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ぬかるみ

作者: 川

自分の中には何も入っていないのだろうか

頭を強く打った時のような感覚の喪失感が身体中を襲った

私は物書きに散々憧れていながら、何一つこれまで書いてこなかった

理由は単純で、書きたいことが何もなかった、というよりも今も書きたいことなどはないのだ

ただ自分の中をいつまでもいつまでも無数の言葉が駆けずり回り大きな流れを作って、大雨で統率を失った川のようにあちらで渦を巻きこちらで溢れかえっているのを、常に感じている

しかしこれは書きたいこととは全く違うものであることはわかる、頭に入ってくる大なり小なりの情報への反射が、いくつも起こって身体の中に言葉の氾濫を生み出しているだけだ

私の憧れた物書きの先人たちは、その精神に豊かな世界を持ち、その脳内にそれを統制する機構を備えていた

彼らは言葉を使った芸術を生み出していた

対して私の中の言葉は、今ここに羅列される言葉はなにか、言ってしまえば体の中の濁流をそのままに吐き出している

思いを言葉に加工する過程以外に、一切ろ過することなく体内の泥水を紙に染み込ませている

しかし、これまで物書きに憧れていながら何も書いてこなかった自分にとっては、これは必要なことだ

便秘の人間に下剤を打つように、一度堰を切って全てを出してしまうことだ

これを衆目に晒したところで、なんの意味もない

これを初めて読む人間がいたとして、その人が私とこれまで何の関係もなかったとすれば、赤の他人の内面など全くどうでもいいことであって、この独白に一切の価値はない

私のことをわかる理由というのは、基本的に自分以外の全ての他人に存在していない

だから内面についてどのような形をもって吐き出したところで、自分以外の人間にとっては何も意味もない

しかし誰かに聞いてほしかった、私は書きたかったのだということを

私というくだらない人間の独白であっても、書きたかったし書いたものを評価されたかったのだと

散々に打ちのめされてしまえば、そんな幻想を手放せるのだと

私はこの幼稚極まる独白をここに置いて、もうすっかり忘れてしまいたいような気分だ

だが私は置いておきたかった、SNSの荒波に放って海の藻屑になるというようなやり方ではなく、ここに置いておきたかったのだ

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