鹿野屋家の受難 ②
「その生徒の従姉妹がね、
ずっと疎遠だったらしいんだけど、
急に居候したいって言ってるらしいの」
「居候?」
相談乗ってと頼んできた幼なじみ、
ひかるは小御城高校の教員やってる。
割と人望あるらしく、
生徒にも先生にも人気あるって話。
今回のは生徒からの相談みたいだ。
「俊クン、
“外の人オーディション”知ってる?」
「そりゃ、もちろん。
決まった時ゃ、大騒ぎだったもんな、地元
…って、え?
まさか、あそこン家?
よりによって?」
二〇X〇東京オリ・パラに向けて、
イメガに任命されたナミを援ける女の子
「ミス・イザナミ」
それを選ぶ、VG主催の選考会、
「ミス・イザナミ・オーディション《MIA》」
が六月に開催されてた。
その「外の人」に選ばれた娘が、小御城に住んでいる。
平たく言えば、国民的アイドルがこんな片田舎から
イキナリ現れたわけで、大騒ぎにもなるってもんだ。
訳あって一昨年引っ越して来たばっからしいけど、
越した早々、大事ンなっちゃったなぁ、
と他人事ながら心配したんよね。
「うん。
当の生徒…鹿野屋さんたちはこれから、
ナミのRAの仕事で忙しくなるし、
家の方も受け入れるには難あるみたい」
ひかるは上目遣いで祈る形に手を組み、
ぼくに「お願い」してきた。
「ホームステイ先になってくれない?」
「ええっ!」
「民泊とか色々やってるでしょ?
俊クンとこ…」
「ま、まぁ、そうだけど…」
「客サンは若い女かや?」
「ば、ばあちゃん!
なんで入ってくんだよ!」
「茶〜、新しいの、どぞ」
「あ、ありがとうございます」
「で? どうなん?」
「そ、そうみたい…ですよ?
たぶん二十代」
「そか。じゃあ、ええよん。
あんたが相手してくれんとなりゃあ、
出会いを増やしたらなアカンしな。
俊の」
「ええい〜!頼んでないやろ!放っといて!
関係ないやん!ばあちゃんは!」
「冗談はともかく、
民泊の客サンは貴重な収入源じゃよ、
ワシん小遣いンなるからにゃ。
ひょほほ」
「お、お相手しない…とか、
言ってないケド…なぁ…」
「ん? なんか言ったかや?」
「いっ!
いええ、なんでもっ!」
「ばあちゃん!
とにかくっ!安請け合いはダメっ!」
「でも、知り合いとか…
言ってるらしいよ?」
「誰の?」
「俊クンの」
「ええっ?
テレビで見て知ってるとかは
カンベンしてよ?」
そういう話もたまにある。
有名税みたいなもんだとは思うけど…。
マジ、カンベンしてほしい。
「そうね。
俊クンにロシア人の知り合いなんて
いるわけないもんね?」
「ロシア人?」
「うん。
鹿野屋さんロシア系のハーフだから、
従姉妹はロシア人なんだって。
いちおう名前メモってきてるけど…
見る?」
ま、まさか…。
「今日の便で着くって…
もう着いてる頃かも…」
「の、NO〜〜〜〜!!!!」




