第陸話 12月19日 其の陸
「、んん、…んんんんん……、ん!」
「静かにしろ!他のやつに見つかる!」
「………………………」
落ち着いたようだ。まあ暴れても無理はないか。用を足していたら知らない男が入ってきて口を塞ぎに来たと。少女は用を足しているところだったので当然下着を下ろしている状態。自然と視線が股に吸い寄せられる。だが今は非常事態なので自制する。セカンドアース内では法律が適用されないそうだから強姦しても罪には問われない。しかし隙を見せ殺されでもしたらその痛みを感じる。刺されるくらいなら我慢する。痛いのは、嫌いだ。
「すまない、いきなり口を塞いで……………しかもトイレ中に………。えっと、逃げたりしたら困るので向こうを向いたりできないんだけど、とりあえず…………その…………下の方をはいてくれない?まともに話ができないから。」
少女は一度コクりと頷き、パンツとズボンをはいた。目には怒りと恥ずかしさが見てとれる。
「えっと、俺は帝。奈落寺 帝。君の名前は?」
「………………………五十嵐 羅優。」
な、なんと!カッコいい!五十の嵐で『いがらし』と読むのも好きだし、そもそも『羅』という漢字はかっこよくて好きだ。六波羅探題とかまじかっこいい。
「…か、カッコいい………。」
「え、なななな 」
みるみるうちに少女--羅優の顔が朱に染まってゆく。ま、まさか声に出ちゃった!?
「ごめん!声に出しちゃった。」
「………………否定は、しないんだ。」
「え、なんて?」
「ん。なんでもない。えっと、帝…………さん?は何歳?」
「18。高校三年。羅優は?」
「 」
また羅優の顔が赤くなっていく。あ、そっか。初対面なのに名前で読んだからだ。
「ごめん、初対面なのにいきなり名前で呼ぶのは失礼だったね。」
「いや、別にいい。」
「あ、じゃあ名前で。」
「……名前で呼ばれても別に嬉しくもなんともないしこの変態のことなんてなんとも思ってないしカッコいいって言われても失礼きわま…………………!!!!!(声に出てた!)」
「ん?なんて?」
「ひ、独り言。私は17。もうすぐ誕生日。」
「え、同い年?どこ高校?」
「笠原女子高。」
「え、笠原?」
笠原女子高。笠原女子高等学校。通称笠女。県内一位か二位の学力を誇ることで有名なお嬢様学校。学費も県内一位か二位を誇る。にしてもうちの近くだったとは………
「帝は?」
あ、同い年だと分かって呼び捨てになった。ま、いっか。
「市立笠原。中学からの内部進学。」
「へー。駅とかですれ違ってるかも。」
たしかに。おっと、少し長引いた。そろそろ本題に移ろう。
「で、本題に入るね?」
「うん。」
「えっと、ここの家に入ろうとしてたのは、ここを拠点にしようと思っていたから。そこでバッタリ出会してしまったわけ。それでなんだけれども、このあとどうする?俺としてはここを拠点にしたい。でも君が使っている。こうして話した以上殺して奪うってのも嫌だ。かわいい子を傷つけるのも嫌だ。」
あれ?なんでまた赤面してるんだろうか?
「それで、どうする?こちらとしては打開案の提示を求めたい。」
「…………………………。なら、協働の契りをすればいい。」
「え、なにそれ?」
「知らない?ルールブックに書いてあったんだけど。契約しているものはお互いに害意をもって危害を加えることはできない。相手を害した場合ゲームオーバーになる。まあ裏切りをなくすための保険?みたいなルール。どうする?」
「いいのか?初対面で。」
「契約しないと殺されるでしょ。私の装備は今は無い。男のあなたには到底叶わない。それにメリットもあるし。」
「メリットって?」
「契約者はお互いどっちかが死ぬともう片方もゲームオーバーになる。だからお互い嫌でも協力する。それにどっちかが死んだ場合、もう片方が死んだ方が受けた痛みを半分受けると死んだ方が生き返るってのもある。半死転生って呼ぶルールらしい。死の半分を受けることで転生する。読んで字のごとく。私は頭は使えても体は役に立たない。だからフォローが必要不可欠。」
「へー。そんなのもあるのか。」
「ルールは一通り読んだ。でも新たに分かるルールもあるらしい。」
「例えば?」
「私が最初にルールを読んだときはコンビニについてのルールは載っていなかった。」
「うん。俺が見たときも無かった。」
「でもここに来て改めて読んだらあった。多分何らかの条件を満たしたのだと思う。」
「あ、ほんとだ。出てる。」
「さて、ここまで情報を提示して協力したのだし、契約のことも考えてもらわないと困る。もし拒否するなら全身全霊であなた--帝を排除する。
「ちょ、先走るな。まだ拒否するなんて一言も言っていないし、拒否するつもりもない。」
「そう。ならいい。」
「どうやって契約するの?」
「スマホの電源をいれたら自分の名前が表示されるでしょ?そこを長押しして。」
「あ、メニューがでてきた。」
「それの契約の項目をタッチ。で、契約相手の名前に私の名前をいれて。」
「うん。……………あ、メールを送信しますか?ってでてきた。」
「YESを選んで。」
ヴ-ヴ-
メールのバイブ。俺のは震えてないから羅優のだろう。
「ほら、見て。私に契約を認証するかの確認が届いた。」
「うん。」
「じゃあ契約するけどいいね?」
「もちろん。」
「じゃあ………。ゴホン。私、五十嵐羅優は奈落寺帝に死ぬまで協力することを誓う。」
「え、そんなの必要なの?」
「ま、漫画にあったのをやってみたかっただけ!いいじゃない別に。ほら、帝もやって。こういうのは形式が大事だって言うし。」
少し、かわいいなと思いました 丸
「えっと、俺、奈落寺帝は五十嵐羅優にこの身が滅びるまで協力することを誓う。」
「あ、ズルい。そっちの方がカッコいい。」
「まあいいじゃん。」
にしてもお嬢様とかでも漫画読むんだな。そのお陰で冷静に行動できているのかもしれないけど。
「じゃあ、右手を握って前に突き出して。」
「こう?」
「そう。」
コツンッ
羅優の右手、そして俺の右手がぶつかる。
「これで契約成立。私のために頑張ってね。」
「はいはい、お嬢様。仰せのままに。」
「 」
「ん?」
「………………………憧れのシチュだったとはいえときめいてないし。うん。キュンとかなってないし。平常心平常心。いつも通りいつも通り。平常運転…………」
「なに?」
「なんでも。」
こうして羅優というツンデレっぽいパートナーができた。
愚痴です…………が少々時差があります。(詳しくは活動報告参照)
えっと今日、10月7日駐車場にGが出ました。Gokiburi Of Chuushajou(ゴキブリ オブ チュウシャジョウ)です。あわてて家から殺虫剤を持ってきました。まじ無理です。
Gの話もおわりましたんで飛ばした人はカムバックしてください。さて、明日はGOM連載一ヶ月目です。できれば0時ぴったりに漆話を出したいです。お楽しみにー。