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相棒が現代の乗り物に変形できる【万乗ビークル】でした!~剣と魔法の異世界で、今日は何に乗ってどこへ行く?~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第7話 原付


「ノア、早速変形を頼む」


『はい、承知しました』


 外見上は特に変わらずマウンテンバイクのままだが、ポイントを消費して新しい乗り物に変形できるようになったらしい。


 俺がそう頼むと、ノアが光り輝いて形を変えていく。マウンテンバイクからさらに大きくなり、横の幅も広がっていった。


『完了しました。こちらが【原付】となります』


「おっと、こいつはスーパーカブじゃないか!」


『? 有名な種類の乗り物なのですか?』


「ああ。俺の世界では一番有名な原付かもしれないぞ。車体価格も安いうえに軽くて低燃費で耐久性もあるから俺の国だけでなく世界中で大ヒットした原付なんだ」


 メタリックなブルーとホワイトのボディーにシンプルなシートとミラー。日本だけでなく多くの国に輸出されている原付である。


 なぜ俺がそんなことに詳しいかというと、このスーパーカブに乗って日本一周をする旅人の動画を見ていたからだ。このスーパーカブという原付は燃費が非常にいいため、旅人にも人気があるらしい。カブを愛する人をカブダーとも呼ぶようだ。


 まあ、簡単に言うと原付の中でも歴史と人気があって愛されている原付と思ってくれればいい。


「原付に乗るのは初めてだ。俺に運転できるかな?」


 今更ながら俺は普通免許を持ってはいるが、車を持っていないし、ほとんど運転をしたことがない。


 旅行をした時に稀にレンタカーを借りるくらいだから、免許も無事故無違反のゴールドである。


『私がサポートするので大丈夫です。ハンドルやブレーキもこちらで操作が可能です』


「助かるよ。緊急時は頼む」


 そういえばいろんな乗り物に乗れる能力だけれど、運転の仕方なんてさっぱりなものばかりだ。ノアが操作もしてくれるのならありがたい。


『まずはエンジンを入れますので、ブレーキレバーを握りながら、サイドスタンドを元に戻してください』


「え~と、レバーを握りながらスタンドを戻してと……」


 普通はキーを回してエンジンを入れるのだが、キーはないようだ。ノア自身がキー代わりなのかもしれない。


『右手親指でハンドル右側にあるセルボタンを押してください』


「セルボタン? ああ、これか」


 右ハンドルのちょうど親指を置く部分にボタンがあった。なるほど、カブにはこんなものがついているのだな。


『次はシフトチェンジです。左足のシフトペダルを前に踏み込むとギアを1速に上げることができます。後ろに踏み込むとギアを下げることができます』


 なるほど、車のようにギアを上げていくのだな。


『ブレーキレバーを緩めながら、アクセルをひねってください。くれぐれもゆっくりとお願いします』


「わ、わかった」


 ノアに言われた通り、レバーを緩めつつゆっくりとアクセルを回す。すると原付が進み始めた。


「おおっ、動いた!」


『その調子です。ブレーキをかける時はアクセルを放しながら、ゆっくりと同時にブレーキレバーを握ってください』


「ええ~と、アクセルを放して同時に握る……。うん、ちゃんと止まったぞ!」


『お上手です、マスター』


 ノアのおかげでもあるが、思ったよりも簡単に運転ができた。確かにこれなら普通免許を持っていれば運転できるわけだ。


「いやあ~自分で漕がなくても進むって最高だな!」


 今までのマウンテンバイクと違って、アクセルをひねるだけで勝手に前に進んでいく。それに走るだけで風がひんやりと涼しい。


 やはりエンジンは最高だぜ!


「そういえばこの原付は一日にどれくらい走れるんだ?」


『こちらの原付は1日に50キロメートルまで走ることが可能です。他の乗り物よりも長い距離を走れることがこの乗り物の能力ですね』


「50キロも走れるのか!?」


 多くても20~30キロメートルくらいだと思っていたのだが、そんなに走ることができるらしい。そしてノアはそれぞれの乗り物に特別な能力が付与していると言っていたが、乗り物を解放するとノアにはその能力がわかるようだ。


 もしかするとこのスーパーカブは燃費がいいから、それが影響しているのかもしれないな。


 早くも自転車から解放されたのは嬉しいが、次に取りたい車系は最低でも150ポイント以上が必要となる。しばらくはこの原付でポイントとお金を稼がないと。




「おっ、村が見えてきたぞ」


『あれがナシノム村で間違いないです』


 原付で走ること10分。


 無事に村へと到着した。遠くからだが、気の柵が見えた。ノアから降りていつもの姿に戻ってもらい、歩いて村まで進んでいく。


 異世界で初めての村か。はたしてどんな人たちが暮らしているのだろう?


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