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国家運営はもうAI丸投げで良んじゃね?  作者: 八和良寿[Yao Yoroz]
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рукопожатие 〜握手〜 ②




「こ、この娘が?

 なんで狙われるん?」


「さぁ。

 でも、この場に置いてくと見殺し…って事に」


「そ、それはアカンやろ?

 護衛官さん、警察で保護とかは?」


経緯(いきさつ)がわからないうちは、

 お受け致しかねます。

 あなたの護衛が任務ですから、閣下」



いかにも“困った”という風に護衛官は応えた。


弾道解析の結果から、

狙われてるのがこの娘だとわかっても、

その理由まではわからない。


狙われてるのが俊さまでないのなら

職務外と考えるのは当然だ。

私でもそう考える。



でも、俊さまはそんな風には考えない。

そんな俊さまだから、私はお側にいたいのだ。



「閣下はやめてくれない?

 一民間人なんで」


「どうお呼びすれば?」


「凪さんとか…

 どう?護衛官さん」


「では、なぎ殿(どの)

 わたしも“護衛官さん”でなく、

 リリューシャと呼んでくださいませんか?」



ロシア人は親しくなると愛称を使い、

人によっては本名より長くなるとは聞いてたが…

まぁ、親身になってくれてるという事か。


車内では日本語とロシア語が飛び交った。

ナミの同時通訳がなければ、

これほどスムーズなやり取りは無理だろう。



「しかし、なんで…

 こんな可愛らしい()が?」



抱きついたままの娘は、やっと気がついた。


俊さまに抱っこされている事に気づいて、

少し頬を赤らめたが、

狙撃された恐怖が蘇ったのか、また俊さまに抱きついた。


俊さまは落ち着かせようと優しく髪を撫でてる。

い、いいなぁ。



「ふぅ、無理もないか。

 もう大丈夫だよ。お嬢ちゃん」



撫でられてるうちに落ち着いたのか、

彼女は回していた腕を離して隣席に移り、

上目遣いに俊さまの顔を見上げた。



謝謝(ありがとう)


「どういたしまして。

 お名前は?」


「イーニュオ…、彭 一诺(ぽん いーにゅお)



同時通訳は3ヶ国語になったが無問題。

それよりこの娘をどうするかの方が問題だ。



「警察で保護できないなら、

 連れたままどっかに避難しますか?俊くん」


副長(ラリー)


「そうだねぇ…

 市長との会見は申し訳ないけど延期…」


「なぎ殿(どの)、お待ちを!

 上に事情を説明してみますので」



リリューシャが慌てて携帯無線に取り付いた。

職責を考えれば当然だ。

これが元で会見が不発になれば、

誰だって大失態と考えるだろう。



市場(いちば)視察の後、

市長との会見が予定されていた。


VG(ビジー)は「北方領土問題」に際し、

二島返還どころか返還そのものを先送りにした。


そのかわり全島を日露共同統治とし、

自由渡航・移住許可を条件に

大規模な出資と開発協力を申し出た。


軍事的には不可侵。

行き交う互いの艦艇・航空機の行動を制約しない事、

日露以外の通行を認めない事などが取り決められている。


資源開発と漁業は協同組合制により成果を分け合い、

市民生活に関わるインフラや経済開発は

日系企業によって大きく進んだ。


日本側の元島民には公団住宅が安価で提供されたおかげで

日露双方から移住者が増えて人口は倍増、

一二〇〇〇人を超えるまでになっている。



日本側で「北領」と呼ばれるようになったが、

「クリル・千島自治特区」というのが正式名称だ。



今回の訪問に際して、

警備体制も中央政府からの増員を受けているから

要人狙撃など不可能だと思っていたが、

こんな女の子が狙われるほど治安が悪いのか?


リリューシャの連絡が功を奏し…

というか奏しすぎたようだ。


すぐにユジノ・クリリスクの市長から

直通電話(ダイレクトコール)が来た。



「一緒にお連れなさい」


「いいんですか?」


「貴方にとっては乗りかかった船でしょう?

 こちらにも責任はありますから。

 まぁそれに、彼女の顔も立ててやって頂ければ」



ずっと狼狽し、申し訳なさそうにしていた、

リリューシャの顔が初めて(ほころ)んだ。


笑顔になると、その美貌が際立つ。

短くまとめた金髪に、透き通った碧眼…

改めて見ると、その美しさは圧倒的だった。


俊さまも微笑み返した。自然な微笑…。

これだけの美女が間近で微笑んでいても全く動じない。

並の男ならみっともなくデレる所だろうに。


鈍さもここまで来ると罪だ。


あ、それどころか

リリューシャの方が頬を染めてしまった。


この女たらし!

ナチュラルボーン・レディキラー!

私を殺してくれないかなァ…。メロメロに。



「ありがとうございます!

 市長」


「それに、ここが一番安全です。

 警備が一番厚いですから」


「はい。お言葉に甘えます」


「ここまでの経路を送らせます。

 お会いするのが楽しみですな」



市長はひとつ咳払いをしてから、

ウインクしながら続けた。



「では、後ほど。

 “俊さま”」



通話終了。



緊急事態の情報共有は自動的に行われる事が多い。

北領(ここ)はもう、

ナミの息がかかった場所だという事か。



「し、市長まで…?

 というか、在地の警察関係者全員?」


「一応、無線の聴取は

 指揮所の担当官だけのはずですが、

 婦警(かのじょ)たちが黙ってるかどうかは…」



市長にまで伝わってるんだから言わずもがな。

リリューシャは(かぶり)を振り、

“ご愁傷さま”と言わんばかりの視線を返してくる。



さっきよりも、もっと頬が熱くなった。

ある意味、殺されたのかなァ、

わたし…。




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