“火星14型”の試射、失敗?
某月某日、防衛省・弾道弾対策課
統合司令室。
「“北”の弾道弾が原因不明の墜落?
なぜだ?」
「わかりません。
韓国軍はおろか、米軍ですら実態は掴めてない模様」
「監視態勢だけでなく、
諜報部からの情報もナシか?」
「はい」
「技術的問題や欠陥でもあるのか?
いや。相手の失敗を期待して、
何かの欺瞞だったら目も当てられん」
「さらなる情報収集と対空警戒を厳とせよ!」
「ハッ!」
同時刻。
佐賀県玄海町、玄海原発敷地内。
誰もが脅しと思ってるものの、
立て続けに発射される弾道弾全てが実験だと断言も出来ない。
そこでVGは“北”に最も近い原発であるここに、
万一に備えて迎撃ミサイルを2基展開していた。
現地指揮官・谷三佐は振り向いた。
迎撃ミサイルの一基が低く唸ったような気がしたからだ。
自動警戒モードにセットされた発射機から
ミサイルが発射された形跡はない。
しかし、確かに何かの作動音が聞こえた。
直後に司令部から弾道弾墜落・臨戦態勢解除の連絡が来た。
何かの関連を疑ったが、客観的に見れば
やはり微かな違和感に過ぎない。
「新型長距離レーダーの
動作音がデカいだけかも知れんしな」
独自開発された国産火器管制システム搭載
という触れ込みの「新型レーダー付迎撃ミサイル」は
消費電力が大きく、原発から給電を要するとの説明を受けていた。
これでは野戦展開できないから、
未完成品だと谷は見做していた。
「脅しに張子の虎で対抗…
ってトコか。
まぁ、似合いなのかもな」
「高射隊から返信。
こちらは異状なし。送れッ!」
同時刻。
玄海原発の対岸「風の見える丘公園」
南里雲母は高機動軽装甲車で、
ひとり「最前線」を視察…というか見物に来ていた。
勤め先から珍しく貰えた休暇に、
観光でなく火事場見物みたいな事してるのは、
ひとえに彼女の奇天烈な嗜好ゆえだ。
「傍受してた自衛隊の連絡はいいとして、
問題はコチラ」
パソに表示されたグラフが、
一部急激に跳ね上がっていた。
「ごく短時間…たぶん二秒ほどですけど、
原子炉がフル稼働してますわ」
「そんな情報、ドコから仕入れんの?
きらりん…」
ナミもドン引きだ。
「あの発射失敗、まさか…
“撃墜”なの?」
「そ、そんなハズないっしょ?」
「ナミ、ワザとらしい」
確かに何も目には見えないけれど。
証拠も何もないけれど。
だからこそ、どこからも差し込まれないだろうけれど。
米国ですら。
「だとしたら…
日本の防衛力は世界最高?」
「気のせいっしょ?」
否定の言葉を訝しむように彼女は微笑んだ。
目は笑っていなかった。




