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透明はカラフル  作者: おきついたち


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5/8

おまけ話「瀬戸内ブルー」

るんるん♪と音符を振りまきながら、健文はタブレットの画像を望に向けた。

今日は健文の母親が昼出勤で帰宅は夜遅い。だから望を招いて2人で夕飯。

健文の父親直伝のピリ辛麻婆豆腐をハフハフ食べて。

望が持って来たバニラヨーグルトのジェラードですっきりしたトコロ。

お腹いっぱいでリビングのソファにもたれたまま、望は健文の肩に頭を乗せる。


「この3台がオレのお薦めや。

スペックも値段も。初めて買うンに間違いは無い思うで」

タブレットを覗き込んでから。望はちょっと唇を尖らせる。

「コレえ?健文のんと全然ちゃうやん。

ハンドルがぐるんて巻いてへんし。ペダルもママチャリみたいや。

あんまカッコ良お無いなあ」

「まあ、そお見えるかも知れんけど。

この3台の推しドコロは、この値段にしてはフレームがめちゃ良えんや。

ブレーキパッドとか、細かいパーツは安いのン使うとるけど。

そーゆーんはオレが交換するから。性能はもっと良おなる。

そんで慣れたら、ドロップハンドルにしたりビンディングペダルにしよおや。

パーツ交換に金掛ける価値があるフレームやで」

「すぐ慣れるで。こないだ健文のに乗せて貰うたけど、全然平気やったし」

「そお。ちょおっと乗るならな。

でも長時間乗っとるとな、辛なるンは首とケツなんや。

肩落として首まっすぐに出来るフラットハンドル姿勢と違うて。

ロードバイクは、肩前に出して頭上げ続けなあかん。首回りめっちゃ凝るで。

部活で鍛えとるからな。体力や筋力は心配要らんけど。

そーゆー自転車独特のシンドイトコて慣れるしかないんや。

身体無理せんで、最初は余裕持って楽しめるよーにしよおや」



普段の健文とは違う、熱のこもった語りっぷり。望はマジマジと見てしまう。

気配り派の健文は、喋るより聞く方が多いし。

相手を説き伏せようとする話し方は滅多にしない。

いつも望のキモチを確認しながら。優しい目で覗き込みながら頷いてるのに。


「健文はほんまに自転車スキなんやな」

「う。ごめん語り過ぎやンな。押し付けになってもた?」

望の言葉に、健文はギクリ。

「そーゆー健文、あんま見いへんから。珍しなあて」

「せやかて…めっちゃアガっとって…」

反省と照れと嬉しさがMIXした顔で、健文はじーっと望を見返す。

それは望の心臓がドキっとするくらい熱い眼差し。

「その。前も言うたけど。

オレ結構周りの目ぇ気にする性格なんで。

友達言うても、深あに仲良うするコトとか無かったし。

こんな風にな。ゼロから一緒に何ンかを計画するとか初めてなんや。

始まる前からワクワクしとってな。。

夏休みなったら、リアルにずうっと一緒やろ。

そんで休み終わって新学期なっても。そん時のコトを一緒に振り返れるやん。

ぼーくんと。ええと、大好きなコぉと。

これからは2人で時間を作って行くンやなあて思うと。

もお、ほんま幸せ過ぎて。

めっちゃ心臓ドキドキしとるし。じっとしとれんでぐわーってペダル回したいワ」

自分のデレ顔が恥ずかしくて。

健文は両手で顔を覆うと、ソファにひっくり返ってジタバタ。

それを見て、望はくしゃっと顔を崩して大笑い。

「何んやソレ。港釣のハマチみたいにビチビチしとるーっ」

どうん!と。ひっくり返っている健文の上に、望もダイブ。

「うわわわわ。アカンてヤバイて。無理無理無理っ」

何が?と望が訊く前に。

健文は、目の前に来た望の頬を包んでキス。

一瞬、望の肩がピクリと揺れたけれど。

