トッシュ、慌てて取って返す④
「畑が…流された。
死んだがマシじゃ」
雨に濡れててもわかる。
気丈な祖母ちゃんが滅多に見せない顔。
祖父ちゃんが死んだ時も、他人には見せなかった。
ボクだけしか知らん顔。
心で泣いてる顔…。すすり泣きだ。
切なくて胸が締めつけられる。
きっと本気。ただ口をついて出た…って事は。
祖母ちゃんの場合。
で、でも…
はい、そうですか…とか言えんやろッ!
「し、死ぬとか言わんでよッッ!
ばぁちゃんッ!」
ずぶ濡れになりながら、抱きしめる。
こっちだって知らず、号泣してた。
「ボク、今、ひきこもりやった時よかマシやけど、
まだまだ一人前には程遠いやん?
教えて貰うこと、なんぼでんあるやん!」
水路から溢れた水がひざを洗う。
このままだと危険。でも、聞いてくれそうも…
その時、祖母ちゃんは横から抱え上げられた。
「隊長?」
「邪魔してすみません。
けど、せめて乗車してくれませんか?
お祖母さまも」
わざわざ降りてきて、ずぶ濡れになりながら乗せてくれた。
迷惑かけてる事はわかってるから、
祖母ちゃんも何も言わなかった。
冠水して通れんトコを避け、急ぎながらも、
コップの水すら零れん優しい運転で避難所を目指す。
さっきまでとは打って変わった走りからは心遣いを感じる。
「ありがとう、
隊長。副長。リリ子も」
みんなが無言で笑みを返してくれる。
心強い。
「祖母ちゃん。
まだまだ死なれちゃ困るかんねッ?」
苦笑いしながら祖母ちゃんが言う。
「まぁ、おちおち死んでもおれんようやなァ…」
「へ?」
今泣いたカラスがもう笑う。
不敵な笑みすら浮かべたそれはもう、
いつもの「がばいばあちゃん」やった。
小指立てて言う。
「この娘さんたち、
誰がお前のコレなんじゃ?」
「は?
ばぁちゃん?」
同乗者たちに向き直ってさらに言う。
「あんたら、
誰がひ孫の顔見せてくれるんじゃ?」
車内の温度が急上昇した気が。
きゃあ!…って、その歓声はナニ?
「ナニ言ってんだ?仕事仲間だよ!
彼女たちに失礼だろ?」
「そうかの?
お前のが失礼な気ィするがの〜?未熟モンが!
ふぅむ、元気な子産めそうなエエ尻しとる」
みんなの尻、なで回すなって!ばぁちゃん!
「ひ孫の顔見るまでは死なんでおいちゃる!
にょほほほ!」
ええい!
心配して損したッ!
九州北部豪雨から台風5号まで、一連の天災。
人損は出なかったものの、
床上・床下の浸水家屋、土砂崩れや道路・インフラへの被害。
そして多くの農地、農作物に被害が出た。
爪痕は決して小さくなかったが、
命さえあればまたやり直せる…そう信じてる。
タッキーの手厚い支援もあるからね。




