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相棒が現代の乗り物に変形できる【万乗ビークル】でした!~剣と魔法の異世界で、今日は何に乗ってどこへ行く?~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第8話 配達


「こんにちは~。トリアルの街のミセンさんからヨイマルさんへお荷物です。こちらが商業ギルドカードになります」


「おお、ありがとよ。ちょっと待っていてくれ」


 村には木の柵があり、入り口にはひとりの見張りの人がいたので、その人に商業ギルドカードを見せ、怪しい者ではないことを証明する。それほど大きくはない村で、特に俺のことを警戒することなく、ヨイマルさんを呼びにいってくれた。


 柵の外から見る村はとてものどかな雰囲気で、井戸の周りでは子供たちが走り回って遊んでいた。木でできた藁ぶき屋根の家々の奥には畑があるようで、多くの人がそっちで動いているのが見える。


 すぐに50代くらいの男性であるヨイマルさんがやってきたので、依頼人であるミセンさんから預かっていた荷物をリュックから取り出して渡し、依頼書にサインをしてもらった。これでこのサインを商業ギルドへ持っていけば、報酬がもらえる仕組みだ。


「いやあ、助かったよ。辺鄙な場所にある村だから、あまり依頼を受けてくれる人がいなくてね。大したものはないが、お茶でもいかがかな?」


「ありがとうございます。とても嬉しいお誘いですが、今日は先を急ぎますので」


 今は昼過ぎで日が暮れる前に街まで戻りたい。さすがに夜に走るのは危険だからな。


 村の中での生活も気になるが、今後は同じような依頼を受けるつもりなので、時間のありそうな時に見学させてもらうとしよう。今日は商業ギルドに登録をしてから依頼を受け、必要な物を購入して街を出たから遅くなってしまった。


「それは残念。それじゃあ、村で採れた野菜でも持っていってくだされ」


「うわっ、ありがとうございます。遠慮なくいただきます」


 そう言いながらヨイマルさんは緑色とオレンジ色の楕円形の野菜を2つずつくれたので、ありがたくいただいて軽くなったリュックの中にそれを入れる。


 嬉しいご褒美もありつつ、ナシノム村をあとにした。




「うおっ、みずみずしくてうまいぞ! こっちの緑色のはキュウリっぽくて、こっちのオレンジのは酸味もあってトマトみたいな味だ」


『よかったですね、マスター』


 少し離れたところでノアに変形してもらうため、歩きながら村から離れている。その際に早速いただいた野菜を食べてみたのだが、とてもうまかった。採れたての野菜だからか、異世界の野菜だからかわからないけれど、とにかくうまい。


 お昼に食べた携帯食料が固いパンと匂いのきつい干し肉だったから、余計にそう感じるのかもしれない。こちらの世界の旅人はあんな携帯食料を食べているのかと思うと少しだけ憂鬱だ。ノアの変形リストにあったキッチンカーとかでうまいご飯が作れればいいのだが……。


 それにしても単なる荷物運びだけれど、ヨイマルさんはとても喜んでくれていて、なんだか俺まで嬉しくなってしまった。思いがけないご褒美もあったし、この仕事も案外悪くないかもしれない。確かに報酬は金貨2枚とそれほど高くなく、街からは往復で1日がかりの依頼になるから、受けてくれる人が少ないのだろう。


 原付があれば半日で往復できる距離だし、ポイントも稼げて一石二鳥だ。しばらくはこういった依頼を受けて、お金とポイントを稼ぎつつ、商業ギルドの実績を積んでいくとしよう。さて、あとは街まで戻れば初めての依頼が達成だ。


「それじゃあ、帰りは少し道を外れて街まで戻ろうか。どれくらいで同じ道を走ったことになるのか検証もしてみたい」


『承知しました』


 原付のおかげで帰りは行きよりも楽に戻ることができる。日が暮れるまでまだ余裕があるし、いろいろと検証をして帰ることにしよう。




「……なるほど。大体以前通った道から50メートルほど離れないと新しい道とは認識されないみたいだな」


『そのようですね』


 行きに通って来た道から少しずつずれながら1キロメートルほど走ってポイントの増減を確認する。どうやら約50メートルほど離れて進めば違う道と判断されるようだ。


 ノアも自分の能力のことだが、細かいことまでは知らないらしい。


「あともうひとつ分かったことだけれど、新しい変形先を取得すると乗り物の選択肢が増えていくみたいだ」


『はい。【原付】を解放した際に増えたことは間違いないようです』


 改めて原付の次はどの乗り物を解放するか変形先リストを確認したところ、新たに選択肢が増えていた。これが初めて変形先を解放したからか、原付を取得したというどちらの理由かはわからないが、少なくともどんどん距離を走ってポイントで変形先を解放すれば新たな乗り物が増えていくようだ。


 やはりこの能力は少しずつ成長していくようだ。


『警告、魔物です! マスター、ハンドルを切ります。しっかりと掴まっていてください!』


「えっ!? うわっ!」


 いきなりノアが今までで一番大きな声を出したと思ったら、急に原付のハンドルが曲がった。


 あまりの出来事に驚いたが、ノアの警告通りハンドルをしっかりと握り、原付から転げ落ちないように身体全体を原付側に傾けた。


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