1.闇の森の魔女の歌
(歌詞)
誰か 助けて…
人さらいのおじさんの あたたかい背中 わたしは夢を見る
誰か 助けて
誰か 助けて
光が見つからない
時すらも忘れてる
闇の森が人の死を、食らう音が聞こえてる
ここには 誰も
誰も いないの
誰か 助けて
近付づく誰かの声
愚かな人の声
魔物の光る赤い目が、嬉しそうに輝いた
ここには 来ないで
お願い だから
願いは届かない
人々がやって来る
醜い心が潰されて、痛みが闇に溶けていく
お前が悪いんだ
わたしは悪くない
人の痛みなんかもう、感じたくはないのに
わたしは泣いている
本当は泣いている
闇の森が人の死を、食らう音が聞こえてる
ここには 来ないで
お願い だから
人さらいのおじさんの やさしい温度 わたしを救って…
もしも、「血迷った?」と、訊かれたら「そうかもしれない」と、僕は答えてしまうかもしれません。
何と言うか、ぶっちゃけ、音楽にはずっと苦手意識がありました。楽器とか歌とか音感だとか。あ、誤解のないように断っておきますが、音楽自体は好きです。ですが、作成側に回るとなると話は別で、小学生の頃から音楽の授業は大嫌いだったのです。
『どうして、無理矢理に音楽をやらせられるのだろう? 音楽なんて、自分が楽しい時に気分でやるものじゃないのか』
なーんて事を思っていたのをよく覚えています。
その僕が、音楽を、まさか自ら作りたいと思うだなんて…
兆候というか何というか、そういうものは確かにありました。CDレンタルのアルバイトを経験した事で以前よりもずっと音楽を身近に感じるようになって(いくらでも好きな曲をかけて良かったので、とにかく、色々と聞きました)、自分で音楽CDを買うようにもなって、そしてカラオケも大好きになりました。音感は相変わらずに自信なかったのですが、“ノリ”で、とにかく歌ってみれば、やっぱり楽しくってですね…。
そうなって来ると、自然に浮かんできたメロディにてきとーに歌詞をつけて、てきとーに歌うくらいはするようになりました。
まぁ、ちょっと恥ずかしいのですが。
ただ、そういうのはすぐ忘れてしまうのが普通で、後でもう一度歌えと言われてももう歌えません。楽譜を付けるどころか、どこが「ド」の音なのかも分からないくらいの無知さだから、楽譜になんか残せるはずもなく、つまりそれは作曲などと呼べる代物じゃありませんでした。
だから音楽作りなんて、まったく考えてはいなかったのです。いえ、正直に告白するのなら、憧れてはいました。
もし作れたなら、素敵だろうな。
(多分僕は、創作が大好きな人なのです)
それに、僕は小説を書くのですが、小説のアイデアで、「“リズム” (またはメロディ)が自分を弾いてくれる楽器や歌詞を探す冒険に出かける」ってなものを考えていて、もし音楽が作れたなら、そういうのを書けるかもしれない、とも思っていました。
しかし、それは夢のまた夢の話だと僕は考えていました。だって、その実力を身に付けるのには、それなりの努力と時間が必要である事は分かり切っているじゃないですか。
だから、
普通に仕事をこなしつつ、他の創作もやりつつ、音楽を作る? 無理だ。
って、感じになっていたのですね。
が、それが変わりました。切っ掛けはネットで偶然に「初音ミク」という単語を見たこと。
ただし、それを見た当初は、まったく興味がありませんでした。ゲームかアニメのキャラか何かだろうと思っていたのです。しかし、それからそれが歌声作成ソフトのキャラだという事を知りました。それで検索をかけてみて、興味を覚えたのです。
ただし、その時の興味に、音楽は関係ありませんでした。僕は社会現象としての「初音ミク」に興味を惹かれたのです。創発現象の一種ではないかと考えたのですね。
主にネットを通じて、人々の間で相互影響が起こり、一つのキャラが形作られていく。そして、それがインターフェースとなって、イラスト作成などの様々な創作活動を繋いでいる(もう少し後で、歌い手、ダンサー、小説など、その影響範囲がもっと多岐に渡ると知って更に面白いと思ったのですが)。
河童や天狗など、人間社会ではキャラを創発する事がありますが、これはそれらと通じる部分はあるにせよ、また別種の創発ではないでしょうか。
それで、何かしら小説の題材にできないかと僕は考え始めました(そのうちに、何か書くかもしれません)。
しかし、その辺りでふと僕は思ったのですね。僕はそれまでほとんど「初音ミク」の曲を聞いた事がない。ぶっちゃけ、どうせアイドル風の曲とか、アニソン風の曲とかばかりなのだろう、と偏見を持っていたからです(基本、ロックが好きなんです)。それで、それを反省して聞いてみる事にしてみました。偏見はいけませんからね。どうせネットで無料で視聴できますし…
で、偏見がぶっ飛びました。
「楽曲の幅がひろーい!!」
少し検索をかけてみたら、パンクロックから、ホラー色の強い作品、シニカルなもの、病的なもの、和風、童話のような雰囲気、どう形容すれば良いのか分からないもの… もう、出るわ、出るわ。しかも、商業作品にはあまりなさそうで、クオリティが高いなんてものも珍しくない。更に追記するのなら、肉声にかなり近い歌声もあれば、機械的な声を敢えて残し、それを活かした曲もあって奥深い。で、
「なるほど。こりゃ、人気出るわ」
と、納得した訳です。
そして、その過程で、まったくの素人でも作っている人がいると知りました。そんな事を知っちゃったら、色気が出てくるじゃないですか。「自分でも作れるかもしれない」と、興奮が抑えられなくなってしまったのです。
ただし。
いきなり「初音ミク」を買うなんて馬鹿な真似はしませんでした。取り敢えず、音楽を自分のパソコンで鳴らす作業をやってみて、それを楽しめたら、考えよう。と、僕はそう決めました。
で、とにかく、フリーの音楽作成ソフトをダウンロードしてみて、無料で公開されている楽譜を打ちこんでみたのです(「Studio ftn Score Editor」って、ソフトです。もちろん、歌声はありません)。
そうしたら、これが楽しかった……。
楽譜なんて、見るのも嫌だったはずなのに!
