10年ぶりの温かいカレー
この話を読む前に【モザイク世界の下で】、【肉食世界の下で】、【よつき の たのしい にっき!】、【Fleisch im Käfig】を先に見ることを推奨します。
謎の肉生生物が世界を侵食して65日目、
キリシマら兵士達が拠点としている火山地帯コミュニティ・平らに整備された溶岩石が広がる高所にて…
キリシマ「総員、整列。」
「「「「は!」」」」
カワセ「今日は我らの同盟先である客人が一人来る。大変失礼の無いよう敬意を込めて対応するように。」
「「はい!」」
「「了解!」」
トビ「はい!」
ツグミ「了解。」
集まった兵士達が前方に立つ兵士長のキリシマと隊長のカワセの一言で綺麗に整列し、彼らの目先は空へと見上げるよう真っ直ぐに見つめる。
トビ「(此処に来るまでかなりの距離があるというのに。もうここまで来てる…。)」
トビ「(凄いや…。もう人智を超えてる…。)」
その見つめる先から猛スピードで雲を切るように飛んで来る一人の男。
右片手に背負うように持っているサンタみたいな大きな袋と、微笑を浮かべながら着ているダークブルーのロングコートの二つに別れた裾部分が翼のように広がるように風で靡く。
「(来た…。到着予定時刻よりも早い…。)」
「(トビ。ツグミ。この人が例の?)」
トビ「(ああ。)」
ツグミ「(キリシマ兵士長とカワセ隊長が言う【10年ぶりの恩人】の人よ。)」
「「「…。」」」
そして手招きするキリシマの下へゆっくりと降下し、綺麗に整列していたトビ含む兵士達は地上へ降りた男へと敬意を込めた綺麗なポーズを取った。
それを見た男…ニジは、
ニジ「あーららー。律儀に挨拶しちゃって。ま、これもちゃんとした教育か。」
ニジ「でもあまり厳し過ぎない程度にな?キリシマ?」
キリシマ「善処する。」
カワセ「はいはい。でも規律はしっかりと身に着けないといけないよ。」
カワセ「コミュニティ内の鍛錬、教育、治安維持にも繋がるから。」
ニジ「あらそう。」
軽く微笑を交えて前に出ているキリシマへと頭を下げ、キリシマとカワセは頭を下げているキリシマへ兵士達と同じ敬意を表するポーズを取った。
後、
ニジ「さて。約束された通りの物を持ってきた。採りたてだからなるはやで。」
キリシマ「ああ。お前ら、荷車を用意しろ。」
キリシマ「鮮度ある魚と岩塩、粉末状にした胡椒だ。食糧保管庫へ運べ。一つも落とすなよ?」
「「「はい!」」」
ニジが片手に背負うよう持っていた食糧入りの袋を置き、急ぎ兵士が引いてきた荷車へと兵士数人が掛け声合わせて荷台へと持ち載せる。
トビ「おおお。魚だ!つかどれもデカい!?」
ツグミ「岩塩もいくつか入ってる。綺麗に磨いた宝石みたい…。」
「こっちじゃ1週間遠方の遠征しないと魚介類あまり取れないしな。」
「本当にありがたい。」
「粉末状にした胡椒も…。ありがとうございます。」
ニジ「いいえ。」
袋の中身…小分けされたいくつかの袋内の食糧を目にした兵士達は思わずおおっと声を上げ、キリシマとカワセの二人に火山地帯コミュニティ内へ案内されるニジへと兵士達は感謝を込めて頭を下げつつ敬意のポーズを取った。
火山地帯コミュニティ内へと入ったニジと案内するキリシマとカワセは、
カワセ「地上は完全に上空から襲来した肉食種によって完全に変化してしまった。」
カワセ「私たちが住んでいた故郷も、見慣れた都市も。一人一人大切にしてきた思い出も。その全てが奴らに食い尽くされた。」
カワセ「それでも嘗ての日常へ少しでも戻りたい願いが多数あるからこそ、極力寄せるように私たちの闘眼の力を持って創造した。」
火山内にある洞穴の階段を一歩一歩降り、やがて開けた明るい世界が広大に現れる。
カワセ「これが私たちが住む居住地帯。ちょっとした地下都市だ。」
