少年とてるてる坊主。
『クラスメイトは、殺人犯でした。』
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「マジきもいんだけど」
「無理だわー目障りなんだよ」
一般的な教室の端にて。
1人の少年は、同い年の少年らに囲まれている。
囲んでいない同じ空間にいる少年少女は、笑う者、知らん顔をする者、興味を示さず本を読み続ける者など。
それがこの教室にとっての日常である。
蹴られ、殴られ、暴言や水を浴びさせられ。
それでも少年は泣かずに、ここまでやってきたのだ。少年は『泣いたら負け』と思い続けてきて、涙一つクラスメイトに見せた事がなかった。結果、少年は泣く事ができなくなる。感情表現の一つを失った。
今日もまた、傷ができ、痣になる。誰もが知らないふりをしている。大人は知らない。
そんな現状、身体の傷より心の傷が大きくなるばかり。
少年の心は、もう既に死んでいた。
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『居場所なんて、なかったんです。』
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夜になると聞こえる声がある。
それはとても怒りに満ちていた。
少年はイヤフォンを耳につけ、音楽を聴きながら眠る。
その声が発する内容は、少年の学費だった。
少年は公立高校の受験に落ち、私立高校の生徒となった。それが原因だったのだ。
夫婦喧嘩が毎晩毎晩行われる。
少年の弟は、兄である少年を嫌った。
どうしようもない、孤立感が少年を包んだ。
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『腕の傷は、生きてる事を確かめるためのものです。』
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普通なら時計ぐらいしか手首あたりにつけない。だが少年は両の手首が隠れるぐらいのリストバンドをつけていた。半袖の制服から見える色白の腕にある黒いリストバンドは、とても映える。
少年は死にたがっていた。
生きる意味がわからなかった。
だから少年はカッターナイフを手に取った。
そんな物じゃ死ねない事ぐらいは理解してた。
だが少年は繰り返す。
血を見て、自分は生きてる事を。
『まだ死んでなかったのかよ』
そんな言葉を、掻き消すために。
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数時間前。
「あら、上手ねぇ」
優しい母は弟に向けられる。
少年の中で「優しい母」は昔の記憶でしかない。
幼い弟はニコリと笑って、てるてる坊主を並んでみせた。
「明日ね、遠足なんだ!」
今、外は雨が降っている。このまま次の日までいくと場所によっては遠足が無くなる可能性がある。
「晴れるといいわね」
「うん!」
そんな会話を少年は少し、離れた所から見ていた。
「ただいま」何て言わず、部屋に進む。
静かにドアを閉めた。
「てるてる坊主…」
少年は思い出す。幼い自分がてるてる坊主を作っていた姿を。隣にいたのはあの優しい母の姿で。
数分が経ち、弟は習い事の時間になった。
母は弟を車で送るため、2人で家を出て行った。
『期待外れ』の兄は捨て、『これから』の弟に愛が注がれる毎日。
原因は自分だとわかっているが、どうしようもなく壊したくなる。
少年は誰もいない部屋、リビングへ向かった。
窓際にはてるてる坊主が吊るされていた。
雨は止みそうになかった。
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生きてる少年を最後に見たのは、近所の百均の店員となる。
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『これを読んでいるあなたは、今何を思っていますか。やっと邪魔者は消えて、嬉しいんじゃないですか。後悔なんてしてないでしょう。しなくていいです。
クラスメイトは、殺人犯でした。
僕の心の一部を殺しました。一つでも感情が消えた人間なんて、死にかけの人間と同じとは思いませんか?
居場所なんて、なかったんです。
僕がいなかったら温かい日々が続き、お父さんもお母さんも仲よかったし、弟にも、そんな幼い頃から黒い感情を知らずに済んだ。ごめんなさい。
腕の傷は、生きてる事を確かめるためのものです。
邪魔者扱いされても生きたかった。生きたいと思ってしまった。』
『ですが、もう』
『限界です。』
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「てるてる坊主、てる坊主、あーした天気にしておくれー」
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少年は遺書を自分の机に置いた。
鬱らな目で、静かに繰り返す歌はてるてる坊主の歌。
-一体自分の人生とは何だったのかな。
-何のための人生だったのかな。
「明日は晴れるね」
少年の部屋に数滴の雨が入ってきたのは数十秒。
少年の部屋にあるてるてる坊主を母が気付くまで後数時間。
雨の日は嫌いです。
酸性雨混じって汚いし。
てるてる坊主を最後に作ったのいつだっけなーwwwwwwwwwwww
私の中の少年のイメージは黒髪細身のなんとも俺好み!!!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
by.マヨ