『M・I・A』日本語・特別編集版 ⑬
お互いがステージの外側に向いて離れていた、
二人の足元に白と黒の円が現れた。
そして円形ステージの床が光ったかと思うと、
次の瞬間、全面が
「白と黒の勾玉が、
巴に組み合わさった文様」
に変わった。
「ス、ステージも画面だったのっ?
こ、この映ってるのは何?」
観客からの疑問に応えるかのように、
会場のスクリーンに解説の文字が映し出された。
「〝太極図〟
陰陽和合を表す図形。
『イザナミ』と『WWCF』共通の
テーマ・サイン」
円形ステージは、
全体がひとつの太極図になっていた。
黒い勾玉の白目に『Nami-shine』・ミノが、
白い勾玉の黒目に『Nami-shadow』・ハルが
それぞれ立ち、
さらなるコントラストを醸し出している。
そして舞台は
鮮烈なモノトーンに支配されたまま、
また動き始める。
ピアノの、はかない旋律を基調にした
イントロが流れた。
『太極 〜Whole and Pole〜』
ミノ「強く強く、思い… 描く
あなたが目指す、未来の姿」
ハル「弱く弱く、願い… 祈る
あなたが嘆く、現在の姿」
二人「大切なものはいつも、
ひとつじゃない、
ふたつの顔を持つ」
ハル「ねぇ、お願い、私だけを見てよ」
ミノ「ねぇ、あなたの、夢あきらめないで」
ハル「揺れる… うらはらの想い、
かき乱されて戸惑いもしたけど」
ミノ「わたしの願いはどちらも真実よ
(ハルCho:偽りのない希望)」
ふたりのコーラスは随所でからみ合い、
時に不協和音を奏で、
時に溶け合いながら、
複雑な表情を醸し出した。
そしてイザナミが、控えめながら重層的に、
翻訳歌唱とコーラスで絡む。
ミノ「遠く遠く、見晴るかす… 果て
あなたが踏み出す、未開の地」
ハル「近く近く、見つめる… すべて
あなたが佇む、立ち位置」
ハル「わたしの大切なものはいつも、」
ミノ「ひとつじゃない、
ふたつの顔を持つ」
ハル「夢をあきらめたくない、あなたよりも大事」
ミノ「あなたの為なら、夢を捨ててもいい」
二人「矛盾する望み、心の落差に悩みもしたけど」
ハル「わたしの想いはどちらもホントなの
(ミノCho:偽りのない心)」
ふたりは互いの響きを引き立てあいながら、
陰と陽に別れ、鮮明に主張し合った。
まるで、手の込んだ群舞のように
華麗に舞い踊る歌と旋律が、
胸に忍び寄って、奥深くまでしみ込んでくる。
ミノ「それは全てであり、極みでもある。
身勝手な心だけで生きられない」
ハル「それは全てであり、極みでもある。
綺麗な心だけでも生きられない」
ハル「深く深く、噛みしめる愛
あなたが抱く、愛しき人」
ミノ「広く広く、満たしたい愛
あなたが差し出す、助けの手」
歌は、ひとの… ままならぬ心を
表しているようでいて、
森羅万象に普遍的な
摂理であるかのようにも響いた。
ミノ「何かを捨てて選んだ未来に絶望する時」
ハル「どちらも捨ててはいけなかったと思い知る時」
二人「わたしたちは(イザナミCho:人は誰しも)
〝太極〟を知る」
ミノ「わたしの願いはどちらも真実よ
(ハルCho:偽りのない希望)」
ハル「わたしの想いはどちらもホントなの
(ミノCho:偽りのない心)」
もつれ合って解けない糸のように
複雑だった旋律が、おだやかで美しい旋律へと、
すぅっと… ほどけていった。
それとともに、
いくらか不協和音を含んでいた音楽は、
調和を取り戻し、
溶けるように馴染んでいった。
二人「ふたつが溶け合った… 全きもの
それは全て、そして極み」
後奏に合わせるように、
会場には雪が舞っていた。
今度は純白のまま…
背後の闇と溶け合うように、
儚げに…
それでいてしっかりと。
フェードアウトする後奏を惜しむように、
『I-ZA-NAMI-BIPOLER』は近づいていき、
手を取り合った。
同時に花道の奥で見守っていた
ユウとアキが、拍手しながら近づいていき、
四人、また手を携える。
カルテットに戻った女神たちは、
またお互いに背を預け、
会場の観客に向けて、精いっぱい手を振った。
会場からは大きな拍手喝采の波が起こり、
いつまでも鳴り止まなかった。
こうして…
『ミス・イザナミ・オーディション』は
幕を閉じた。




