『M・I・A』日本語・特別編集版 ⑨
「十分ほど休憩を挟んで、
いよいよ投票になります。
いまだ興奮冷めやらぬミニライブ…
休憩の間だけ限定でお見せします。
どうぞ〜!」
会場の巨大スクリーンには、
先ほどのライブが再上映された。
歓声が起こった。
イントロから
『カラフル・ワールド』に移る場面だ。
カメラワークと編集がカッコ良く、
これだけでも十分に見応えあるのだが…
「海外の皆さんが、後半グン! と増えたからね〜。
見てない人が多すぎるとハンデなっちゃうんで、
前半を翻訳歌唱つきで再上映するね!」
翻訳歌唱が加わって上映された英語版は、
表現力がワンランク上がったように感じられた。
「はぁ〜い!
画面下の数字は、この番組を見ていただいてる方の
情報で〜す!」
画面の隅には、
数字とグラフが控えめに表示されていた。
会場の観客数、テレビの視聴率、
ネットの視聴者数が
表示されているが、
特筆すべきは最後だった。
最初ごく少なかった、
赤のライン〜海外視聴者数が、
ミニコンサートの途中から急激に伸びていて、
ステージの半ばあたりを境に、
緑のライン〜国内視聴者数を抜き去っていた。
「ストリーミング配信は
VGのポータルから
二十五カ国語で見れますので、
途中から見てる人は、
ご自分の言語に対応したリンクを見てね」
説明するイザナミの映像に被るように、
二十四本の字幕が並んで一気に流れた。
文字でイザナミの顔が見えない。
世界中を見回すかのようなジェスチャーをして、
ナミはうなづいた。
「さて、皆さんにもうひとつお知らせがあります。
わたし… イザナミの心に深く刻まれている、
『WWCF』のメインテーマ…
〝ひとりはみんなのために、
みんなはひとりのために〟
という理念。
ご存じの通り、
チャリティ活動が中心になっていますが、
このイベントでも
趣旨に賛同していただける皆さん限定で、
特別な趣向を用意しました」
ひと呼吸入れて、
イザナミはいつになく落ち着いた声で続ける。
「今日、カルテットを務めてくれた
四人への投票は
ひとり一票ですが、
今回『慈善票』を認めます。
『WWCF』の趣旨に賛同し、
一票あたり百円ご寄付いただければ、
ひとり四票まで追加できるものとします
この収入は、総額を公開の上、
適切と思われる国内・外の慈善団体に、
分配する形で全額寄付します。
もちろん参加・不参加は、皆さんの自由です。
でも… どうか、ご協力を。
よろしくお願いします」
会場がざわついた。
それぞれ、いろいろ思うところがあるだろう。
人によっては幻滅したりするかも知れない。
「また、今ストリーミング配信している
ミニライブを含んだ公式コンテンツ
『ミス・イザナミ・オーディション』も
先ほど頒布開始しました。
副音声に翻訳歌唱を追加した動画と音源を
二十五カ国語でご用意してますので、
良かったら、こちらもどうぞ!」
おおっ! と歓声が上がった。
「協力せいでか!」
「買うとも〜!」
やる気満々、買う気満々で叫ぶ人、続出!
「『MIA』は制作費の関係で、
寄附率は頒価の七〇%になりますが、
制作費の一部は著作権料の形で
副賞として彼女たちにも贈られます。
推しの娘に、気持ちを手渡しする
と思って是非どうぞ」
「おおっ! やるやる!」
「手渡すとも〜!」
後の情報統計によれば、
結構な割合のファンが、
この出費を厭わなかった。
好意的に捉え、参加した人々も
推しの娘に五票入れる人、
買った四票を一票づつみんなに入れる人、
やり方はさまざまだった。
この発表によって母数の増えた
『ミス・イザナミ』投票は、
大変な事件になろうとしていたが、
まだ、誰もそれに気づいてはいなかった。
この時は、参加者の誰もが、
無邪気に、無心に、
〝誰に入れるか〟だけに頭を悩ませていた。
その時ちょうど、前半の最後、
あきらさんのソロ『仕合わせ』の
再上映が終わった。
「よしっ! 休憩時間終わりっ!
お待たせしました!
『ミス・イザナミ』投票を
はじめますっ!」