その過程で、こう音符を並べたら、こう音が鳴る、といった感じで感触を掴んでいきました。慣れてきたら、少しだけアレンジを加えてみたりして…
僕は二週間ほど、その作業をし続け、まだ楽しめている自分を認めると、本格的に音楽作成の為に努力しようと決めました。
が、そこで問題点が二点ほど。
一つは、時間。
僕は小説やなんかの文章も書いているのですが(これ自体がそうだけど)、その為の時間は確保したかった。それほど書くペースを落としたくはなかったのです。
で、時間確保の為に、まずはゲームをやる時間をほぼ完全に消しました。社会人になってからかなり減ってはいましたがねー… ちょっと惜しいけど。くそう、仕事なんてものがこの世に存在していなければ…。
後は、音楽作成の場合、ニュースを見ながら(聞きながら?)でも何とかなると、試してみて分かりました。文章作成と同時でニュースを見るのは僕の場合、無理なのですが、音楽作成ならできるみたいなのです。まぁ、音楽は言葉じゃないから、被らないのでしょうね(あと、ニュースの場合、職場で昼休みなんかに確認してもいるので)。
それと、少し寝る時間を遅くしました(と言うか、つい時を忘れて、作業をしちゃうのですが)。
もう一つは、体調。
具体的には、寝不足と… 腰痛ですね。寝不足は、寝る前に音楽作成やると、楽しくて興奮してしまい(そんなにか!)、なかなか眠れなくなるというのがその主因なので、時間が経てば解決しそうでしたが、腰痛はそうはいきません。
僕の仕事はプログラマで、ただでさえ座りっぱな上に、家に帰ってから文章作成にプラスして音楽作成まで始めてしまったものだから、腰が耐えられなくなったのでしょう。
ただ、これ、今は解決しています。二週間ほど苦しんだ後で、筋力トレーニングの回数を増やしてみたら治りました。
いえ、僕は元々、腰痛防止の為に、筋力トレーニングをしているのですよ。腹筋と背筋。腰痛で酷い目に遭っている人に、何度か巡り逢っていますし。でも、単純に量を増やせば治るようなものなのかな?と思って、試してなかったのですが……、やってみるものですね。
そうして、何とか問題点を乗り越えた僕は、そのうちに、フリーのソフトではなく、有料のソフトを買おうと思い始めました。同時に『初音ミク(それとAppend)』も買ってしまおうと。
本当は年明けてからにしようと思っていたのですが、無理でしたね。興奮が抑えられねー! まるで幼い子供のよー!
そこで僕が選んだのが、『Music Maker MX Producer Edition』というソフトでした(ステマじゃない。ステマじゃないですよー ……そんな話、来るはずないし)。
惹かれたのは自動作曲機能… 選択するだけで素人でも確実に作曲ができるという夢の機能!
「って、それじゃ作曲じゃないじゃん!」
とツッコミを入れはしたのですが、挫折した場合を考えて、チキンな僕は、これを買う事にしました。まぁ、最悪でも作詞はできる訳ですし(鼻歌で勝手に作曲してくれる機能を持つソフトもあるようなのですが、高いので諦めました)。
が、買ってみて愕然としました。
「音符入力じゃない!」
そうです。初めてダウンロードしたソフトが偶々音符入力仕様だった僕は、どんなソフトでもそうだと思い込んでいたのですが、基本的には、パソコンでの音楽作成はMIDIってな規格に基づいて行うものらしいのです(少しは、予感していたのですがねー)。
僕は心の中で叫びました。
「MIDIってなんじゃーい!」
これでは、音符入力で身に付けたノウハウが役に立たない(どうせ、大したもんは身に付けてないのですけども)。そう落ち込みかけましたが、やってみたら案外、無関係でもなくて、安心しました。
と言うか、それ以前に、音符入力ソフトで作成したMIDIファイルを、『Music Maker MX Producer Edition』で利用できるので、何の問題もありませんでした。
これなら、いけそー!
