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恐怖の味噌汁

作者: 辻 卜伝

佐藤芳江さとうよしえ 38歳

3年前にトラック運転手の

夫を事故で亡くし

高校1年の息子 准一じゅんいち

板橋区の団地で2人暮らし


准一も非行に走ることもなく

素直ないい子に育ってくれた


佐藤家は会話と笑いがある

つつましい生活ながらも

幸せな家庭だった。


芳江は毎日スーパーでレジ打ちの

パートをし生計を立てていたが

パートの薄給では どうしても

家計は厳しいものであった


その事をわかっていた准一も

中学を卒業したら働こうと思っていた


しかし

「高校位、卒業しておきなさい。

お金の事は、心配しなくて良いから!」と

高校に通わせてもらい

准一は芳江に感謝していた


芳江もまた准一には感謝していた

恋愛や部活・友達と遊びたい

年頃だろうに、その気持ちを抑え

厳しい家計の足しになるようにと

自分から進んで

朝夕の新聞配達

夜はコンビニでアルバイトと

毎日、家庭のために働いてくれている

息子が誇らしかった。


働いたお金は全部家に

入れてくれて

毎日文句1つ言わず働き

出された料理も美味しいと

言って食べてくれて

お小遣いが欲しいなんて

言ったこともない

准一に今度給料が入ったら

何か美味しい物を

ご馳走してあげようと

芳江は考えていた。


ある日 団地の306号室

芳江はパートの仕事を終え

自宅で晩ごはんの準備をしていた


いつもなら、もう帰ってくる

時間なのに、まだ准一が帰って来ない


晩ごはんの料理はすでに出来上がっていた


「どうしたのかな

残業かしら?」

少し不安になってきた

携帯電話に電話してみるが、でない・・・


それから、1時間・・・


携帯電話には、やはりでない

芳江は心配になり

探しに行こうとする


すると

誰かが階段を登ってくる

音が聞こえる・・・


「准一かしら?

それとも・・・」


足音は芳江の部屋の前で止まる

そして玄関のチャイムが鳴る・・・


扉を開けると、そこには准一が立っていた


今日は残業で

携帯電話はバッテリーが

無くなっていたらしい


准一は、かなり疲れ

空腹だったらしく

リビングの椅子に

倒れこむように座ると

「お母さん、今日の晩ごはん何?」

と聞く。


芳江は

「今日、の味噌汁と筑前煮よ!」


今日麸の味噌汁

きょうふのみそしる

恐怖の味噌汁


・・・・・・・

・・・・・・

・・・・


准一は、ふとあることに気付く

いつもなら帰ってくれば

飛び付いてくる

可愛がっていた

猫の「タマ」が居ない・・・


准一は味噌汁を食べながら聞いた

「タマはどっか行ったの?」


芳江はギョロリと目をむき

准一をにらんで言った

「味噌汁の中だよ!!!」


・・・・・・・・・



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