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ナゲヤリ・ファンタジー  作者: 谷橋ウナギ
第二章 破壊神編
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二章 第七話 魔王の残した物


    1


 殺し合うだけが戦争ではない。

 そんな訳で、勇者のクサナギは机の上に寝転がっていた。王城にある会議室の机。正直言って硬いが仕方ない。

 何故ならこれからこの会議室で会議が行われるからである。


「机の上に寝ないでください」

「放っておけ。言ってもどうせ聞かぬ」


 セシリアには早速突っ込まれた。チビは最早諦めの境地だが。

 何にしても三人が出揃った。故にこの時より会議を開く。


 議題は美味しいサンドイッチの具──ではなく当然破壊神。


「ではこれより実働部隊による対策会議を執り行います」


 セシリアは溜息を吐いた後、クサナギ達二人に向けて言った。

 彼女の横には黒板とチョーク。準備は万全に整っている。


「了解だ」

「うーい。会議会議」


 約一名ナゲヤリ気味である。

 しかし会議は進めねばならない。


「ではまず現状の再確認を。魔王によって生み出された脅威、七体存在する破壊神。私達はその内三体を、撃滅しここに封印しました」


 司会進行はセシリアだ。

 彼女は黒板に小さな丸を七つ書き、三つに射線を入れた。


 破壊神は残るところ四体。それはお馬鹿なクサナギにもわかる。


「これだけやってまーだ半分以下か。面倒くさいにもほどがありやがる」


 クサナギは寝たまま軽くぼやいた。だがそれも当然の感想だ。

 三体の内二体は超巨大。残る一体はクサナギに化けた。破壊神は能力を持っている。強力且つ異質な能力をだ。

 それをクサナギたった一人だけで後四体も倒さねばならない。


 と、そこでクサナギはピーンと来た。大事な事を一つ思い出した。


「そういや騎士団は何してるんだ? まだ一回も見てない気がするが……」

「彼等は主に情報収集や、市民の退避を請け負っています」

「仮に、騎士団をぶつけたところで死傷者が増えるだけであろうしな」


 だが他力本願は通じない。セシリアとチビから指摘が入る。

 勇者とは大変なお仕事だ。だがそれでもやり遂げねばならない。


「全てはセシリアちゃんラヴのため……!」

「まだ四体残っていますからね?」


 セシリアの冷たい視線が刺さる。しかし勇者はへこたれない物だ。へこたれない物ではあるものの、可能なら楽をしたいのも事実。


「おいチビ。こう、なんかねーもんか? サクサク奴らを倒す方法は」

「我に聞くな。わかるわけがなかろう」


 そう楽な手段などないのである──


「では魔王の首に聞いてみますか?」


 と思っていたがセシリアが言った。


「前にも伝えたとは思いますが、首からは情報が得られます。破壊神を複数封印した今ならわかることもあるでしょう」

「マジで!?」

「確約はできませんけど」

「可能性があるならレッツゴーだ!」


 クサナギは机から飛び起きた。変わり身の早さもまた能力だ。

 こうして、クサナギは魔王の首と再び相まみえることとなった。


    2


 タラスパ王城の地下深い場所。階段をひたすらに降りた先。

 魔王の首を収めた空間に繋がる扉が──隠されていた。

 扉の前には二人の女性。格好から竜の巫女の所属だ。その二人の間を通り過ぎて、三人は封印の間へと入る。


 何の意味があるのかは不明だが恐ろしく広大な封印の間。床に魔法陣が描かれており、その中央に魔王の首が在る。

 首は台座の上に安置され、ひたすらに沈黙を保っていた。


「おっす! 久しぶり。元気だったか?」


 クサナギはその首に話しかけた。

 だが全く反応は返らない。


「無視だぞ。もしかしてキレてんのか?」

「違います。彼は死んでいますから」


 セシリアにヒソヒソと聞いてみると、彼女は当然だと指摘をした。

 しかし彼女は首から聞き出した。七体の破壊神の情報を。

 つまり、普通に問いかけてもダメだ。特別な方法があるのだろう。


「見ていてください。対話してみます」


 セシリアは首に近づくと、魔王の首を両の手で掴んだ。

 優しく宛がうイメージで。そしてそこから魔力を流し込む。


 すると魔王の首が輝いて──青く輝く図形を吐き出した。何百何千にもなる図形が、封印の間を自在に飛び回る。


「うお!? なんじゃこりゃ?」

「魔法の言語。古い魔族が使用した物です」

「うむ。我もある程度なら読めるが、これはセシリアでなければわからん」


 セシリアとチビ曰く、これは言語。その言語が暫くは跳び回る。

 だがセシリアが両手を拡げると、その手に文字達が集まって行く。


「おー。で、魔王はなんだって?」

「お待ちください。解読しています」


 その状態でセシリアは暫く、瞑想をする様に目を閉じた。そして文字の光が消えた後、今度はゆっくりと目蓋を開く。


「一つだけわかったことがあります。しかし本当に、聞きたいですか?」


 セシリアはそこでクサナギに言った。

 含みがありそうな表情をして。


「うむ。聞きたい。楽出来るかもだし」


 だがクサナギは怯まない男だ。二つ返事でセシリアへと返す。

 するとセシリアは溜息を吐いて、クサナギのほうに向き直り言った。


「破壊神の狙いは貴方です。魔王を倒した勇者の貴方は彼等の最大の障害になる。第二の破壊神が貴方に化け、狼藉を働いたのもそのため。仮に貴方が何もしなくとも、破壊神は貴方を襲うでしょう」

「それは……まーじかー」


 流石のクサナギも、ガッカリした。期待とは真逆の結論である。

 しかも整合性がとれている。確かに市民は未だに無傷だ。


「勇者よ気を落とすな。我々が……やるべき事はなにも変わらない」

「ありがとよチビ。まーしゃーねーか」


 クサナギも結局納得をした。

 そんな訳で、目的を達成しクサナギ達はその場を後にする。ドアを出て巫女達に見送られて。


「竜の巫女ってみんな美人だな」

「不謹慎ですよ。勇者クサナギ」


 その途中クサナギが呟くと、セシリアに強めにたしなめられた。


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