『M・I・A』日本語・特別編集版 ⑦
『スタンバイ・ユー』
メイン歌手、はるかちゃんの周りに
旋風が巻き上がるように光が舞ったと思うと、
衣裳動画が制服姿に変わった。
登場時に見せたのとは違う、
白いセーラー服とロングブーツ。
学校の制服というより
アイドルの舞台衣装って感じ。
制服のミニスカートがヒラヒラとめくれて、
見えそうで見えないのも演出?
「夢で見るあなたは、いつもわたしに優しい。
でもホントのあなたは、そっけないのよ、いつでも。
夢見のせいで、朝からなぜかドキドキ。
こころザワザワ。あなたのせいでシクシク。
つい冷たくしちゃうけど、本気にはしないで。
嫌いになったらヤだよ。
いつもとなりにいるよ ♪」
恋する女の子の可愛い心情を描いた歌詞は、
なんかくすぐったい。
若さ全開の、甘酸っぱい
恋の醍醐味って感じ?
それが、はるかちゃんみたいな
超絶美少女の口からくり出されるんだから、
たまらない。
「恋に狂っちゃっても、あなたのそばにいるよ。
つらいときには優しい声をかけるよ。
だから、優しく優しく、
ギュッとギュッとしてして。
お願い〜 ♪」
会場中の男性が、
可愛いさでメロメロになっていた裏では、
またも異変が起こっていた。
『unity』の鮮烈な多言語コーラスで
増えたギャラリーに向けて、
イザナミはこの曲も最初から
外国語のハモりパートを入れていた。
それが、次のリフレインパートに入ったところで
変わった。
曲に聴き入っていたロシア語圏のファンは、
違和感の原因に気づいて脳髄を沸騰させた。
「恋に狂っちゃっても〜 ♪[日本語]」
ヴィクトル「あれ?
この声、このパートって…?
イザナミ?[ロシア語]」
ヤコフ「じゃあ、
このロシア語は?[ロシア語]」
ユーリ「は、ハルカ?
ハルカが… 俺たちのコトバで…
唄ってる?[ロシア語]」
はるかちゃんは、
理系科目だけでなく、語学でも天才的な
「四カ国語ペラペラ少女」だった。
子どもの頃に転居する都度、
すぐに現地語を話せるようになったという。
次のリフレインでは英語、
その次のリフレインではドイツ語で唄った。
「あなたに狂っちゃったら、いつもそばにいるよ。
抱き合いながら… 優しい声をかけるよ。
だから、優しくギュッとして、
キスしてっ! ♪」
最後のリフレインは日本語でキメた!
イザナミが三カ国語でキッチリハモる。
後奏ナシでスパッと終わったから、
激しく、鮮烈だった!
だれもが「キュン!」と来て、
一発で落とされちゃうレベル!
その証拠に次の瞬間、
会場の男性たちが「ハル・コール」を絶叫した!
少し遅れて女子たちも続いた!
「可愛いは正義!」って感じ?
しかも、『unity』の多言語コーラスを越える、
「多言語ローテーションデュエット」が、
会場の外にまで、鮮烈な印象を与えた。
興奮冷めやらぬ会場とネットに畳み掛けるように、
さらに次のイントロが投げかけられた。
『天翔ける羽衣』
ポップでノリの良い伴奏に乗って、
四人のミニスカ天女が現れた。
それぞれのカラーを基調にした和風柄は、
微妙にグラデーションが変化しながら
色調が移ろっていく。
神がかりな美しさを表現するためなのか、
トップスもスカートも
下の水着が微妙に透け透けな感じだ。
新体操のリボンみたいな
「羽衣」も纏っている。
ほんのちょい足しなのに、
立体感が加わって新鮮だった。
「あなたのためなら、なんでもできるわたしなの。
あなたが望むなら、空を飛ぶ事だって、
湖の水を飲み干す事だってできる。
ひとつ願いを言って。
それが〝そばにいてほしい〟って願いなら、
大喜びで飛んでく。
あなたのもとへ、わたし飛んでいくわ〜 ♪」
次の瞬間、転調した爽やかな間奏と、
ステージに巻き起こった風に乗って、
四人は〝舞い上がった〟
たとえではなく、ホントに舞い上がった。
文字通り、空を飛んだ。
ちょっと南国風に変わった
和服に身を包んだ魅惑的な天女たちが、
羽衣をたなびかせ、頭上でくるくる舞っている。
その後、
いったんステージに着地した天女たちは、
ダンサブルで長めの間奏の間、
宙返りやバク転を交えた
アクロバティックなダンスを披露した。
運動神経バツグンのゆうさん、
元気っ娘のみのりちゃんはもちろん、
おっとり娘のあきらさんや
運痴なはずのはるかちゃんまでもが
軽やかに宙を舞っていた。
会場中が唖然としてその様を見ながら、
目を見張り、口をパクパクさせながら見惚れた。
「あなたのためなら、なんだってできる。
空を飛ぶことだって、宙を舞うことだって。
いま、あなたのもとへ飛んでくことだって。
たとえ世界の果てにいても〜 ♪」
ある意味、もう世界中に飛んでいってたのだけど、
信じられない光景と、会場が一体となった興奮は、
やはり、その場で目撃した人だけの特権だった。
参加者を羨む声でネットは沸騰した。
四人はそれぞれの花道を駆け、回り、飛んだ。
そのたびに随所で、驚きの声と歓声が巻き起こる。
会場「有明フォーサイト」の
天井を突き破らんばかりの勢いで、
熱狂は最高潮に達し、燃え上がった。




