【こらむ】お札もコインもない社会
「日本円の完全電子化」は、電子財布の配布から始まった。
スマホ・着スマと連動できるマナカの見た目は、ICチップ付きクレカと何ら変わらない。しかし、これで世の中は大きく変わったのだった。
まず、銀行預金が全部マナカに収まった。その後、紙や金属のお金が続いた。「交換期限を過ぎると使えなくなる」と言われれば誰だって入金する。みんな急いで銀行に持って行った。
不動産や有価証券などの資産も同じように管理されるようになった。後にお役御免になる銀行やお役所勤めの人たちの一部は、期間限定で所有者不明資産の調査に回されていたようだ。どうしても所有者特定が困難な場合、資産は没収された。
外国人向けには他国籍用のマナカが発行され、日本人同様に使えるようになった。国内向けとの主な違いは、現物通貨との交換期限が少し長い事、一ヶ月以内に引き落とせば流動資産税が免除される事など。日本で商売する企業には円の使用が義務づけられたため、最低一社に一枚取得された。
国内資産の95%以上と海外資産の一部を素早く把握したVGは、次に税制改革を行なった。
まず、所得税や間接税、関税を始めとするほとんどの税金をなくした。代わりに残ったのは、消費税(30%)と、固定・流動の資産税(各3%)だけ。
貸し付けも事実上、国営になった。データ化された消費性向に基づいて、A〜E各3ランクの合計15ランクに格付けされて金利が決まる。(未成年者と成年被後見人は対象外のNCランクとされた)
個人間の貸し借りも、よほどの事がない限り、これに準ずる。今や、個人間の口約束で貸し借りするのはほぼ不可能だ。
買い物する都度、自動的に納税されるため税金を意識する事はほとんどなくなった。節税や還付も不要だから領収書も必要ないし、公認会計士などの実務は大幅に減って、今はほぼコンサル業と化している。
他カードの情報も読み書き可能なので、電子マネーやポイントカードの類いも全て呑み込んだ。
事情通の話によれば、全ての個人・法人の消費状況がリアルタイムで把握され、財務諸表は破綻なく連動しているという。管理社会の薄気味悪さはあるものの、裏を返せば透明化が徹底されたため犯罪者がつけいる隙はなく、不正のしようもない。
これに伴って銀行業と貸金業は解散、金融と税制、資産に関わる省庁も解体または縮小された。
かくして我々はスマホ・着スマだけで(持ってない人はマナカだけで)外出できるようになった。
今の所、世界でも稀な完全電子通貨となった日本円。あとは使いこなすだけだが、それは教育の範疇…勉強が必要になる。
すでに学校教育ではカリキュラムに取り入れられているが、我々、大人は学校で習えない分を自力で巻き返さねばならない。
ま、子どもに負けないよう頑張りましょう。
[お金の便利帳 〜大人なら知っておきたい基礎知識〜より]