そのままゆっくり力を抜いて、健文の胸元に身体全部を預けると。

健文の腕がそろりと降りて来て優しく背中を撫でる。

胸元と背中、両方から健文の体温を感じて。望はうっとり夢心地。

もちろん唇からは一番敏感に健文の熱が伝わってくる。



ずっとそうして居たいけれど。

小さくタメ息を溢しながら、健文は腕を緩める。

「あああもーヤバい。ギリギリやあ。後10分で母さん帰って来てまう~」

付き合ってるコトは母親も知ってるけれど。

さすがにドア開けて目にするのがこの光景なのは、マズイ。

そう判ってはいるけれど。

心臓はドキドキだし。頭はふわふわだし。アソコはぐぐっと滾ってるし。

緩めた腕も、まだ望から離せない。

望も望で。溶けかけたジェラードみたいに、健文にぺったり乗っかって。

ほんわり高揚して気持ち良さそうな表情。

(うわあ。トロけた顔めっちゃ可愛ええええ)健文の顔もベタベタに溶ける。

でも。

ちょっと気合を入れて顔を元に戻して、望の耳元にささやく。

「な、なあ。ぼーくん?

その、あの。するとしたらな、上と下どっちが…今はオレが下やけど…」

「うえした?」

「やっ!ごめっ!!やっぱ今の無しっ。まだ早いもんなっ。

ぼーくんのコト、ホンキやから。ぼーくんしか有り得えへんから。ゆっくり大事に」

「そっかー。男同士やから選べるンか」

「うっ!ちょ、ちょお待って。そんな見んとって」

望は身体を起こして、まじまじと健文の股間を見つめて。そろりと触れた。

「わーーーーー!!」

「こんなん挿れたら、ケツ痛あて自転車乗れンかもな」


今する話題やなかったと。健文は真っ赤になったり真っ青になったり。

その様子を見降ろして。望はくしゃくしゃっと思い切り笑う。

「あははははは!ほんま健文はオレんコト好きやねんなあ。

ええで、オレはどっちでも。健文が上手にやってや」

「そらあもお。めっちゃ頑張ります」

「一緒にいっぱい楽しい時間作ろおなあ」

もうすっかり夏休み気分で、望も健文を抱き締めた。

「島行ったらなあ、海で泳ぐやろ。釣りするやろ。

果樹園も歩こ、めっちゃ広いンやでー果物運ぶトロッコ見せたる。

島の友達みんなビックリするワ。

オレがこんな優しーいカレシ連れて来るなんて思うとらんやろ」


望の、大きくて潤んだ瞳には懐かしい故郷の景色が映っていて。

くっつけた肌から、海風や果樹園の香りが伝わって来る。

「ぼーくん」

「ん?」

「オレな。カレシ欲しいとか思うとったけど。

誰かを好きになるて、カレシが出来たとかで終わるモンちゃうんやな。全然足りん。

明日も明後日も夏休みも新学期も。とにかくずうっと先まで。

ぼーくんと一緒に居ることしか考えられんくなってもた」

あまりにも理想と言うか夢想ぽいセリフ。

色々と経験してきた望は、むすっとした顔に変ってしまう。

「けど。ヒトの気持ちは変るコトもあるで」

「んー…でも。

果樹園の宅急便みたいに、ホンマの気持ちは無くならんかったし。

オレの親みたいに、遠回りして元んとこに帰って来たりするし。

多分、どんなことあっても。遠おても。千切れたとしても。

ずっと変わらへん気持ちも在ると思うんや」

「気ぃ長いハナシやなあ」

「うん。こんなキモチになるやなんて。想像もしてへんかった」



もうそろそろ時間切れだから。最後は誤魔化すよーなオチになったけれど。

お互い顔もキモチもほかほかだし離したくないし。胸がいっぱいで言葉が出て来ない。

だからゆっくり目をつむって、本日最後のキス。

瞼の裏には。

望の瞳のように光を映しさざめく海。その上を渡る長いサイクリングロード。

2人一緒にペダルを回せば、そのまま透き通る空まで続いている。

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