『M・I・A』日本語・特別編集版 ⑤
曲のイントロに乗って、
ゆうさんが前に出て、ジャンプした。
次の瞬間、
ゆうさんのスーツは燃えるように輝き、
何事もなかったかのように新たな動画…
街の雑踏を映し出した。
次の曲名が表示される。
メドレーだからひと繋がりなのに、
曲名はしっかり告知される。
「ミス・イザナミ」が決まったら、
すべてその娘の持ち歌になるはずだから。
『神宿る都市』
ソロパートを唄うゆうさんが一歩前に出て、
後ずさった三人が並んで
バックダンサー&コーラスを務める。
今度はステージ自体がゆっくり回転して、
同じ立ち位置で唄い踊る彼女たちを、
周囲の観客に遍く見えるようにする。
ゆうさんがアピールした高い身体能力は伊達じゃなく、
踊りも歌も一目でわかるほどハイレベル。
スーツには、
視界が、街の雑踏から上空へと
じょじょに上がっていき、
街並みを見下ろしたようすが映し出されていた。
「まちかどのひとつひとつに…
きみとわたしの間にいる。
わがままなわたしを見守ってる。
誰もいないのに視線を感じる。
声かけられた気がして振り向く〜 ♪」
ゆうさんのスーツに炎が迸り、
つま先から燃え上がるように輝いたかと思うと、
普通の女子高生の制服に変わる。
後ろの三人も連動するように変身した。
「誰かの言葉を思い出すよ。
むかし、都市は寂しい場所だったんだと ♪
ハロー… ハロー…
今は… 声を…
呼びかければ… 答えが…
返ってくる… こだまする。
ここで、感じるままに、信じるままに、
わたしが思いのまま歩いても、見守って〜 ♪」
ゆうさんのスーツが、
ふたたびつま先から燃え上がり、
巫女さんの装束に変わる。
ミニスカブーツにアレンジされた、
巫女さんコスの四人は、なかなか…ソソる。
「神さま… わたしはここにいるよ。
あなたもそこにいるの?
森羅万象に神宿る、TOKYO。
ほら… 人と神が繋がる都市。
森羅万象に神宿る、NIPPON。
ほら… 人と神の国〜 ♪」
ダンサブルな後奏に合わせて、
くるくると華麗に舞い踊るゆうさん。
0と1の数列が、
街の景色に被さるように溶けていく。
IoTの神宿る都市というワケだ。
曲が転調する。
次の曲のイントロに変わったのだ。
『16million eyes〜 一千六百万の瞳』
Dスーツに映像を映す技術は…
誰が呼んだか、その時すでにネットでは
『サーフェス・イメージング』と呼ばれていた。
今、四人の衣裳動画には
老若男女、たくさんの人たちの顔が
映し出されている。
それがじょじょにアップになって、
瞑った目のアップになっていく。
四人が唄いながら花道の端まで駆け出すと、
たくさんの瞳が一斉に開いた。
あらゆる方向が見つめられている。
「神の瞳が…
行き届いても…
わたしの夢は…
止められない… AH!
誰より自由な、こころを見て!
フォー… スリー… ツー… ワン… ♪」
可愛く、ゆったりした曲にあわせて、
交互に唄いながら中央に向かって走る四人。
ステージの中央で交差する刹那、
それは起こった。
「え?
き、消えた?」
会場がどよめいた。
四人が消えた。
ほんの僅かな時間ではあったけど、
確かに見失った。
次に見つけた時、四人は花道の中程まで達していた。
さっきまでとは〝反対側の花道〟にだ。
「な、何が起こったんだ?」
誰も見たことない舞台演出の連続だった。
何か起こるたびに、会場は驚嘆し、熱狂した。
「カラダ中にあふれる血と、ほとばしるデータが踊る。
姿・形は違っても、それは個性。
ひとをしばることはできない。
誰かの目を気にして翔べないなんて、ナンセンス! ♪」
カラダ中のたくさんの瞳に、
0と1の数列が無数にオーバーラップしてから、
小さく引いていく。
瞳が点のように小さくなっていくにつれて、
全体がひとつの顔… モザイク画になっていく。
四人それぞれの顔…
それも今、唄っている姿、リアルタイムの。
「わたしはわたしらしく。
ただ、ただ、わたしたちはしあわせよ…と、
胸張って言えるよう生きるだけ。
いまを見て、ずっと見てて、見守っていて。
ほら、どう?
わたしたち、しあわせよ〜 ♪」
後奏では、四人の姿が点滅するように
消えたり現れたりした。
走り、踊り、輝き、そして瞬いた。
暗闇の被写体に等間隔で光を当て、
コマ落としみたいに見せる「ストロボスコープ」
高輝度の有機ELをシームレス立体縫製で仕立てた、
「Dスーツ」は明るい場所でも高精細を誇る。
それが交互に、輝いたり消えたりすると、
動きの一瞬一瞬がストップモーションで切り出される。
ステージ上でリアルタイムに展開する、それは、
ひどく印象的で、目に焼き付く視覚だった。
躍動感あふれるポーズ、アクションのすべてが、
文字通り「決めポーズ」になって、
目まぐるしくも、華々しく、色鮮やかに変転する。
会場は興奮のるつぼとなり、
盛り上がりは最高潮に達していた。
間を置かず、次のイントロに曲調が変わる。
もう誰も、四人から目が離せなくなっていた。
たぶん、世界中の視聴者も。
後々まで語り草となるライブは、
まだまだ終わらない。




