第14話 キッチンカー
「すごい! ノア、このキッチンカーの能力はこの調理器具か?」
早速キッチンカーの後ろから車内へと入る。どうやら前のドライバー席に窓はあるが後ろへは入れないようだ。
車内はそれほど広くないが、コンロや寸胴、包丁などがあった。元の世界の調理器具がこの異世界でも使えるのはとてもありがたい。
『そちらのコンロなどを使用できるのも能力のひとつですが、棚に入っている香辛料や調味料と水を毎日一定量使用できることが主な能力のようです』
「えっ、香辛料と調味料!?」
車体全体から聞こえるノアの声に驚きつつ、キッチンの上についている戸棚を開けた。
「うおおおお! 醤油に味噌、塩コショウ、焼き肉のタレ、ソース! すごい、俺の世界のものが揃っているじゃないか!」
戸棚の中には元の世界でよく見ていた香辛料や調味料が揃っていた。
『とても驚いておりますが、それほどすごいものなのですか?』
「ああ。少なくとも日本人にとっては何よりもありがたい物かもしれない。なるほど、キッチンカーはそのまま料理を作るための能力なんだな」
さっきノアが言っていたようにある意味では料理をおいしくする能力であっている。これだけの調理器具や調味料などがあればこの異世界での料理をさらにおいしくできる。
なんで俺がこれほど感動しているかというと、海外に1週間くらい旅行していた時と同じで、醤油や出汁の味がとてつもなく恋しくなるのだ。その時はまだいろんな料理があるからいいが、この世界だと塩味ばかりだからなおのこときつかった……。
『ただ、調理道具や調味料などはこのキッチンカーからは持ち出せないようですね。この車内で調理した料理などは持ち出せるようです』
「なるほど。多少の制限はあるみたいだな。……持ち出そうとするとどうなるんだろう?」
『元々あった戸棚に自動で戻るようです』
「へえ~どれどれ……おおっ、本当だ!」
どうやら罰則みたいなのはないみたいなので実際にやってみたところ、俺の世界では定番である青い蓋の塩を手にしながらキッチンカーから出ると、出た瞬間に俺の手元から塩が消えた。すぐに車内の戸棚を開けると、ノアの言っていた通り、塩が元の位置に戻っていた。
『それとこのキッチンカーの走行距離は1日10キロメートルとなります』
「やっぱりそっちの方は思ったよりも少ないな。だけどそれでも十分だ」
原付は50キロメートル走れるから、その半分くらい走れたらラッキーと思っていたが、たった10キロか。ただそれでもこのキッチンカーは今の俺にとても価値がある。
「冷蔵庫は使えるの?」
『はい。原付と同じで私が変形している状態でも冷やした状態で保存しておけるようです』
「すごいな。これで荷物問題まで解決するぞ!」
このキッチンカーの広さに物を入れられるのなら、持ち物問題も解決しそうだ。冷蔵庫を使えるのなら食材も保存できる。
「うん、できることがだいぶ広がるぞ。それにまた新しい変形先も選べるようになったことだし、街に着いたら作戦会議だな」
『はい、マスター』
キッチンカーを解放したことでいろいろと考えることが増えた。今後が楽しみになってきたな。
「さて、それじゃあ街の手前まではキッチンカーで進むか。オートマなのは助かるな」
目的の街まではもう少しある。たぶん原付と同じで多少路面が悪くても走れると思うが、車の乗り心地も確認しておこう。
シートベルトを締める。原付と同じでキーはなく、ノアがエンジンを入れてくれた。鍵がないから盗難の心配もなくていいのは助かる。
「おっ、いい感じだ。異世界の道を車で走るのもいいな」
『こちらの方が安全でいいですね』
アクセルを踏むとキッチンカーがゆっくりと進む。異世界の自然溢れる道を原付で走るのもよかったが、車で走るのも実にいい。それに車の方が安心感もある。
事故った時の怪我率や死亡率は二輪車の方が遥かに高いからな。それに魔物から石などを投擲された時も車の中なら多少は安心できる。この調子でいろいろな乗り物を解放していくとしよう。
「さて、今夜はいろいろと確認だ」
『はい、マスター』
キッチンカーを運転し、無事に目的地であるニフランの街へ到着した。今回は商業ギルドカードがあるので、入場料の銀貨2枚を払って無事に街に入ることができた。トリアルでの街もそうだったが、一度入場料を払えば10日間は滞在が許されて街から出入りが自由となる。
そして市場で必要な物を購入し、今回は宿をとらずに街の外に出てきた。
そう、今日はこの異世界へ来てから初めて野営を行う!




