【intermission】急速に進んだ交通革命(イノベーション)
「地域共有型・電気自動車」であるRATの一括生産にあたってはVGによる挙国体制が組まれた。
設計・仕様はVGの母体企業、SHGから出され、協賛する各自動車メーカーがラインを設けて割り当て分を生産する形を取った。
車体・部品は大量発注によるコストダウンが追求され、電気自動車であるにも関わらず初期5ロット、合計20万台の平均コストは同クラスの従来型ガソリン車を約3割下回った。
政府発注分が2年間で約60万台生産されたが、シャーシ共用が許されたので、その後も各社が独自デザインの外装に載せ換えた自家用型を多数生産した。それらはRATに慣れた人々に不要とされ、譲渡する形で吸収されつつある。国内では最終的にRATに一本化されるだろうが、海外の脱・化石燃料車を掲げた国への輸出も新車・中古車とも好調のようである。
商業輸送の多くは品別追跡技術の進歩により、先祖帰りとも言うべき「鉄道・車の遠近棲み分け」が高度に進んで連携輸送化が一般化した。これによって車での長距離輸送が減少すると同時に、車輌自体もVGの一括生産・リース制度により、急速に電化(電気自動車、燃料電池車)が進んだ。
船舶は太陽電池と燃料電池、補機に化石燃料を用いたハイブリッド機関が発達。従来型機関の併用は信頼性を疑った船主向けのもので過渡期らしい措置なのだが、死重である補機と燃料の分は経済性が落ちるから、当然収益性も悪くなる。電動で十分信頼できるとなれば改装されるだろう。だから数年後には船舶の完全電化が実現すると見られている。
航空機の水素燃料化はやや手こずったものの、最近やっと実用化にこぎ着けた。まず政府専用機に採用された事で知名度を高めた国産小型ジェットだが、運用システムともども日進月歩で性能・安全性を高めつつある。
まだ小さな一歩ではあるものの、化石燃料からいち早く脱却したインパクトは強く、次に予定されている中型ジェットの引き合いは海外からも寄せられている。スケールアップした大型旅客機も設計段階とされ、その完成が待たれる。
ほぼ道筋をつけた各交通機関の電化・エコ化は最終的に宇宙太陽光発電所の実現によって完結する。
SHGによる開発加速と予算重点化とが政権発足当初から進められたおかげで、試験初号機「あまてらす零号」は、20X7年現在、既に進宙済みである。
地上側の受電システム「みかがみ零号」も評価試験・運用が進み、安全性の検証さえ済めば実用化できる所まで来ている。
SSPSの実用機が複数稼働されれば、エネルギー資源の乏しさという日本最大の弱点が解消されるばかりか、地球温暖化対策として再生エネルギー化を進める世界的潮流の主導権を握れる。
これはもはや交通機関の変化にとどまらない、エネルギー政策のパラダイムシフトである。もちろん計り知れないビジネスチャンスでもある。
そもそも日本の技術力は世界有数であり、既存の基礎技術も高いレベルにあった。問題は国や企業のガバナンス、もっと言えば経営風土の硬直化にあった。VGの独裁はここに風穴を開けた。
幅広い分野で既に始まっているVGの最適化は、これからも進展するだろう。我が身がどうなるか…不安もあるが、少し楽観して、明るい未来を夢見てもいいのかも知れない。
[月刊『EVolution』増刊、『EVオールカタログ』より]




