рукопожатие 〜握手〜 ④
「では、考えは変わらない…と?
米国の国連声明を聞いた今でも?」
大統領の第一声は、
先日やったテレビ会談の続きから始まった。
私は、傍聴者であるナギりんのサポート、
通訳や資料出しなどに徹してる。
「脅しながら交渉…というのでは、
まとまるものもまとまりますまい。
米国のやり方は、
“戦争しか選択できない対話”のように見えます」
落ち着いた声で高天原則人が応じる。
彼は、こうした場にふさわしく、
外見・物腰ともに落ち着いた壮年の風貌をしている。
そうデザインされている。
瞬きもせず聞いていた大統領は、
もう一人の要人に訊ねた。
「小诺も、そう思うか?」
大統領の問いに、
事実上の全権である一诺がコクリと頷く。
大統領も小さく頷くと、またモニタを注視する。
その様子を確認してタッキーは続けた。
「ですが、私は
“平和しか選択できない対話”を模索したい。
“ケンカ腰でない抑止力”とでもいうか」
「懐柔という事か?」
「まぁ、共存…と言いたい所ですが、
そう取って頂いても構いません」
「アメリカのカーズ大統領は
声明を見るまでもなく強硬だ。
下手に動くと日本も不興を買うのでは?」
「もちろん、表向きは。
しかし、同じビジネスマンとして、
本音は無傷で済ませたいはず。
さほど厳重なお咎めはないと思います」
タッキーは、今や日本最大のコングロマリット、
サーヴァントの事実上の経営者。
と同時に日本国の経営者とも言える。
商売人を自称するのも、
さほど奇異じゃない。
「抑止力…互いに武器を突きつけた睨み合いは、
犠牲が大き過ぎる。
あなた方の御国もそれで苦しんだのでは?」
大統領は苦笑いした。
認めるわけにはいかないケド、
とぼけるには明確すぎる事実だから。
「それよりも手を携えて進む道を勧めたい。
その方が繁栄できると“北”に理解を求めたい」
「事は後戻りできない所まで来ている気もするが。
それに、どうやって“北”を説得する?」
それぞれの目前に置かれたモニターに
地図と説明図が投影される。
朝鮮半島の現況とこれからの計画が示されていた。
「まずは、38度線…
非武装地帯に共同統治領を設けて
南北の行き来を可能にし、双方の溝を埋める所から。
地雷原の啓開、最初のインフラへの出資は
私たちから協力を申し出ます」
「北領のようにしようと?」
「差し当たっては」
「にゃるほど」
大統領はアゴに手を置いて、
首肯できるかどうか意見を反芻した。
一诺は
瞑目して考えを巡らせているようだ。
「確かに北領はこの上なく上手く行っている。
だが、“北”でもそうとは限るまい」
「今のままではそうです。
いくつか大きな譲歩が必要でしょうね」
タッキーは冷静に続ける。
「まずは領地の安堵と独裁体制の保証。
そのために…講和条約のお膳立てが必要かと」
「“戦争を終わらせる”…と?
休戦ではなく?」と大統領。
「戦争状態だからこそ、
亡国の恐怖があり、抑止力を必要とするのです。
原因を除くのが一番かと」
「理屈はその通り…だが」
大統領が市長に目配せした。
「四面楚歌で正気を失ってるかも知れん相手に、
果たして通用するかな?」
市長は言い、その目に怜悧な光が走った。
殺気と言った方がいいかも。
ヤバい!隊長!
助けて!




