第18話 営業開始
ソースやケチャップなどの調味料だが、昨日の夜に混ぜ合わせて3つのソースを作って冷蔵庫に保存しておき、少なくなった調味料は元あった棚に入れておいたところ、朝になるとそれぞれが満タン勝手に補給されていた。
他にも給水タンクにあった水や燃料も少し補給されている。本当にこのキッチンカーは便利だ。頑張って走って200ポイントを貯めた甲斐があったというものだ。
「それにこちらのイモは外側がカリッとしているのに中はホクホクしていておいしいですね」
「それはフライドポテトといって、熱した油にイモを浸すとそういう味になるんですよ」
「へえ~そんな料理があるのですね」
トリアルの街やこのニフランの街では揚げ物料理自体を見かけなかった。このご夫婦の反応からも察するに、もしかするとまだこういった料理は普及していないのかもしれない。
カットしたイモに少しだけ薄力粉をまぶして熱した油に数分間浸して、仕上げに塩を振りかければ完成だ。俺の記憶によれば薄力粉をまぶした方が外側がカリッと揚がってくれるくれるんだよなあ。
「いやあ~本当においしかったです。どちらもおいしかったですが、私はこちらのソースが一番好きでしたね」
「ご馳走さまでした。私はこっちが一番でこちらが二番でした」
「なるほど、とても参考になります」
旦那さんはソースマヨ、奥さんはソースケチャップが一番のお気に入りのようだ。ふ~む二番はお互い逆のソースだし、こちらの世界ではソース入りの方が受けるのか。
個人的にはケチャップとマヨのオーロラソースも好きなのだが、どちらかというとソースを加えた方が味は濃くなるから、塩味に慣れている人たちにとってはこちらの方が好きなのかもしれない。
「こちらのスープも温かくてとてもおいしかったです。本当にご馳走さまでした」
「いえ、ソウタさんの料理に比べたら本当に家庭料理ですよ!」
「ええ、少し恥ずかしいくらいです!」
「そんなことないですよ。温かくて野菜の甘味が溶けだしていて、本当にとてもおいしかったです」
ご夫婦の屋台で販売するのは野菜のスープだった。かぼちゃのような甘みのある野菜がベースとなり、他の野菜の甘みにミルクのほんのりとした甘みが加わり、とても優しくておいしかった。やはり野菜は元の世界よりもおいしい気がする。
特に俺はこの国の者ではないので、こういったその土地特有の家庭料理が余計においしく感じたのかもしれない。本当に美味しかったのであとで改めて購入させてもらうとしよう。
2人のおかげでこちらの世界でもハンバーガーの売れそうな自信が付いた。ここで反応が微妙だったら少し値段を下げるか考えるつもりだったけれど、予定通り少し強気の値段設定で問題なさそうである。ご夫婦には感謝だな。
「兄ちゃん、今度はソーマヨの方を頼むぜ」
「はい、ありがとうございます。少々お待ちください」
「お兄さん、お皿をこっちに置いておくよ」
「ありがとうございます。あっ、お皿台を返さないと!」
準備を終え、キッチンカーの営業が始まった。最初はあまり人が来なかったのだが、お昼を過ぎたくらいから屋台街に人が集まってきて、ちらほらと屋台街の角の方にあるこちらの方まで人が来始める。
こちらに来たお客さんはまずキッチンカーに驚き、看板のハンバーガーという初めて聞く料理名を見て俺にどんな料理か聞いて、注文をしてくれる人もいればそのまま去っていく人もいた。
そのあとは試食してもらったご夫婦と同じようにどのお客も満足してくれたのはありがたい。そんな感じでちらほらと増え始めたお客さんなのだが、そこからありがたいことに知り合いを呼んでくれたり、テーブルでハンバーガーを食べている人の様子を見て屋台に並んでくれるお客さんが増えてきた。
SNSとかのないこの異世界で初日からこれだけのお客さんが並んでくれるのはすごい事ではないだろうか。もしかするとSNSなどがないから逆に噂とか行列とかには敏感なのかもしれない。ありがたいことに今のお客さんのように一度ハンバーガーを食べたあとに別のソースの味を頼むために並んでくれるお客さんまでいる。
「ええ~と、こちらソースマヨ味です。こっちはお皿の返却台の銀貨1枚になります」
「ああ、ありがとよ」
「ご馳走さま、とってもおいしかったからまた来るよ」
「ありがとうございました」
問題は俺が対応できていないことだ。
昨日の夜からだいぶ準備を進めていて、いろいろとシミュレーションをしていたのだが、実際にやってみると全然違う。料理をしながら注文を受け、戻ってきた食器を洗ったりとやる事が多すぎる。
『マスター、そろそろハンバーグが焦げてしまいそうです!』
「あっ、やべ!」
ノアに言われて急いでパティをひっくり返す。こんな感じでノアの声は俺以外には聞こえていないので、声でサポートをしてもらっている。
待たせているお客さんがいるのに頭が真っ白になってしまう。明らかに人手が足りていない。とはいえ泣き言などを言っている暇はないので、ひたすら身体を動かしていく。
このままいくと夕方になるまでにパンかパティかソースのどれかの食材が切れて売り切れになりそうである。




