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6.隠された真実

「この証言を語った学生Fさんなのですが、

 この方も同様にDNA鑑定をしたのですが、

 その結果、狼の遺伝子が存在しなかったのです。」

「そうなんですか・・・?」

「はい、他にも証言はいくつか存在しますが、

 人の姿に戻った人たちは、いずれも

 狼の遺伝子を持っていませんでした。」

「では、これは何が原因なんですか?」

「はい、ついさっき研究の結果が出たので

 お話しますと、『ウイルスによる症状』

 であることがわかりました。―」

「―そのウイルスは、基本的な生活をしている

 人たちには何ら影響はないのですが、

 毎日ストレスに晒されていたり、生きる意味も

 なく欲もない人達に感染して症状を引き起こす

 というものです。現在このウイルスの研究が

 行われており、間もなくワクチンが発行される

 予定となっておりますので、それまで

 この病院に待機をしていただきます。」

「・・・わかりました。」


もはや何も言うまい。僕はウルフハンドではなかったのだ。

未知のウイルスに侵されていただけだった。

それだけの話なのだから。

もう何も悩む必要なんてないのだ。


でも何か気に悩むことが僕の頭に残り続けていたのだ。


そう、せめて「ウルフハンド」という症状で落ち着いてくれれば、

この日常から解放されたのかもしれないのだから。


むしろそうであってほしかった自分がここにはいた。

もう会えないことよりも、もう会わないことのほうが幸せなのだろうか。


いや、そんなことはもうどうでもいいんだ。

これで終わったんだ。終わってくれればそれでいい。


それから数日後、例のワクチンがこちらにも届いた。

僕の意志ではなく、医者が勝手に打ち込んだのである。

その時の自分は、何をする意志も持っていなかっため、

されるがままの存在でしかなかったのだ。


虚しさを残したまま退院し、

また普通の生活に戻るのかと思われていた矢先、

またどこかで異変が起きていたのだ。


その夜、外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

ウオオオォォォォン

そう、狼の遠吠えである。

それにこたえるかのように、他のワーウルフたちも

遠吠えを繰り返していた。


自分には関係ないことなのに、常に彼らの存在が

僕の隣にいるかのように感じていた。


そう思ったその時、アパートの廊下を走る音が

鳴り響いた。それも一人ではなく、5人、6人、7人・・・

いや、もっと多いぞ。なんだこの数は・・・。


違和感を覚えた僕は、すぐさまドアを開けて様子を見た。

すると、大勢のワーウルフが廊下を走り抜けていたのだった。


そのうちの1匹がこちらに気づき、こちらへ向かってきた。


まずい、このままでは襲われる!

そう思った僕は、とっさにドアを閉めるが、それよりも早く

ワーウルフが僕の足に噛みついてきた。


牙はまだ靴の中へ到達していないが、

強い力で引っ張られるのも時間の問題だ。


なんとかして振り払おうとするが、

ワーウルフの力は強い。みるみるうちに外へ

引っ張り出されていた。


その時、一つの野太い声の遠吠えが鳴り響いた。


その瞬間、狼の動きがピタリと止まり、

僕から離れて行った。


これは一体・・・。


すると廊下の奥から大きな獣の姿をした人間がこちらに

歩いてきた。


その顔はうっすらとある面影を感じていた。

そう、この顔は、「遺伝子科の関口」・・・!!

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