鋼鉄の強襲者
作者が「パワードスーツ物書きたいなー」と言って、中々構成が進まないからまずは試作型を投稿した次第。
バトルしか書いてないのでご注意を。
どうか最後までご付き合いを…。
夜が更けたとある国の都市郊外。
そこは荒れ果てた廃墟が立ち並ぶスラム街が存在し、そこには下層の住民が住んでいる。
しかしそこに住んでいた住民の姿は無く、閑散とした空気が流れており、一切の音もない不気味な雰囲気を醸し出していた。
そこに一つの人形が姿を現す。
その人形は人間ではなかった。身長約2.5mの身体は金属特有の光沢を帯びた黒い装甲を全身に纏い、所々開いた装甲の隙間からは黒い筋肉が見え、頭部には赤いモノアイが光を放っていた。背部と脚部に搭載されたブースターが火を噴きながら前に進む為の推進力を生み、その膨大な推進力によってモノアイの赤い光を残しながら地面を滑る様に、尚且つ猛スピードで直進する。
直後、黒い機械人形に追従する様に地面が炸裂する、否、天から降り注いだミサイルが地面を破壊していた。
『ミサイル多数接近。 回避行動推奨』
『チッ…』
上からのミサイル攻撃に機械人形は流れる機械音声に舌打ちし、その機体を右へ左へ蛇行運転をするかのように回避行動をとる。
ミサイルの雨も機械人形の動きに追従する様に降り注ぐが、やがて撃つのを止めたのかぱったりと止む。
ミサイル攻撃が止んだのを見計い、機械人形はブースターを駆使し、その脚部を地面に踏み下ろし、勢いを殺しながら道路に土埃を立て、身体を反転する。
そして、完全に反転し終え体勢を直した時、もう一機の機械人形が暗闇から姿を現す。
そのカーキ色に塗装された機械人形は一目見た姿は黒い人形と同じ機種だが、四肢に大型装甲を取り付け、更に肩や背中に同色のミサイルコンテナが搭載されている。
「逃がさねぇよ、裏切り者が」
そう言いながら胸部の装甲が上にゆっくりと展開していき、そこから人間の胸部から上が姿を現す。
短く刈り上げた金髪に、青い目の男はその顔をあざ笑うように歪ませ、黒い機械人形を睨む。
「よくもわが社のMA部隊を壊滅させてくれたな。 中々見処のある新入社員だと思っていたんだがな…」
その黒い機械人形――MAに向かって恨み節を吐き出し、両手に持つミニガンをそれに向ける。
それでも、黒いMAは一言も発せず、ただ沈黙とその場に立つのみ。
「…結局喋る事も無かったな。 まぁいい…せめてそのまま話す事無く惨めに死んで逝け」
呆れたように、もはや興味を無くした様に男が機械人形に死刑宣告する。直後、ミニガンの引き金を躊躇無く引き、銃弾を放つ。六本の銃身が高速回転しながら放つ大質量の弾丸は一瞬で一直線に飛び、着弾点を喰い破る。それは道路に剥き出しになった地面や廃墟の壁、そして黒いMAを襲い掛かる。
ミニガンから弾が発射される直後に回避行動に入ったMAは再びブースターを起動させ、その勢いで横にある壁に足を掛け、踏み締めて宙に舞う。
「それで逃げたつもりか?」
宙に舞う事で弾を回避したMAだったが、男が纏うカーキ色のMAは弾を吐き出しながらミニガンをMAに向ける。当然、弾は発射元のミニガンに沿う様に射線を変更していき、その射線上にあった物全てを破壊していく。
そして、ミニガンの射線が黒いMAを捕える直後、それの左腕に持っていたアサルトライフルを構え、その薬室とマガジンに装填されていた弾丸を数発吐き出す。その弾丸は空気を切り裂きながら進み、やがて剥き出しの男の生身の身体を襲う。
『うおぉ?!っぶねぇ!』
が、男は咄嗟に展開していた装甲を素早く閉じることによって弾丸を弾き、それでも弾丸の運動エネルギーによって体勢が崩され、ミニガンの銃撃を一旦止めてしまう。
