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国家運営はもうAI丸投げで良んじゃね?  作者: 八和良寿[Yao Yoroz]
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居酒屋にて…




自宅からそう遠くない馴染みの居酒屋。


よく寝てる、みんなを起こさないように、

そおっと降りる。


ナミの自動運転に任せれば、

そのまま自宅まで送ってくれる。

空調も最適に整えてくれるから、

朝まで車庫で車中泊でも不安はない。


帰って行く高機動軽装甲車(スマトラ)を見送ってから店に入った。

すると奥の席から呼ぶ声が。



「あ、ここだよ、俊明くん」


「ども。お久しぶりで〜す」


「まぁ、駆けつけ一杯」



お酌を受けて、まずは軽く乾杯から。

ぐい呑みをぐーっと空ける。


くぅ〜っ、沁みる〜!



「時間経ってしまったが、

 お役目ご苦労さま。

 大変な役をよく全うしたね」


「いやぁ、僕はタッキーの

 お供してただけですから楽勝でしたよ」


「そんな事はないだろう。

 仮にも一国の総理大臣が楽な訳あるまい?


 それだけでなく、今回も…

 また厄介事を押し付けてしまった。

 済まないね。無理ばかり言って」


「まぁ、楽しんでますよ。割と」


「そう言ってくれると、

 気が楽になるよ。すまんねぇ」


「深く考えてないだけですよ。

 ぼく、おバカでお気楽なんで」


「首相経験者の口から出ると、

 (おもむき)あるねぇ、そのセリフ」



そう言って、貴一(きい)っさんは相好を崩した。

久々に見たな、笑顔。


もともと、にこやかな人って印象だったから、

最近、通りすがりで見かけた時、

いつも難しい顔ばっかなのを見て、痛々しいと思ってた。


でもまた難しい顔になって、

貴一(きい)っさんは言った。



「君は知ってるだろう?

 鹿野屋家は護られている」


「ええ、生みの親ですもんね。

 そんなスゴい人だなんて、

 思ってもみませんでしたよ、昔は」


「生みの親と言うなら、

 もうひとり、私の親友の方がふさわしいけどね。

 彼がシステム設計とソフト構築、私がハード建造。

 那由多のデザイナー、彼が本当の生みの親さ。

 まぎれもない天才だった…」


「だった…?」


「那由多の完成を待たずにね…、亡くなった。

 謀殺…だったと思っている」


「……」


「その事があって、私も用心深くなった。


 あの要求は私が出した唯一の条件。


 あれで少なくとも国内にいれば、

 家族ともども身の安全を図れる。

 今なら友も護れただろうが…」



親友を失った悔いに貴一(きい)っさんは言葉を詰まらせた。

しばし沈黙した後、また続けた。



「それでも、護り切れない事はあり得るが、

 一般人と同じく普通の生活をしていれば、

 目立たずに平穏に暮らせると思っていた。


 そこへ娘の事だ。

 あれはずいぶん苦しんだ。

 しかし、まぁ今さら気に病んでも仕方ないからね」



障子とはいえ個室。

込み入った話になるだろうとは思ってたけど。


悩んでたんだなぁ、やっぱ。

ひとりで抱え込んでたなら、キツかったろうと思う。


テビチや島らっきょをつまみながら、

古酒(くーす)(あお)り、相づちを打つ。



「君が出馬し、当選した時も、

 結果的に割を食わせてしまったと思っていた。


 そして、まだまだ頼らざるを得ない…と、

 則人から聞いている」


則人(タッキー)の支援はもちろんですが、

 子どもの頃から良くしてもらった

 貴一(きい)っさんのお役に立ててるなら嬉しいですよ」


「フッ、おかしなものだ。

 小さな頃から知ってる君とこんな話ができるんだから。

 年も取る訳だ」



柔らかな笑顔を見せてから、一転、

真剣な表情になって言った。

真剣だけど難しい顔じゃない。


むしろ晴れやかな顔で、

悩みとかの話じゃなさそうだった。



「君のしてくれた事がどれほど貴重で価値があるか…

 いくら感謝しても足りない。


 その恩に報いるのに、

 何ができるかとずっと考えていた。


 それで… 君にとって必要かどうかは分からんが、

 せめてもの気持ちを受けてほしい」



一呼吸おいて、貴一(きい)っさんは続けた。



SHG(サーヴァント)の名誉幹部(メンバー)になってくれないか?」


「それって、どうなるんです?

