ダンジョン調査隊 襲来!
「では諸君、準備はいいな?これより新たに発生したダンジョンの調査へ向かう」
「ええ」「はい」「はい!」
ダンジョン調査隊の四人組がダンジョンの調査のため集まっていた、ダンジョンのテスト用AIではあるが彼らには高度なAIが使用されており柔軟な思考と行動が取れるようになっていた。
調査隊の面々は、リーダーである冷静で経験が深い印象を受ける壮年の男性、調査を主に行うであろう知的な印象の女性、そしてサポートと学習も兼ねてだろうか他と比べ幼いながら活発で優秀な印象の男女一名ずつ、といったメンバーであった。
コモリのダンジョンの入り口を目にした若い隊員はその不気味さに思わず声を上げる。
「なにこれ……ここが入り口?」
「っダンジョンの入り口ってこんな感じなんですか?」
「そうみたいね、ここが入り口で間違いないわ、あまり見かけないタイプだけど」
女性隊員は方位磁石のように見える道具を手に持って周囲を歩き、そしてここがダンジョンの入り口であると断じた。
「確認が取れたな、では突入する」
「怖がらなくても大丈夫だわ、学んだでしょダンジョンの入り口からすぐは安全だと」
「「はい……」」
若手の隊員は入り口で怖がっていたがベテランたちは怖がらず進んでいく、ダンジョン調査隊とはダンジョンについて深い知識を持ったメンバーで構成されておりダンジョンのルールにも明るい、そのため専門的な視点からダンジョンを調査できるのだ。
◇ ◇ ◇
ダンジョンへ突入した隊員たちを待っていたのは豪華な宮殿にでも迷い込んだのではないかと思うような内装であった、若手隊員はただ雰囲気に圧倒されていたのだがベテランの隊員は違和感に包まれていた。
「すっげー……」
「お城みたいね」
「「……」」
本来ダンジョンの入り口とはトラップなどを設置できない関係で侵入者にとっての休息の場となる、そのためダンジョンマスターはより小さく、そしてより不快な環境にする傾向がある。
そんな場所にわざわざコストを払って豪華な飾り付けをして侵入者をもてなすという点に大きな矛盾を感じたのだ。
「このダンジョンは何を考えているんだ……」
「問題出題……」
彼らは調査のための拠点をダンジョンのエントランスに設営することになった。
そこまでは良かったのだが……彼らはこのエントランスの調査を始めたのである、ただコモリがやけになって作った何の秘密も隠されていないダンジョンエントランスの調査を。
◇ ◇ ◇
「んん……?なあ、ダンジョンちゃん、こいつら何してるんだ?」
「私にもわからないわ」
コモリはダンジョンに招き入れたダンジョン調査隊を観察していたのだが一向に進まないことに痺れを切らしていた。
ダンジョンちゃんも何が起きているか分かっていなかった。
「これって早送りとかできるのか?」
「んんっと、できるわね、一応注意しておくと早送りできるのはチュートリアルの間だけだからね」
あまりにも調査が進まないため早送りで時間を進めた、一心不乱にエントランスに飾りつけた美術品やもろもろの記録をしていた彼らだがようやく先に進むようで。
「やっとか、何だったんだこれ?」
「ん〜、ダンジョンを先に進むための何かがここにあると思ったのかしら?」
「足止めできたってことはいいことだったのか」
◇ ◇ ◇
「ひとまずここの調査はこのくらいにしておこう、わからないことが多すぎる」
「そうね、困ったらここに戻ってくることになるのかしら、骨が折れるわ」
調査隊は先に進むことを選んだようだ。
「ここからはトラップやモンスターが出てくる、気を引き締めるように」
「「はい!」」
ダンジョンの迷宮部分に足を踏み入れる調査隊の面々、ある程度進んだだけでわかることがあるようだ。
「これは迷宮型だな、攻略には時間がかかる、ペース配分に気をつけろ」
「迷宮型はトラップもモンスターもあまり出ないわ、ゆるく緊張を保つのがコツね、まあ私たちが対処するから安心して」
「「はい!」」
順調に進んでいた彼らだが若手隊員が違和感に気が付く。
「ねえ、何だか歩きづらくない?」
「だよな、俺も思った」
「!?まさか「スタミナ消費増加ゾーン」かしら、でもトラップの反応はないのよ」
「俺たちには効かず若者にだけ効く、そんなトラップあったか?」
進むにつれ違和感は確信に変わった。
「私も何だか歩きづらくなってきたわ」
「この床、粘ついてやがる、こいつが原因か」
その後しばらく時間が経過し調査隊はモンスターと遭遇する。
「っ!、モンスターだわ」
「スティッキースライム!なるほどそういうことか」
「スライムなら僕でも戦えます!」
「必要ないわ、もう倒したし」
この迷路では大活躍の「スティッキースライム」だが対人の戦闘力は皆無らしい、一瞬にしてやられてしまった。
その後もしばらく調査は続いたが若手隊員の体力が尽きたようで調査は一時中断となる。
「この迷宮スティッキースライムしか登場しないのか」
「トラップもネバネバの床以外何もなかったわね」
「迷路部分の危険性はなしっと、だが……」
「すみません、足手まといになってしまいました」「体力なくて……ごめんなさい」
「いや、いいんだ、それよりお前たちのおかげでいち早く床の仕組みに気が付けた」
「そうよ、気にしなくていいわ」
このようにして調査隊の調査は終了した。
◇ ◇ ◇
「色々とダンジョンの課題が出てきたな」
「そうね、チュートリアルはそのためにあるんだから、ノーリスクハイリターンよ!」
早速ダンジョンの手直しを始めるコモリ、まず迷宮部分にモンスターを配置することにした。
「スティッキースライム君は弱すぎたな、まさか足止めにもならないとは」
「そうね、他のモンスターも配置した方が良さそうね、ここでもゴーレムは相性いいと思うわよ」
「そうだな、あと空飛ぶ敵も欲しいな、コウモリとかいるか?」
「あるわね、設置していきましょ」
「ゴーレム」は疲れ知らずで、「コウモリ」は普段天井に捕まってるという意味で粘つく床の影響を受けない。
特にコウモリは空をひらひらと飛ぶため素早く動けない状態の敵と戦うのに非常に相性が良い、さらに噛まれると疫病などを発生する可能性があるため消極的な戦闘を強いることができてなおさら相性が良い。
「この調子で他の部分も修正していこう」
「そうね、見直していきましょ」
次回、ダンジョン見直しませんか? お楽しみに。