その隙に、未だ宙に滞空していたMAはブースターを噴かして機体を男のMAに向けながら地面に着地し、今度はそのまま再ブーストを行い、男の方に突っ込んでいく。
「―っ!甘いぞルーキーがぁ!!」
しかし、AIの自動制御システムにより体勢を取り戻した男のMAは自身に突っ込んでくる黒いMAと相対するがミニガンを構える事無く、装甲で覆われた巨大な足で大地を踏み締める。
その動作に反応してか肩部と背部に設置されていたコンテナハッチが開き、そこからいくつもの弾頭が頭を出す。
『これで吹き飛べ!』
男の怒声と共にコンテナからミサイルが多数飛び出し、その全てが突っ込んでくるMAを迎え撃つ。人が纏うMA用に設計され、それ故小型だが威力は申し分ない細長い凶器は確実に黒いMAの周辺を捉え、着弾し爆発する。
両端の廃墟の壁が爆風を抑え込み、それによって留まる土煙が確実にMAを呑み込み姿が見えなくなったが、男のカーキ色のMAは弾切れになったミサイルコンテナをパージしながら、再びミニガンを構え、斉射を開始する。
吐き出された弾丸は土煙へと突き進み、そこに存在している愚者を今度こそ破壊する。そう言わんばかりに男はただミニガンの引き金からMAの指を離さなかった。
『……ふぅ。 これでくたばっただろ』
やがて男がMAの指から引き金を放したのは、一分後だった。
黒いMAが居たその空間は土煙に覆われ、辺りの廃墟はミニガンの銃弾とミサイルの衝撃に崩れ、瓦礫と化していた。
『やれやれ…、あのクソ野郎に壊滅されたMA部隊の再編、それに各種弾薬費とMAの修復代。 確実に大赤字になるなこれ…。 また兵士をそこら中からから集めなきゃならんのか』
そうブチブチと愚痴を垂らしながら背部のブースターを噴かそうとする男だったが、その背後から何かが崩れる音がしたと同時に衝撃が走り、腹部に激痛が走る。
何事だと思いながら男は腹部に目を向ける。MAのカメラに映し出されたのは、その身を血とオイルで赤黒く濡らした刃が装甲から突き出ていた。
『――ゴフッ。な?』
口から血を噴き出し、MA頭部内を赤く染まるが、それでも男は何か起こったか理解出来ず、今度は背後にカメラを向け、それで何が原因かはっきりした。
男の背部から刃を突き立てたのは、、装甲のあちこちがひび割れ、一部ミサイルの爆風で融解しているが、それでもその色を強調させるあの黒いMAだった。
そのMAの右腕が装備していたブレードが比較的装甲と人工筋肉が薄い背部に突き立て、男に致命傷を与えていた。
『キ…キサ…マァ…!』
『…終わりだ――死ね』
男は痛みに顔を歪めながらもそのMAを睨みつける。一方のMAは感情が一切感じない声で男に死刑宣告する。直後、突き立てていたブレードを引き抜き、その勢いで男を蹴り飛ばす。
MAのパワーで蹴り飛ばされた男は地面を転がり、痛みを堪えて立ち上がろうとした時に目にしたのは、あの憎いMAがアサルトライフルをこちらに向け、引き金を引いた所だった。
『作戦目標クリア。ミッション終了』
『…了解、この戦域を離脱する』
無機質なAIの音声から告げられる終了の文言。
その黒いMAを纏った者はそのAIと感情が籠って無い声で返答すると、右手に持つ合金製のブレードを肩のハードポイントに取り付けられたハンガーに格納し、ブースターを噴かして、闇夜に消えた。
その場に残ったのは大量の瓦礫と薬莢、頭部、胸部の装甲を砕かれたカーキ色のMAとそれを纏っていた男の死体だけだった。
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