ただ、自動作曲機能は、僕のイメージ通りの曲に全くならなかったので、早々に諦めましたが……
(その他、実は、初音ミクが、上手く連携しないなどなど、ソフト的な色々な問題にぶち当たったのですが、書き切れないので、割愛します)
さて。そんな訳で僕は音楽作成をし始めました。ただ、どんな機能を持っているのかさっぱり分からなかったので、とりあえず、テスト的に色々やってみていたのです。で、僕はアコースティック・ギターが好きなものだから、アコギを選択して、てきとーに入力して遊んでいました。同じ音程の長短長短を繰り返してみたり。
で、そのうちに、偶然、なんだか綺麗な音が鳴りました。
「あ、面白いな」
と、思ってそれを広げてみました。
ベースも追加して、ドラムも追加して、ブランキージェットシティみたい! と悦に入ったりして(全然、違うだろ)。
そのうちに、これに歌詞をつけて一曲目にしちゃおうかなーなんて思い始めました。はい。ぶっちゃけ、『偶然作曲』です。
因みにだから、最初のこの曲の曲名は、『TEST02』という味も素っ気もないものでした。
作曲をしようと思ってから、何かしら自分の書いている小説に結びつけてやろうとは思っていたものですから、悲しい曲調という事もあって、連載中の『闇の森の魔女の話』の一話目の冒頭をイメージした歌詞を付けようと僕は思いました。
はい。だから曲名は『闇の森の魔女の歌』に決定。とっても単純。
何となくこんな感じかな? で、歌詞を考えて、自分で歌ってみます。あまり曲に乗りはしませんでしたが、そもそも歌声を合わせる予定のなかった曲だから仕方ない、と妥協をして、てきとーに決めました(もし、小説の内容と一致していなかったら、飽くまでイメージだと思ってください。すいません)。
まぁ、さっさと「初音ミク」を使ってみたかったのですね。
が、僕は初音ミクを舐めていました。
「なにこれ? ラララ… すら、上手く歌ってくれない!」
曲さえできれば、どうとでもなると思っていたんですが、どうにもなりませんでした。人間が歌えるのなら初音ミクも歌えるだろう。そんな風に簡単に考えていた僕は、思いっきり反省しました。歌なしでも良いかな?と思いかけましたが、なんとかふんばって、工夫してみることにしました。歌詞を歌い易いものに修正。各音声ライブラリの特性をなんとなく掴んで、この部分はこいつにして、ここはこいつ。って感じで、パートを分けをしてみたりします。
やってみて分かったのは、ライブラリに合った曲や歌詞なら、それほど苦労せずに歌ってくれるという事。
歌声のライブラリが複数ある初音ミク(Append)を選んで正解、と僕は思ったりしましたが(作った曲が無駄になるところでした)。
その後も、色々と試行錯誤を繰り返し、何とかそれなりに初音ミクが歌ってくれるようになりました。正直、自信はまったくないのですが。
ええ、はっきり言って、ネットに投稿している方々がいかに凄いかを実感しましたよ。難しかった…
もっと上手くなりてー!
後はPV作りですね。
僕は下手ですが、お絵描きもするので、たくさん木の絵を描いて、そこに歌詞を載せていきました(木の絵は、いつも描いているのとそんなに変わらないなぁ…)。
あ、PV作成には『Music Maker MX Producer Edition』の機能を使いましたが、どうもタイトルだけで歌詞を載せる機能がないっぽい(僕が見つけられてないだけ?)ので、『WinShot』でキャプチャーを取ってエクセルに張り付け、エクセル上で歌詞を付けてから、再度キャプチャーを取って画像ファイルとして保存、PVに利用、という変な事をして作りました。
……もっと、上手い方法がありそうだ。
どーでも良い話ですが、PVとしてはあまりにしょぼいので、これ、電子紙芝居と名付けてみました。
この作業、思ったよりも時間がかかりました。いえ、本当は、もっと手を抜くつもりだったのですが、お絵描きが楽しくて、つい… お絵描きも好きなのですねー…
まぁ、長い休みでもなければ、作成は無理だと思うので、今度からはもっと手を抜いたものになると思います。
今回は結果として、曲を全て作ってから歌詞を考え、初音ミクに歌ってもらう、という流れになってしまったので、次回は違うプロセスで曲調も変えていきたいと思っています。初音ミクの方が、制約が多そうなので、できるだけなら歌ってもらってから、曲を作った方が良いかも、とか考えているのですが、上手くいくかどうかは分かりません。
いつになるかは分かりませんが、では、また次回~
で、投稿したのが↓です。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19741918