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国家運営はもうAI丸投げで良んじゃね?  作者: 八和良寿[Yao Yoroz]
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『M・I・A』日本語・特別編集版 ⑪




会場すべての巨大スクリーンで、

逆算カウンタが〇分〇〇秒になり、

「投票は締め切られました」と表示された。


あとは、発表を待つのみだ。

それを確認して、イザナミはおもむろに言った。



イザナミ「それにね、ゆうちゃん。

 ある意味、これも一種の

 クラウドファンディングなの」



インタビューでしてた話を

少し噛みくだいて話す。



イザナミ「今は、かつて難しかった事が

 新しいやり方で実現できるけれど、

 問題もある。


 〝願いを叶えるために力を合わせる〟事は

  ずっと簡単になったけど、

 〝みんなの願いをまとめる〟事が

  難しくなったの」


ゆう「もしかして、

 日本が平和で繁栄してるため…

 って事ですか?」


イザナミ「そう。

 少なくとも今の日本では大多数の人が、

 飢えで死ぬ事も、戦争で死ぬ事もない。

 物質面に限れば、世界でも豊かな国に入る。


 ところが、

 その豊かさゆえに〝願い〟が多様化して、

 国とかの大集団では小回り利かないというか、

 対応しきれなくなるの」


あきら「それで、国の政策は後手後手だ…

 って言われてたんですね」


イザナミ「国よりだいぶ早いはずの

 市場経済ですら対応しきれないんだから

 当然よね。


 だから別の方法で、

〝細かいみんなの願い〟… 社会のニーズと

〝叶えるための力〟… 資金とを

 つなぐ必要が出てくるの。


 それがクラウドファンディングが必要な理由(わけ)

 ざっくり言うと、そんな感じ。


『WWCF』がしたいことも、

 ほとんど同じだもの。


〝慈善活動に実際的な力を与える〟のに、

 経済活動は欠かせないから。


 ただ、それを構えず、

 できるだけ自然体でやりたい。


 ご先祖様が誰しもそうしたように」



大人な意見。

夢だけで、善意がキチンと機能するほど

世界は成熟していないのだ。



イザナミ「その想いをみんなに思い出してもらう事、

 そして必要に応じて力添えを(つの)る事が、

 一番大切な仕事。


 ミス・イザナミは、その象徴(イメージガール)になるのよ」



四人はその意味をのみ込んで、

(こころざし)を新たにしたようだった。


真剣な表情で… しかし(おく)す様子もなく、

頼もしいほどの微笑を浮かべていた。



その時、巨大スクリーンの

「投票は締め切られました」という表示の下に、

新たな数字が表示された。



六七四二〇一五五。



え?

まさか。



イザナミ「ゆうちゃんは

 『We(ウィ) are(アー) the() World(ワールド)』のように

 歌で誰かを救えたら嬉しいと言ったよね。


 あきらちゃんは、

 恵まれない子どもを助けたいと言った」


ゆう・あきら「はい」


イザナミ「ねぇ、気づいてる?」


ゆう・あきら「え?」


イザナミ「あなたたちは今、

 一つ願いを叶えたのよ?」



意外な言葉に、

二人ともキョトンとしている。



イザナミ「見て。

 寄付金ならもう充分。

 この得票総数こそが素晴らしい成果だわ。


 慈善票(チャリティ・ヴォート)だけで三四七二万三三一七ドル。

 限定曲と動画の寄附分まで合わせると

 一億ドルを超える…」



ひと呼吸入れて、

その意味が会場に行き渡るのを待ってから、

イザナミが言う。



イザナミ「今と当時が同じ価値とは

 言えないかも知れないけど、

We(ウィ) are(アー) the() World(ワールド)』の売上、

 六三〇〇万ドルより多い寄付金は、

 誇っていいとわたしは思うけど、どう?」



We(ウィ) are(アー) the() World(ワールド)』で寄附されたのは 印税(いんぜい)で、

実際には六三〇〇万ドルよりずっと少なかったのだけど、

それより遙かに大きな額を、たった二時間足らずの…

しかも公開オーディションで集めたって事になる。


非公式ではあるものの、

この場が世界最大級の慈善(チャリティ)イベントになった事実を、

にわかに受け入れられないのも無理はない。



イザナミ「わたしも、正直

 ここまで凄い事になるとは思ってなかった。


 でも、これはまぎれもなく、

 あなたたちの力で集めた寄付金なのよ」



にっこり微笑んで、

イザナミは四人に言った。



イザナミ「だから、あなたたちは

世界慈善基金(WWCF)』の

 イメージガールとしての仕事を、

 このオーディションで、

 もう立派にひとつこなしたのよ。


 お礼を言うわ。ありがとう」



そして、カメラ目線でにっこり微笑んで、

イザナミは視聴者にも感謝した。



イザナミ「そして、投票してくれた皆さん。

 力を貸してくださって、どうもありがとう。


 この機会に、あなたがたも自分の力を知り、

 慈善活動について考えてみてほしい

 と思います」



ステージ上の四人はもちろん、

会場中のみんなが唖然としていた。


ネット上の視聴者も

きっと同じだったに違いない。


これが「メトカーフの法則」ってヤツ?

「ネットの価値は、繋がる端末の数に比例する」

…っていうアレ。


イザナミが翻訳歌唱(トランシング)という大技で、

ソフト的に端末数を劇的に拡大したとしても、

やはりすぐには理解できない、信じられない。


ネット社会に生きる私たちは、

すでにこれほどの力を持っているって事か。



満面に笑みを(たた)えながら、

嬉しそうにイザナミは続ける。



イザナミ「おかげで今回、

 アフリカの子ども達に予防接種を行い、

 給食をし、

 井戸や学校も提供できます。


 たぶん多くの戦争や災害の難民にも、

 何らかの支援ができるでしょう。


 日本国内の未だ立ち直れていない

 被災地への支援もささやかながら。



 それぞれの負担は、

 好きな()に投票するために出した

 コミックス一冊分ほどの金額。


 あと、普通に買ってる音源やDVD代。


 好きなことをきっかけに、

 みんなで心を合わせる事が、

 これほど素晴らしく、

 すごい力を持っているの。


 しかも、誰もが納得してやる事だから、

 誰も不幸にならないはず…


 わたしにとっては夢のような事なんだけど、

 皆さんはどうかしら?」




いつの間にかゆうさんは、

感涙(かんるい)を流し、むせび泣いていた。



ゆう「こ、こんな事が… あるの?

 夢みたい。

 いつかこういう場に立てたらって思ってたけど、

 こ、こんなに早く… 実現するなんて」



みのりちゃんとはるかちゃんも

微笑みながら泣いていた。



あきら「ゆうちゃん、私も…

 このオーディションに参加できてよかった。

 みんなと一緒に、

 この感動を味わえて良かった。

 皆さん、本当にありがとう」



涙で顔をくしゃくしゃにしながらも、

精一杯気持ちをあらわそうと、

あきらさんがお辞儀すると、

会場から拍手喝采が起こった。


イザナミまで、もらい泣きしていた。



イザナミ「ぐすっ。

 少し脱線し過ぎたかな。ふふっ。


 さて、お待ちかねの発表に移りましょうか!」




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