 よく、わからなくてすいません」


「実務には全く関わらなくていい。


 “鹿野屋家”の部分を“SHG幹部(メンバー)”に

 変えるようVG(ビジー)に願い出た。


 遠くない未来それが整えば、我が家と同じく、

 君と家族は常に国家的VIP扱いになる。

 今よりは安全を確保できる…と思う」



「家族…ってのは、どこまで入ります?」


「君が望むなら親戚や友人でも、

 それは私が…いや、VG(ビジー)が保証する」


「過分、ですよ…ねぇ。

 それは」


「君の働きにはそれだけの価値がある。

 真剣にそう思う。

 受けてくれ。

 でないと、私の気が済まない」


「ズルいですよ、貴一(きい)っさん。

 そう言われたら…断れないじゃないっすか」



困ってる風な口調になっちゃったけど、

快諾するしかないよね、これ。


引きこもりの頃には考えられなかったけど、

今、護りたい人は…たくさんいる。

ありがたい、嬉しい。


僕一人じゃ護り切れないから何より…だと思う。

掛け値無しに。



「それと、もうひとつ。


 これは君だけになるが、

 那由多の総力を挙げた技術支援(サポート)を約束する。

 こちらは今すぐにね」


技術支援(サポート)?」


「護衛の()たちに、

 “無茶だ”と言われてないかい?」


「あ、言われました。

 恥ずかしながら」


「何ができるかはわからないが、

 那由多にできる事は全てやれるようにする。

 “国に出来ない事”でも出来るかも知れない」


「わからないんですね?」


「うん。

 だが、有力な保険が増えたと思ってくれていい」


「…はい」



「幹部には無論、経済的な恩恵もある。

 君の持分を確保するため新規株を出そう。


 AI国民主党(あいこくみんしゅとう)代表の収入だけでも十分かも知れないが、

 配当だけでも桁が違う。

 ぜひ受けて欲しい」



「僕の周りも大所帯になってきたから助かりますけど、

 なんか大変な事になってるような…」


「あまりに大きい恩を考えれば、

 政略結婚くらいすべきトコなんだろうけどね。


 さすがに縁を結ぶためだけに娘はやれんし、

 君の彼女たちも承知すまい?」


「心優しい人ばかりです。

 邪険にはしないでしょうが、

 お嬢さんにはお嬢さんの人生があるでしょう?」


「個人的には、君を息子のように思ってるよ。

 那由多と一心同体だし、

 実の息子とは、まだ…一杯やれんしな」



はにかむように貴一(きい)っさんは言った。

この人の、こういうところが好きなんだよね。



「それは…一番嬉しいです。

 光栄って言うか、心の支えになります」


「そうかい?それならいいが。

 “北”に赴く前に…と思ってね。

 私のせめてもの(はなむけ)だ。


 ご自宅の方に新しい機材も届けておいた。

 気に入ってくれるといいが…


 詳しくはナミに聞いてくれ」



「過分なご褒美、

 ありがとうございます」



「気をつけて行きたまえ、俊明くん。

 朗報を期待してるが、無理はしなくていい。

 君らしく…でいいから」


「はい!

 ではこの辺で」


「ああ。

 帰ったらまた呑もう」


「ぜひ!

 貴一(きい)っさんも悩み、また話してください。

 聞くくらいしかできないし、頼りになりませんけど」


「もう、頼ってるよ。

 十分すぎるほどね…。

 じゃ、気をつけて」


「おやすみなさい」



再会の約束と笑顔を交わして店を出た。


色々出た高待遇は正直ピンと来なかったけど、

それより、尊敬する貴一(きい)っさんの笑顔が…、

褒めてくれた事が嬉しかった。



「ふふっ」



思わず笑み崩れる。

さらに気合い充実、やる気満タンになった。



「よしっ!

 頑張らないとな!」



酔い覚ましに、夜道をひとり…

歩いて家路に着いた。




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