ニジ「おお。スゴ。これ全部岩じゃん。火山内だからてっきり熱いかと思ったけど…」
好き勝手に食い尽くされる前に見た巨大な人工物の都市。
それに似せるよう硬い岩石で作られた巨大な都市があり、そこで常に明るくランタンと電灯みたいな光で灯されるよう大地の地下都市が夜景の如く綺麗に輝く中で、コミュニティ内の人々と兵士達が穏やかに暮らしている様子を目にする。
キリシマ「リーダー・ヤマトの大地の力で気温、湿度諸共細かく調整してる。街が明るいのは俺の雷の力とコイツの磁力で設計した最低限のライフラインが行き渡っているからだ。」
キリシマ「常に適温で過ごしやすく、俺たちが開拓した大地の水流と自然でいくつかできる温泉で身も心も安らげる。」
キリシマ「ヤマトの操作で常に火山の噴火タイミング、溶岩の軌道を自在に変えれるから奴らは近付けない。いや、一歩も近付けないように常に百熱の壁を囲っている。」
ニジ「おお、パネェな。」
カワセ「パナいだろー?ニジー?いひひひひ!!」
彼らの闘眼の力で創造した地下都市を聞きながら三人は都市部へと踏み入れ、活気溢れるように賑わう街並みを歩みながら…
カワセ「さて、ひとまずはニジに見せたい店があるんだ。そこの。」
ニジ「!あれは…。」
足を止めたカワセがとある看板へと指を指す。
その指した看板を目にしたニジは一瞬目を大きく開けて、
キリシマ「覚えているか?ニジ?あの看板、見覚えありまくりだろ?」
キリシマ「俺とカワセがまだガキだった頃、何度も飯と寝床の世話になった優しい店主の店だ。」
キリシマ「奴らから避難する際に、大切な看板だけでも持っていったと。」
ニジ「…。」
雲の形をした看板で色褪せているものの、その店名に【ナガレ食堂】をニジは目にした。
ニジは静かに口先を僅かばかりと吊り上げて、
ニジ「そっか。あのお爺さん、生きてたんだ。無事で良かった。」
カワセ「ニジ、カレー食べようぜ?おんじいが作るバリうまカレーを。」
キリシマ「ヤマトからお前の非日常になる前のガチサバな生活を聞いた。まともな飯、食ってねぇだろ?」
キリシマ「だからこそまともな飯をお前に食わせる。いいな?」
ニジ「あらら。俺個人の事ムラクモさんが言っちゃったんだ。ははは。まぁいいや。」
ニジ「じゃ。言葉に甘えて。」
詰め寄るキリシマとカワセに、ニジは軽く苦笑するよう返事した。
「久しいね。君が生きてて嬉しいよ。ニジ君。本当にお世話になった。」
「材料は変わったが、味は変わりないよ。さぁお食べ。自慢のカレーだ。」
ニジ「うん!いただきまーす。」
後、店内に入ったニジはカワセとキリシマに挟まれる形で高齢の男が作った人参とじゃがいも、玉ねぎ、ブロッコリーがゴロゴロと入った温かいカレーをニジへと出し、ニジは久々の10年ぶりのカレーを口にする。
その味の感想は、
ニジ「うん!美味しい!!10年ぶりのカレーだー!!で、キリシマ?」
キリシマ「なんだ?」
ニジ「人参、避けてますよ?人参嫌い変わってないなー!」
キリシマ「…人参はウサギが食う食べ物だ。これは後でウサギにー」
カワセ「ウサギいませんよー!?キリシマ兵士長ーー!!!?もうハタチ過ぎてる大人なんだから残さず食えーーー!!」
キリシマ「テメェこそブロッコリーを弾くな。そのデケェ大口に俺の人参諸共突っ込ませるぞ?」
ニジ「んまー。君ら野菜嫌いの変わってねェじゃん。」
「あははは。(これから人参は薄切で、銀杏切りしようかな。ブロッコリーは芯を除いて…うんうん。)」
シャキシャキ感があるちょっと辛味な優しい味。
その味と変わらない野菜嫌いの彼らを横目にしながら、ニジは10年ぶりに再会した高齢の店主が作ったカレーを綺麗に完食していった。
終




