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相棒が現代の乗り物に変形できる【万乗ビークル】でした!~剣と魔法の異世界で、今日は何に乗ってどこへ行く?~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第11話 戦車


 振動と爆音と同時にモニターが激しく揺れ、大きく土が舞う。続けて第二射、第三射と連続して砲弾が放たれた。


 そしてノアが一度砲撃を止める。戦車内の振動で酔いそうになるが、それを堪えながらモニターを注視すると、三発の砲弾が着弾した場所の土は大きくえぐれており、オオカミたちに命中したのかはわからないが、酷く混乱した様子だ。


「ワオオオオン!」


 近付いていくこちらの戦車を視認し、ひときわ大きな個体のオオカミが大きな咆哮を上げる。


 車内でも聞こえるほどの大きくて一瞬だけビビってしまったが、どうやらそれは撤退の合図だったようで、オオカミたちは一目散にこちらの戦車から逃げていく。


 なるほど、うまく命中させなくとも、あの威力を見せるだけで十分というわけか。


『どうやら敵は撤退した様子です。追撃をすれば多少は数を減らせると思いますが、どうしましょう?』


「いや、逃げていくやつは放っておこう。ノアは一応周囲を警戒しながら、あの人たちの少し手前で止まってくれ。……この状況であまり接触はしたくないけれど、怪我人がいるのかと、馬車が無事なのかだけは確認しておかないと」


 もしも負傷者の怪我が大きく、馬車が動かないようであれば怪我人だけでも街まで運ばなければならない。戦車への変形があと何分もつのかはわからないが、できる限り運んでから原付で運ぶのが一番早いだろう。


 そうだ、この黒髪は多少目立つから、隠しておかないと。リュックにタオルがあるから、それを巻いておこう。


「ノア、ハッチを開けてくれ。あちらから攻撃してきたら、すぐに逃げよう」


『承知しました』


 シートから立ち上がって、狭い車内を歩きながら後方にある金属製の梯子を上って上部にある丸いハッチを開ける。よく映画やアニメで見る戦車のあの丸いハッチからピョコンと顔を出すのは少しテンションが上がるな。


 ……いや、もちろんそんな状況ではないのだが。


「魔物に襲われていたようだから援護したが、大丈夫か?」


 警戒をしつつ、ゆっくりと顔を少しだけ出すと、ようやく状況を肉眼で捉えることができた。


 馬車を背後にして、5人ほどの鎧や胸当てなどで武装した護衛が剣を構え、その後ろには腕や足を押さえて血を流している男女の姿があり、一番奥には小さな女の子や執事さんなど戦いに参加できない者がいた。


 こちらとしてはできる限りフレンドリーにし、援護したという言葉を強調して接してみたのだが、護衛の人たちは警戒を最大限して剣をこちらに向けている。……それもそのはず、戦車とこの人たちの間には先ほどの砲弾の跡が残っており、戦車の威力の一端を様々と見せつけられているわけだからな。


 どうやらオオカミ型の魔物の数匹に命中したようで、魔物の身体の一部も飛び散っている。この状況で馬車よりも巨大で、この異世界で初めて見る戦車を恐れるなというほうが無理だろう。


「だ、大丈夫だ。貴公たちのおかげで命を救われた。この度の加勢、誠に感謝する!」


 護衛の中で一番前に出て戦っていた全身鎧姿の大柄な男性が剣を下ろしつつ、他の者たちにも手で合図をすると、同様に武器を下ろしてくれた。


 我ながら非常に怪しいとは思うが、敵意のないことを分かってくれたらしい。


「それはよかった。大きな怪我をしている者はいるか? トリアルの街まではもう少しだけれど、馬車で帰れそうか?」


「ちょっと待ってくれ。……大丈夫だ、おかげで大事には至っていない。怪我をしている者もいるが、回復魔法で十分に治療ができる。馬車も一台は破損しているが、もう一台は動くから大丈夫だ」


 隊長らしき大柄の男の人がすぐに周りにいる人たちや後ろにいる人たちへ状況を確認して答えてくれた。


 回復魔法なんてのもあるのか。この世界はとても便利だな。


 オオカミたちは完全に見えなくなったし、戦車の砲弾の威力を見てまた立ち向かってきたりはしないだろう。ノアの変形時間があとどれくらい残っているのか分からないし、早くこの場を離れよう。


「そうか、それはなによりだ。それじゃあ、俺はこれで失礼する」


「ま、待ってくれ! その馬車のような……いや、それはなんでもいい。私はノスタル家に仕えるドールタンという。貴公になにか礼をさせてほしい!」


「……とりあえず今は先を急いでいるから大丈夫だ。ただ、もしかしたら今後なにかを頼むことがあるかもしれないから、その時はよろしく頼む。これは戦車という魔道具だが、秘密にしておいてくれ」


 ドールタンさんはこの戦車について聞きたそうだったが、その言葉を呑み込む。俺はあえて自分の名前を伝えずに戦車という言葉だけ伝えた。


「センシャか、承知した! 此度のご恩、決して忘れない!」


「あ、ありがとうございました!」


「おかげで助かりました! 本当にありがとうございます!」


 ドールタンさんがお礼を言うと、周りにいた護衛の人も礼を言ってきた。俺はハッチを閉めてシートへと戻る。


「ノア、出してくれ」


『承知しました』


 戦車が動き出し、逃げるようにその場をあとにした。


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m

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