トッシュ、被災地へ走る③
「ナギりん、先に被災した奄美の情報来た。
タッキーから」
とナミ。
「内容は?」
「ネズミさんの
被災地救急運用の経過」
「フロントに出して」
はい、高機動軽装甲車のフロントガラス内側、
ほぼ全面に映像が投影されましたっ。
住民活性化交通は、
タッキーとその母体が開発した
AIカーによる地域交通システムで、
スマホで使用時間・行き先を指定・予約して使います。
数台の自律型電気自動車を地域でシェアすることで、
各家庭に自家用車を置く必要がなくなったんです。
便利なんですよぉ!
でも、このせいで一時、
自動車業界全体を巻き込んでちょっとした騒ぎに。
メーカーやディーラーはもちろん、
タクシーやレンタカーまで…お払い箱?
もとい、業界再編の大波に晒されたり?
それももう、普及しちゃった今となっては過去の話。
交通事故の一掃、渋滞の解消、CO2排出量激減など
恩恵しか聞かないですわね。
「白の光点は?」
「ネズミさん。
赤は手動運転可能車だけど、
非常事態が発令された時点で自動モードに変わる。
拒否は許されない」
「歩道の小さいのは?」
「人。
より正確にはスマホ装着者。
オレンジは要支援者で、中学生未満の児童や高齢者」
「片っ端から拾って避難所に送るワケか」
コレだけで、ほとんどの住民が避難できますわね。
「並行して衛星画像の赤外線スキャンとマップ照合で人命検索。
それでダメなら走り回ってるネズミのドラレコ画像と照合。
それでもまだ引っかからないなら空中走査機と
屋内走査機で捜索する」
「走査母機は?」
「奄美の場合は3輌。1輌で16機を常時飛ばせるから、
普通の市なら全域を1時間程度で確認出来るけど…」
「離島が多いから自衛隊との協働になりますわね」
「そう。
その分、貴重な自衛隊の部隊を優先的に回せた」
そこは私の方でも掴んでましたわ。
素晴らしい手際でした。
「避難所には当座の備蓄物資、市職員の他、
機材と共に医師団も移ってもらった」
「救援部隊の増援、支援物資・人員の手配、
資金の確保も?」
「もちろん。
明日には随時着くはず」
「さすがだ…
舌を巻くよ」
他人事でない隊長は、
驚嘆だけでなく涙まで流してますわね。
鬼の目にも涙とはこの事…
あ、俊さま、肩なんか抱いちゃって優し〜!
ファインプレイ!
「あン!?」
ギロッ!
今にも2人に飛びかかりそうなリリーを、
私は逆に睨みつけた。
「邪魔すンな!」…と。
気づいた彼女は、ビクッとして肩をすくめ、
物欲しそうに歯噛みしながら2人を睨んでますわ。
普段強がってるけど隊長もひとりの女、
たまに優しくしてあげないとね。
いい子ね、リリー。
まぁ、そんなに怯えなくて大丈夫。
痛くしないから♡
「この辺で同様の事態が起こったら?」
「同様の態勢で臨むつもりよ?」
「それなら安心だな。
かなり…」
あらあら。
気が抜けた俊さまは、
ほとんど間をおかず寝息を立て始めましたわ。
隊長に寄りかかって、それは気持ち良さげに。
***
その翌日未明、鳥栖の宿。
スマホのコール音に起こされました。
「スマホ?誰でしょ?
自衛隊の彼から?」
「はい、南里です」
「総理、そこに居るのか?」
「元総理なら」
「元総理な。替わってくれ」
気を利かせたナミが、
向こうの音声だけ俊さまのヘッドホンにつなぎ、
こちらの音声はカットした。
昨夜、感激した隊長に抱きすくめられたまま寝ていた俊さまは、
豊かな胸に顔を埋めたままの状態で目覚めたので、
気づいて当然のごとくパニック。
ふっふ、ウブですわね〜。
「お、お、おぱ〜い!?
ハ、ハ、鼻血が」
「そろそろ代わっていい?
ナギりん」
呆れ顔のナミを待たせたまま、
生唾とか鼻血とかモロモロの汁気を飲み込んだ俊さまは、
ようやく平静を取り戻して電話口に。
「ゲホゴホ、
どうしました?三佐」
「台風の進路が逸れたようです」
「どちらに?
え?」




