぶん日本に限らず、世界共通じゃないですかね?


 あなた方のお国はどうですか?」




我が国ではどうだろうか?


「太陽節」の軍事パレードや「アリラン祭」がそうだとは、

とても言えない気がする。


むろん口に出しては言えないが。



五穀豊穣、天下泰平。


昔の祭りの願い事は、

そう相場が決まってた。

今も多くの国でそうだと、ナミは言う。


実りと収穫への喜びと祝い。

豊かさへの祈りと神への感謝。

その他、無病息災、商売繁昌、学業成就、子孫繁栄…

どれも平和への願いに通じてる…と。



ナミ「みんな平和と、それに連なる豊かさが大好き。


 なのになぜ、

 世界には騒乱が絶えないのでしょうか?」



朴「難しい質問だな、ナミ。

 我々には答えられんよ。

 なぁ、采玉(チェオク)



李「わ、わたしに振らないでくださいッ!」



わたしと同じ考えなのだろう。

さすがの(パク)さんも返答に窮したようだった。


わたしたちには、口に出すどころか

考えることすら躊躇(ためら)われる疑問なのだから。



そうこうしてるうちに、

遠くから音場(おんじょう)が響いてきた。

祭り囃子のようだ。



ナミ「ダイジェスト版なので、ド迫力映像が急に来るけど、

 驚かないように。わかった?」



相変わらず高飛車だな、ナミ(デルタ)



李「我々軍人が、そう簡単と動じるとでも?

 侮るにもほどが…


 あ、おわぁ!」




暗闇の中から、巨大で、真っ赤な獅子が

いきなり目の前に現れた。


(うるし)塗りの光沢あるボディに、

金の装飾があしらわれた、

日本の獅子舞のような山車(だし)


質感を見ると碗や重箱のような工芸品にも見えるが、

それにしても巨大すぎた。



わたしは肝を潰すどころか、

飛びすさり損ねて尻餅までついてしまった。


いい大人で、しかも軍人なのに…

とんでもない醜態だった。


みっともなさに顔から火が出そうだったが、

気絶したとて誰も責められまい。


日常生活ではまずお目にかからない大きさは、

まるで演習で見た戦車のようなのだ。

戦場で出会えば恐怖以外の何者でもない。



ナミ「はせつくんちの目玉、〝曳山(ひきやま)〟よ。

 見たことない人は大抵度肝を抜かれるところを、

 こんな間近でイキナリ出すってのは、もちろん驚かす(サプライズ)演出。


 効果的だったようで嬉しいわ」



優しげな口調でナミ(チャーリー)が言う。

配慮した発言なのは明らか。


ナミ(デルタ)なら鼻で笑うかと思ったが、

淡々と解説するのに徹してるようだ。


時々、人工頭脳(AI)なのを忘れるほどの、

このナミを生み出した日本人に、

尊崇の念を抱きそうになる。


宿敵とさえ言える日本人相手に。



その後も〝曳山〟は次々と現れた。

獅子のほか、兜や魚、宝船みたいなのもあった。


町によって異なる祭囃子に合わせて、

勇壮な掛け声を上げながら曳山は続々と行き過ぎる。


闇の中で煌々とライトアップされた絢爛豪華、

かつ勇壮な姿を、全部で十五台見送った。


許されるものなら、

一度ありのままの祭りをこの目で見てみたい。

そう、思った。




朴「平和な国にも、

 これほど高揚する日があるのだな。


 楽しいか?采玉(チェオク)



李「ええ。(パク)さん。

 何も考えずに楽しめたら最高でしょうね」



朴「浴衣姿でそうしてるといい女だなァ、お前。


 日頃の、職務に精励してる姿も悪くないが、

 今の方がずっといい。

 惚れ直しそうだ」



李「え?」



朴「平和への憧れなど、望むべくもないのにな。

 つい、無い物ねだりしてしまいそうになる」



ナミ「そうでもないと思うけど。

 北朝鮮(あなた方)次第で変えられるのでは?


 まぁ、難しい話は置いといて、

 まず腹ごしらえでもしませんか?」



魅力的な提案に、

わたしは嬉々として従った。




李「あ、わたし、たこ焼き食べたい!

 焼きそばとかわたあめも食べたいなっ!」



朴「お前なァ。

 花より団子かよ?」



李「これでも年頃の乙女ですから。

 そんな事、ずっと忘れてましたが…」



朴「ふむ。

 まぁ、いい傾向なのかな?」



李「ふふっ!早く行きましょっ!

 (パク)さんっ!」



小娘のように腕に抱きついて、

(パク)さんを()かす。


少女の頃、幼なじみたちと遊んでた頃の、

楽しい気分を思い出していた。


初恋を知ったばかりのウキウキした気分ですら、

思い出せそうな気がしていた。




祭りはいいな。

平和な世界も。



もっと楽しんでいたい…

わたしは本心からそう思っていた。



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